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Fantastic Life Online  作者: ようほう
本格的冒険と謎のお宝
5/28

Scene1-5

*11/17 誤字修正対応しました。

 カウンターに突っ伏している、というか寝ているのは女の人だった。凄く気持ちよさそうに寝ている、涎も垂れてるし・・・自分でカウンターを汚しているけどいいのだろうか。でも気持ちよさそうに寝てるし、起こすのは気が引けるけど。


「風邪ひかれても困るしね。すみませーん、起きて下さーい。」


 勝手に身体に触れるのも失礼かと思ったので、近くから声をかけるだけにとどめる。何回か声をかけ続けていると女の人が眠そうに顔を上げた。


「んー・・・あれ、もうこんな時間・・・お店閉めなきゃ。」

「待って待って、閉めないで!?お客は目の前に居るから!」

「え、お客さん・・・?」


 ピントの合っていなかった眼が一瞬、僕の視線と交錯する。5秒くらい見詰め合ったあと、向こうが「えっ、嘘!?」と急に立ち上がったせいか、バランスを崩してカウンターの向こうに姿を消した。


「あの、大丈夫ですか?」

「いた、角、打って・・・じゃなくって!お客さん?本当に?」

「え、ええ・・・ここ宿屋で良いんですよね?」

「はい、はいそうです!ようこそ【大樹の木漏れ日亭】へ!」


 よっぽど嬉しかったのか、僕の腕を取って激しく上下にシェイクし続ける店主さん。すごい眼をキラキラさせて嬉しそうなんだけど、僕が来ただけでこの反応ってどれだけお客さん来てないの!?


「あ、すみませんはしゃいでしまって。私はルミーレ、この【大樹の木漏れ日亭】の店主をしています。」

「いえ、気にせずに。僕はカナタ、よろしくルミーレさん。それで、その・・・部屋空いてますか?僕も含めて3人分あると嬉しいんですけど。」

「さ、さん・・・にん・・・も?」


 え、今この人3人もって言った?3人も?


「神様、ありがとうございます。もう貯蓄もつきかけ店をたたもうかと思っていましたが・・・人の役に立てるのでしたら、喜んでお店としてご利用下さい!」


 すっごい不安なこと言ってるけど!?



 一旦wisで2人にお店の名前と場所を連絡し、OKをもらってお金を払うことにした。利用料は1泊で80belで食事代は別。1食追加で+50bel。パン1個と同じ値段って考えると、割と安い値段だと思う、って言うか寧ろこんな値段でやっていけて・・・れば閑古鳥の無く状況になってないか。


「とりあえず1週間の3人分で1680bel払います。」

「おぉぉ・・・初めてのお客さんで初支払いが4桁・・・!」


 本当に大丈夫なのここ!?


「あの、お金払った後に聞くのもアレなんですけど・・・大丈夫なんですか?」

「え?あ、ああ大丈夫ですよ?お客さま用の部屋はちゃんとしてますから!鍵もついてますから防犯もしっかりです。ええ、代わりに私の寝床が質素なだけですから、そんな気にしないでください。」

「すっごく気になりますから!?そう言う懐事情は聞きたくなかったです!」


 意外と部屋はしっかりしてました。



 ヘッドセットを外して、軽く伸び。長時間のゲームは身体が固まっちゃうから解すのも大事なケアなんです。時計に眼をやるともう24時近く。昔のは中々小型化できず、お値段も重さも高かったけど、今では重さを感じない程度に軽いヘッドセットが売られている。


「お風呂入って寝ちゃお。明日の朝食どうしようかな。」


 町の外に出ることは出来なかったけど、またあの世界に行けたというだけで僕は嬉しかった。石造りの町は冷たい雰囲気もあるけど、いろんな場所に緑があるからかそこまで拒絶感は感じない。それに最後にめぐり合えたあの宿屋。お店のとなりに畑って、素敵だなあ。

 明日は2人と合流して近くのダンジョンを調査する事になっている。明日と言っても現実時間の明日だけど。たしかFLOでは1日が現実の3時間位だった筈。だから向こうでは4日位経ってそう。

 その間に、お店に客が増えてるといいな。そんな事を考えながら、僕はベッドの中で眠りについた。



 今日は土曜日、僕たち高校生にとっては休日。

 結局朝食は簡単なもので済ませることにしたので、フライパンにベーコンを投下し、しっかりと焦げ目が付くまで焼く。焼きあがったら一旦別の更に取り出して卵を投入、半熟加減を見極めて焼いたら出来上がり。バターを塗ったトーストに載せて、一緒にインスタントの棚からコーンスープを取り出しお湯を注ぐ。

トマトが残っていたので、適当な野菜と一緒にカットしてサラダを作り、もう少し茶色が欲しかったので冷蔵庫から袋詰めウィンナーを出して軽く炙って出来上がり。

 まだ朝は結構寒いので、このコーンスープが地味に楽しみだったりする。暖かいものを食べるとなんだかホッとするから好き。

 母さんは起きてこなかったので、いつもの夜更かしと見て放置しておく。起こしにいくと逆に手間がかかっちゃうからね。

 僕は自分の分の洗い物を済ませると部屋に戻り、再びFLOの世界へと向かった。



「いきなりでなんだが、俺たちは遺跡のダンジョンを目指そうと思うんだ。」


 FLOにinして食事を取っていると、ジョーが今日の予定について切り出してきた。このゲームにも空腹度が存在し、放置しておくとペナルティとしてステータスの低下やスタミナの減少等を受けてしまう。体型への影響は今のところ確認されていないが、満腹感はあるので食べすぎと言うことにはならない。

 ちなみにメニューは黒パンとコッペパンに屑野菜のスープと鶏肉のソテー。意外と量があってお腹は膨れる・・・というか、こんなしっかりとした料理が出てくるとは思っていなかった。それは2人も一緒のようで、出てきた数秒は3人とも固まっていたのは仕方ないと思う、うん。


「なんで?確かに遺跡にはリベンジに行きたいから良いんだけどさ、先に洞窟行っておかない?少しは経験値欲しいよー。」

「僕もリィーナに賛成かな。確かに毒は厄介ですけど、麻痺もある遺跡よりは楽だと思うよ?」


 僕とリィーナは先に洞窟で肩慣らしを、と考えていた。蛇に関しては噛まれなければ良いのでカバーし合えば問題なし、蜘蛛は毒液を飛ばしてくるので避けられれば問題はない。最悪盾を使って防げば良い。

 そう考えていたのだけど、次のジョーの一言で僕たちは洞窟行きを断念することになる。


「昨日解散した後にダンジョンの情報を調べてみたんだけどな、洞窟の方にはスライムが出たらしい。天井から落ちてきたって話もあれば、急に横壁から飛び掛ってきたって話もある。」

「・・・色は?」

「青だとよ、毒持ちじゃ無いそうだが、攻略したPTはかなりの被害を受けたみたいだな。」


 スライムというと某国産RPGのせいで雑魚のイメージを広められているが、このゲームでは昔ながらのスライムとして登場してくる。つまり核を内蔵したアメーバ状の生物で物理攻撃に強力な耐性を持つ、と言うよりこちらの武具の耐久を容赦なく削ってくる。非常に酸性の強い液体の為、鉄の武具では数分も接触させていると完全に壊されてしまうのだ。

 クローズド段階では他に緑色のスライムが確認されており、こちらは上記の基本能力に加えて強力な毒ももっている。掲示板の嫌われ者であり、鍛冶屋の越えるべき目標でもある。


「洞窟自体はそんなに変化は無かったらしいんだが、モンスターの配置が地味に変わっていたらしい。今の俺たちにスライムはきつい、よって洞窟から切り替えて遺跡に向かおうと思うんだ。」

「それならもちろん、遺跡のほうの情報はあるんでしょうね?」

「それなんだが・・・遺跡に向かったPTが誰も居なくてな。情報はない。」


 テスト段階でもきつかった遺跡だけど、スライムが居るとなると洞窟のほうが厳しい。プレイヤーも修理は出来るが材料が必要になってくるので、今の段階で耐久を削られると出費がかなり酷いことになってしまう。NPCなら材料を不要で修理してくれるが、その分割高のお値段なのでどっちもどっちだろう。

 スライムの被害にあう位なら遺跡でも、でもあの遺跡の情報が無いし・・・と悩んでいるとルミーレさんが話に入ってきた。


「皆さん、レムールの遺跡に向かわれるんですか?」

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