本気の戦闘
どこからか、消火しろ!!という叫び声が聞こえる。スプリンクラーは起動しているが、火に触れた瞬間に蒸発してしまっているので、効果は無に等しい。
「お前……こんなに強かったんだな」
翼はゴツゴツとした黒岩。
微かだが熱気を放つ、その背中に俺は言う。
「力が、身体の中を駆け巡るんだ」
振り返ったその顔には灰がついていた。
燃やされ、塵としてこの世を彷徨うこととなった連合軍、ゴッドの派遣員たち。その、元は肉体、骨だった部分がルークの顔に付着しているのだ。
「抑えれないんだ、怒りの感情を」
怒りの感情、ねぇ。
「もっと、発散したいなぁ?」
「しゃーねー、外行くか」
「黒刄? ルーク? 本当にやるの?」
「「ああ!」」
メルヘン城から飛んで三分ほどの地点。
森が開け、広い空間ができている場所を発見したので、俺とルークは降り立った。
「圧熱球」
ルークの手元に小太陽が現れる。
一瞬にして、辺りを熱気が包み込み、黒岩の翼も赤く溶け始める。
「雷丸……」
俺専用である雷系の魔法だ。
オリジナルの翼を持つ者は、大抵が専用の魔法を使用することができる。オリジナルでなくても、使えることには使えるのだが、威力は比べ物にならない。
「形態変化……薙刀」
先ほどと同じ、灼熱の薙刀が握られていた。
俺は、腰から愛刀である銀雷を抜き、構える。
「銀雷、帯電!」
雷丸は、銀雷に引き寄せられるようにして消滅。代わりに銀雷は雷刀へと強化され、銀色の雷を帯びて輝く。
「来いよ」
「その包帯はどうするの?」
翼に巻かれている包帯は、解かないのか?という意味だろう。解けば、力はフルに発揮出来る。が、オリジナルの俺が断然有利になってしまう。
「へっ、ハンデをやるよ」
「無駄な気遣いだよ!」
「本気で戦ってほしけりゃ、自力で解いてみな」
「ふっ、上等だっ!」
ルークは瞬間移動と見間違えるほどのスピードで俺に詰め寄り、薙刀を横一文字に薙ぐ。
俺は刀の雷を操作、電子バリアを展開。危なげなくガードに成功する。
「まだまだあまいなっ!」
電子バリアを解除し、刀に戻す。
そのままルーク向かって縦に振り下ろす。
「おっと危ない」
翼の溶岩が刀の軌道を反らした。
「ちっ……」
そのとき、視界に白い帯状の布が舞った。
「包帯取ったりー!」
「なんで……? 触れられてはいない……」
舞っている包帯を見ると、端が茶色く焦げていた。
「……焼き切られたか」
「そうだよ、焼き切ったんだ!」
「ハンデは無しだ。 本気でいく!」
突然、バジバジッ!と雷が迸る。
俺の全身から発された雷は、背中にある翼に吸い寄せられてゆく。
黒い雷は俺の翼に宿り、鋭く形を整える。
左右計六枚だった翼に切れ込みが走り、パキパキと形を変えてゆく。
一枚一枚が黒い雷を宿した天使の羽根のように。
「これが俺の本性。 妖翼《黒刄》」
男にしてはやや長い髪が逆立つ。
目つきは鋭く、色も漆黒へと変わり、左目の下には雷のような形の黒い亀裂が走る。
「そうこなくっちゃ!」
またしても瞬間移動と見間違うほどのスピードどで俺の前に詰め寄る。
「形態変化……刀!」
瞬時に薙刀は、俺の刀と似たような形の刀へと姿を変え、俺に襲いかかる。
さっきの俺なら腹から二つに引き裂かれていただろう。
が、今の俺は違う。
「えっ……?」
「遅い。 どこに攻撃してんだよ」
俺は、すでにルークの背後に移動していた。
「魔収束……黒雷剣!」
翼の雷を刀に集め、巨大な剣を形創る。
「俺には勝てねぇよ、ルーク」
「そうだね。 改めて実感したよ」
そのまま、黒雷剣を振り下ろす。
が、もちろんルークに傷がつくことはない。
「俺の勝ちぃ!」
「負けた……けど、すっきりしたよ」
そのとき、上空から声がした。
「黒刄! ルーク! ご飯だってさ!」
「おーう。 腹減ったぁ……」
「ていうか、疲れたよ……」




