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妖翼のウェイレイ  作者: 優しい闇
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ルークの怒り

「こっち!」


「「了解!」」


モモは、淡い碧光を振り撒きながら、透けるような碧の薄羽を振るわせている。

風を切る音もせず、実に静かな飛行だ。

ルークも、自慢のごつい翼から、砂を落とし、岩を落とし。スリム化した大地の翼で羽ばたいている。

俺は、翼に包帯を巻き、醜い翼が見えないように隠してある。飛ぶことに関しての支障は無いので、逆に安心できる。


「変だな……」


視界スクリーン右上には広い自然エリアを表す《Land full of natural》、自然溢れる土地の文字と、周囲にある水分、食料の情報。

装備情報や、自らの戦闘レベル《189》と、メニューウインドウの開閉ボタンが配置されている。


これらの情報は、俺にしか見えてはいない。

ルークにはルークの、モモにはモモの視界スクリーンがあるのだ。


ただ一つだけの共通情報、マップだ。


「黒刄も思ってた?」


「うん、チカチカ点滅してやがるな」


そのマップ上に、無数の赤い点が点滅している。赤い点は敵を表すカーソルであり、点滅しているということは、戦闘体制に入っているはずなのだが、一向に攻撃を仕掛けてこないのだ。


「敵のことなら、心配ないよ?」


「なんで?」


「この道は空間の狭間にあって、外界とは遮断されてるの。 で、エルフはこの道を基準に生活してるから、人前には出ないのよ」


「空間の狭間……ねぇ」


「うん。 で、あそこに見えてきてるのが、エルフ種の城! 今からあそこに行くから!」


「鏡はどうなった?」


「見ればわかるよ」


ーー#@#ーー


「う……お……」


「んー……なんというか……」


「「メルヘンすぎるよ!!」」


「えへっ? そうかなぁ?」


どこのお姫様が住んでるの?って感じの城。

おとぎの国にこんなのがあった気がするな。

かなり大きい門があり、橋があり、また門がある。

飛べるんだから、無駄じゃねぇの?


「も、モモ様! 今までどこに!?」


出迎えてくれたのは、清楚なお婆さん。

モモと同じく碧の薄羽でふわりと宙に浮いている。


「ただいま、ばあや。 少し、事情があるの」


ばあや……?

そんなの、テレビでしか見たことないよ?

ばあや=召使い=雇う=良家=お嬢様。


「え!? お前、お嬢様なの!?」


「うふふ、そうですの……」


「モモ様? お知り合いの方ですか?」


「ええ。 わたしを助けて下さったの。

わたしの部屋に上げて大丈夫かしら?」


「お飲物をご用意いたします」


「では、黒刄さん、ルークさん、こちらへ」


にこっと微笑んだモモの顔は、心なしか引きつっているように見えた。


ーー#@#ーー


で、広い城内を歩き、一つの部屋に入った。


「なにが、『わたし』だよ。 吐き気する」


キングサイズのベッドのど真ん中にあぐらをかいて座るモモの姿があった。

だよな。普通に考えておかしいもん。


「黒刄、ルーク、さっきのは見なかったことにして」


「あー、はいはい」


「うん。 わかったよ」


「ったく、何がモモ様よ……」


「なに? 結局、お嬢様なわけ?」


「まぁ、ね。

父親が今、王様で、あたしはお姫様の娘だからお嬢様。 ばあやは気を使ってモモ様って呼んでくれてるの。 でも、そんな現実がイヤになって。 家出もどきをしたりして、連合軍に捕まって」


「とんだワガママお嬢様だな」


「うるさい! 追い出すわよ!」


「まぁまぁ、二人とも落ち着きなよ」


不意に、窓の外から爆発音がした。

ルークとモモを手で制し、俺は窓から外を覗く。

金色の装束が月光で反射し、キラキラと輝いていた。紛れもなく、連合軍、ゴッドの派遣員だ。


「まさか……?」


震える声を絞り出し、モモが俺に問うてくる。


「……ゴッドの派遣員です」


俺が答える前に、扉の方から声がした。

開きかけた扉にもたれかかっていたのは、ばあやだった。白かったエプロンは、血の紅に染まり、息も荒かった。


「ばあや! どうしたの!?」


「モモ様……逃げて……!」


ばあやの横腹から、鋭い刃物が飛び出した。

ばあやはそのまま力なく倒れた。


「エルフ嬢、みぃーつけたぁ♡」


「いや……来ないで!」


「いやー、神様からのお願いなのよ♡」


金色に輝く装束を纏った男。

背後に構える兵よりも装飾が多いところを見ると、こいつがリーダーだろう。


「エルフ・キャプチャ・ゲージ」


モモの足元から金属棒が突き出し、モモを覆う。名の通り、エルフを捕獲する檻だ。


「圧熱球」


背後から、ルークのいつになく冷たい声が聞こえた。


「形態変化……薙刀」


振り向くと、ルークの手には、太陽から削り出したような、真っ赤に燃え盛る薙刀が握られていた。


「人を檻に入れるとか、物みたいに扱うとか……」


「ちょっ……ルーク!?」


「そういうの、一番嫌いなんだよ」


ルークの翼として固まっていた岩が熱され、溶け始める。形は変わらず、翼のままなのだが、質が違う。あれは……溶岩だ。


「あぁん? 戦んのかガキィ?」


無表情のまま、横に一薙。

瞬時に熱線がリーダーを除く手下の兵を、焼き殺す。


「てめぇみたいな下っ端兵じゃあ、俺には勝てねぇんだよ。 手下引き連れて粋がってんじゃねぇ」


ルークはつかつかとリーダーに歩み寄る。


「死にたいか?」


「はっ、はは! オラァ!」


リーダーは鋼のブレードを振り回す。

が、虚しくもドロドロに溶解してしまった。


「形態変化……圧熱球」


薙刀は、手に収まるサイズの球体に姿を変えた。


「お前には、灼熱の炎葬がお似合いだな」


ルークは圧熱球という名の小太陽をリーダーの腹部に押し込む。

ゴォッ!という猛火と共に、リーダーの最期の叫びが城内に響き渡った。

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