さぁ、行こう
「と、いうわけで。 これが、相棒?のルーク」
「よろしくお願いします!」
「おうおう、元気いいねー! 黒刄とは真逆……」
「悪かったな!」
地上エリアの裏路地の奥の奥。
いつもガラガラのカフェに俺はルークといた。
このカフェのマスターがアルンというわけだ。
無精ヒゲにハゲ。言うとおっさんだ。
「なぁ、おっさ……アルン?」
「ん? なんだ?」
俺は、ひらひらと手を振り、アルンを呼ぶ。
「どうしよう」
「どうしようったって、相棒なんだろ?」
「んー。 友達未満なんだけど」
知らんな!とか言って、アルンはレジカウンターに歩いて行った。
「あ、そうそう!」
「ん? 何かあるのか?」
突然、ディスプレイにメール受信のメッセージが現れた。
俺は、そのメールを躊躇いなく開く。
「これは……」
映し出された画像は、この世のものとは思えなかった。
金色に輝く、巨大な鏡。
ツタが絡み、木と同化している。
「デルフの大森にあるらしいんだ!」
デルフの大森。地上エリアの南側を覆うほど広い森だ。確か、モンスターの巣窟だったか。
中心部に、天上エリアまで届く、でけぇ木があることで有名だけど、凶性モンスター数種が住み着いているので、立ち寄る人は滅多にいないはずだ。
なぜ、そんなところに、こんな鏡が?
「行っちゃう?」
「行っちゃい……ますか!」
ーー#@#ーー
ルークは隣で、砂埃を巻き上げながら翼を広げた。
「おぇっほ! ごほごほ!」
「自分でむせるなよ! それにしても、ソイルの翼ってすごいよな」
「見た目相応に重いけどね……」
「すぐ修復できるだろ? いいよなー……」
「まぁね! 黒刄の翼は? さっきは、包帯みたいな布、巻いてたでしょ?」
「あー、それは……」
俺の翼は、他人に自慢できるものではない。
包帯を巻いて隠していたのだが、今までは、そういう翼ということでやり過ごしていた。
「仲間に、隠すわけにはいかないよな」
秘密は打ち明けたほうが楽になるもんな。
俺は、包帯は解かず、翼に力を込める。
と、何の抵抗もなく、包帯は裂け切れた。
「これが、俺の醜い……翼」
俺の翼は、紅い謎の素材でできた片三本、左右合わせて六本のやや太い刃。
「紅翼に鋼質翼。 オリジナルのハーフ……」
オリジナルと言うのは、
天神 海妖 土賊 地無翼 堕神
この五つの種族特有の翼の中のどれにも当てはまらない、突然変異種のことを言う。
オリジナルを持つ人は希少で、確実な強者であり、世界から逸脱した存在。
更に俺の場合は二つのオリジナルの血を引いているので少々問題なのだ。
「オリジナルなんて、初めて見た……」
「醜いだろ? 血塗られた刃みたいでさ」
「……けぇ」
「え?」
「かっけぇ! 連合軍には何て言ってるの?」
「言ってない。 俺は、存在しないことになっているから……」
俺の故郷は帝獄エリア。
種族は、オリジナルの多く産まれる禁足地。
場所は誰にも知られてはいけない。
翼は、基本的には骨格翼である。
「詳しくは、後ほど話す。 行こう!」
「うん!」
紅の刃翼を広げて地を蹴り、シャリンと金属がこすれる音と共に飛翔する。
隣には、同じタイミングで飛んだルークがいる。
「おぇっほ!」
「飛ぶ度にむせる癖、やめよ?」