はい。あっさり……
「ビュオーッ……」
風を切る音が、鼓膜を震わせる。
今日は異様に風が強いな。と、思いながらも俺は翼を広げ滑空体制に入る。
徐々に高度を下げ、雲を突き抜けると、活気溢れる街が姿を現した。
スクリーンを展開、メニューウインドウの一番上にある、翼に受話器が巻きついているアイコンに触れる。
《テレパシー。 相手を選択してください》
「アルン・フィームに発信!」
《アルン・フィーム様に発信します》
しばらく電子音が鳴り、応答があった。
「『はい、毎度!』」
「アルンか?」
「『黒刄か。 どうした?』」
「今、暇してる?」
「『嫌味か? 店はガラガラのぼっちだよ』」
「やっぱりな……っと!」
俺の眼前を青い火の玉が通り過ぎた。
これは、炎系の中級魔法だ。
「『どうした?』」
「攻撃を受けた。 当たってはいないけど」
スクリーンに警告表示が現れ、同時にマップに五つの赤いマークが現れた。
赤い点の方に視界を移すと、そこには、ゴツゴツした茶色の翼で飛行する種族、ソイルシーフの姿が浮かび上がった。
「ソイルだ」
「『おいおい大丈夫なのか?』」
「大丈夫。 全部倒してからそっち行くわ」
「『……飯、用意しておくよ』」
テレパシーを切断。ターゲットをロックオン。
「ソイルシーフ! 透隠魔法を解け!」
少し離れた空中に、岩を削り出した容姿の人間が姿を現す。
いや、岩を削り出して作られた鎧を身に纏っているのだが。
「……よく見えたな」
「お前らはごついからな」
俺は、腰にさげた刀に手を掛ける。
「……ならば、アレも見えているか?」
ソイルのチームリーダーと思われる、トゲトゲしい岩の鎧を纏った男はこれまた斬れ味の無さそうな岩の棒塊……もとい剣で更に上空を指す。
「……マジか」
そこにいたのは、宇宙生物という表現が相応しいような無数の触手を操るモンスター。
の、中に、一つの赤い点を見つけた。
「まさか……?」
「……うむ。 仲間が一人食べられたんだ」
「で?」
「……これは運命だ。 手伝ってくれ」
ーー#@#ーー
なんだかんだで結局手伝った。手伝わされた。
中から出てきたのは、ちょうど俺と同じぐらいの年齢の男子だった。
女の子だったらよかったのに。という考えは滅却。
「ありがとう! 助かったよ!」
「なんで、喰われたの?」
「軽めにドジった!」
「はぁ。 俺は黒刄。 お前、名前は?」
「ルークだよ! よろしく黒刄!」
「……お、おう。 よろしく、ルーク」
なんだこいつ。妙に馴れ馴れしいな。
「ねぇねぇリーダー!」
チームリーダーは、ん?と、首を傾げる。
「黒刄と一緒に居てもいいかな?」
なんだと……?俺と一緒に居たいだと?
待て待て。種族違いだぞ?許可されるわけ……
「行ってこい。 戻ってこなくてもいいぞ」
あっさり許可!?ありえん。ありえんぞ!!
チームリーダーさん、頭大丈夫か?
「ありがとう! じゃあ、俺、頑張るよ!」
ルークは、俺の方に向き直る。
「これからよろしくね! 黒刄!」
「お、おう……よろ〜……」
はい。あっさり仲間が増えましたとさ。