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『怨嗟、人知れず』
「赦さぬ……、赦さぬぞ……っ!」
草木も眠る丑三つ時。古びた神社の境内に、唐突に唸り声が響いた。皺がれた、老父のような声だ。
「よいな、――よ。恩知らずな人間どもに神の威厳を知らしめるのだ!」
もし、この声を聞いた人間がいたら。おそらく、恐怖のあまり腰を抜かしただろう。その唸り声には、それほどまでに恐ろしい気迫が篭っていた。
「はい、我が主」
反面、続いて聞こえた声は、大人しそうな少女の声。感情が感じられない、平坦な声だった。
声を発したのは、社の前にちょこんと座った、珍しい毛色をした子狐のようだ。
「とはいえ、まだまだお主は非力……。そうだ、私の力を少し分けてやろう!」
――ドシャアアアアアン!!
再度不気味な声が響いた次の瞬間、空気を引き裂くような轟音とともに、子狐の体に稲妻が落ちた。
「頼んだぞ」
空には、満天の星空が広がっていたのに。