表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

根っからの野党

作者: 泉 羅卯
掲載日:2026/06/05

 首相のイス――。

 イスの前に立ち、ジェームズ・スプリングは涙ぐんだ。

 ついにこれに、座れるんだね――。

 スプリング新首相はイスの背もたれをなでなでした。愛おしくて堪らず、舌でぺろぺろと舐めた。

 が、すぐにはっとした。

 慌てて、机の上にあった消毒スプレーをイスにさっと吹きかけた。

「崖っぷち首相の汚れを、きれいにしとかないとね」

 ぶつぶつ言いながら、布切れでイスを、すみずみまでゴシゴシと拭いた。

 そうしていたら、首席補佐官が部屋に入ってきた。

 首席補佐官は、イスを拭いている首相に怪訝そうな視線を向け、言った。

「首相、そんなことをしてる場合じゃないですよ」

「何かね?」

「何かねって……。国会が始まるんですよ。準備しないと」

「そうだね」スプリングはイスに座った。座ったまま、イスをくるくると回し、

「早速、あれを持ってきたまえ」きゃっきゃと言いながら、補佐官に命じた。

 補佐官は「あれって、何ですか?」と言った。

「あれだよ、あれ。印象薄い名前だから忘れちゃったけど、ほらほら、いつも誹謗中傷記事ばっか書いてる、あの週刊誌だよ。早く持ってきて」

「どうしてですか?」

「だって、国会が始まるんだろ? 自民党を追及しなくちゃ。国会会期中、追及しまくって審議を止めてやらなくちゃね。ほんでもって、何も決まらないのは自民党ちゃんの責任だとさらに追及して、我が党の得点にしなくちゃね」

「何言ってるんですか? 我が党は与党になったんですよ?」

「うん。……だから、何?」

「だから、得点稼ぎなんて、もう必要ないんですよ」 

 補佐官の言葉を聞き、スプリング新首相は心底残念に思った。自民党のあらを探し、そいつを追及する。政治家冥利に尽きるその喜びを、もう味わえないの? あまりに落胆して、涙ぐんだ。

 そして、ぐすぐすと泣いているうちに、不安も感じ始めた。

 不安はどんどん大きくなっていき、やがてスプリング新首相をすっぽりと飲み込み、彼をコマのようにくるくると回した。

 眩暈を感じた。新首相は気持ちが悪くなった。吐きたくなった。

 堪えられなくなり、新首相はくるくると回していたイスを止めた。そして、思い切って、自分の抱いている不安を、補佐官にぶつけてみた。

「じゃあ、国会で、何するの?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ