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第1話 いや、攻撃力は?



 …えーっと、自己紹介をしておこうか。


 俺の名前はキューブ。


 天才モンスター・テイマー、サーシャ・シュヴァルツシルトから生み出された幻獣であり、彼女の分身だ。


 俺は自分自身のことをよく理解している。


 自分の「能力」を誇りに思っているし、なんなら、自分の“才能”について鼻高々に言いふらしたいくらいだ。


 それぐらい、自分が「何者か」を知っているつもりだった。



 だが、どうだ?


 最近になって気づいたんだが、世の中のトレンドはド派手なエフェクトの範囲攻撃魔法であったり、“とりあえず殴っとけ“的な脳筋体育会系のポンコツマインドだったりする。


 地味な回復魔法や、強化系のサポート魔法なんて誰も見向きもしない。


 とくに、「防御力」なんぞには。


 あれもこれも、ハンター協会に現れた国際的大スター、“Mr.マックス“の登場によるところが大きいだろう。


 最近じゃ、彼の活躍が民放のテレビでも放映されているほどだ。


 彼は10年前に起こった”ある事件”を救った英雄として世間に認知されており、以来、グレンシティを代表するモンスター・テイマーとして、ハンター育成用のトレーニングジムを経営している実業家にもなっていた。


 「モンスター・テイマー」というのは、俺たち“幻獣”を扱う人間たちのことを指す。専門用語が多くて申し訳ないが、簡単な話、…そうだな、“人間の分身”とでも言った方がいいだろうか?形容の仕方は様々あるが、手っ取り早く言うなら、「パートナー」という言葉が、一番しっくりくるかもしれない。


 幻獣と人間は密接な関係にあり、「脳」と「心臓」、——あるいは、「骨」と「肉」のように、どちらかを切って離すことはできない。


 お互いが、お互いにとって欠かせない存在なんだ。


 どちらかが欠けてしまっては、「存在」というカテゴリーに於いて、自己を確立することはできないだろう。



 …うーん


 少しややこしいか?



 どうしても小難しい言い方になってしまうが、「人間」という存在は、生まれつき“負のエネルギー”に汚染されている生き物なのだ。


 この「負のエネルギー」というのもいかんせんややこしく、これといって簡単な説明ができないかもしれないが、要するに、生まれつき“爆弾を抱えている存在”だと、科学的な観点からは説明することができる。


 理性。


 そう、鍵は「理性」だ。


 元々この世界のあらゆる生き物は、理性という概念すらなかった。


 自然のままに生き、自然のままに死んでいく。


 与えられた時間の中で規則正しく生き、決して、道を踏み外すことはない。


 「動物」には、善悪を判断する基準が無い。


 …いや、“基準が無い”というよりは、善悪を必要とする社会的な時間や空間が無い、と言った方が良いのかもしれない。


 あらゆる生物には物事を判断する「思考」というものが存在するが、この思考の中に、選択を広げるための「自由度」を持つ生物は、あまり多くはないと言えるだろう。


 とくに人間以外の動物に関しては、一部の例外を除き、「言語」を持つことはない。


 動物には社会はない。


 動物には芸術はない。


 いや、 もちろん、ある種の言語、ある種の社会、ある種の芸術はあるといえるだろう。だが動物には、人間のそれのように、文字や音声を独立して分類させうる言語は確かにない。社会に類似したものはあるが、 いわゆる法に支えられた国家はない。芸術的な事例は自然界に多々存在するが、みずからの意志において芸術を創作することはない。進化的にみて、人間の諸特性の萌芽は霊長類のさまざまな動物にみいだしうるし、そこに一種の連続性を設定することも理がある。


 ただ両者のあいだには、やはり本質的な違いがある。 この問いは突き詰めていけば、人間とロボットの差異、つまりは人間的なものと機械的なものとの差異を考慮することにもかさなっていく。


 人間が人間であることを考えるとき、どこかで知性的な能力がおりこまれている。


 それは動物/人間のあいだの、 接近することはするが分離する境界線の意味を把握することによってしか、個別的に精緻化できるものではない。ロボット研究と動物研究とは、いつも表裏一体になるとおもわれる。負のエネルギーというのは、動物には備わっていないエネルギーの一種だった。


 このエネルギーの詳細を辿っていけば、その性質としての実態は思考の中に生まれる“熱エネルギー”とみなすことが可能であり、選択をする上で必要となる“自由度”や“可能量“に生じる細胞内の分子運動が、負のエネルギーの核となる部分に密接に関わっているとされる。



 …ああ、自分で言っててややこしいな



 長々と喋って申し訳ない。


 要点を述べろって?


 そうは言ってもだな、色々と端折ると逆にややこしいだろ?


 「幻獣」っつーのは、人間のように理性を持つ動物特有の「言語」であり、「選択」であり、「思想」であり、「自由度」そのものだ。


 単純にそれだけを言ったら、わけわかんなくて頭がパンクすると思ってだな…


 俺だってまだ、いまいちよくわかってないんだ。


 自分が人間なのか幻獣なのかわかんなくなる時だってあるし、そもそも“幻獣“ってなんだよって話ではある。


 人間の分身なら、そのまま「分身」で良くね?ってかんじだよな?


 まあ、別に呼び方はなんでも良いんだ。


 幻獣って言い出したやつが単に思いついただけだろうし、改名する余地はいくらでもある。


 人間だろうが幻獣だろうが、ようするに見分けがつくような言語に置き換えてるってだけで。

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