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桜と出逢い。

重い瞼を持ち上げてブレザーの袖に手を通す。

昨日までの春休みがなぜか懐かしく感じる。

充実した春休みだった。

友人と当てもなくなって遊びに出たり、家族と出かけたりもした。

あまり活動日のない部活に行ったり、好きな本を読んだり…。

時間を忘れて友人と通話をして、徹夜したり…。


一年前の自分であればきっとこんな未来は想像できなかっただろう。

そんな日々を送らせてくれる親と友人には感謝しかない…。言葉として発することはないと思うが。


「今日はお弁当いらないんだっけ?」

母の声が聞こえる。朝から元気な声に僕は一瞬耳鳴りを起こす。

「大丈夫。今日は午前で終わるから。」

「どこか出かけるの?」

「いや、直帰だよ。」

と言葉を交わし、僕は扉を開け、外に出る。


散り始めている桜、春一番とは言い難い冷たい風が頬に突き刺さる。マフラーを巻いてくればよかったと一瞬後悔をするが引き返すことはなく歩みを進める。


僕の通う夜空よぞら高校は僕の家から徒歩10分ほどの近い高校。学力レベルも合い、その近さが魅力に感じて僕はこの高校を志望したまである。いつも家を出る時間がギリギリでも間に合うことに僕の単位は何度も救われた。


スマホを開く。画面には「8:04」と表示される。

早く出過ぎた…。始業時間は8:40のため、このままだと余裕がありすぎる。

「ちょっと遠回りするか。」

と呟き、僕は暗い路地裏に歩みを進める。

幼少期の頃、「お化け路地」と言われ、怖がられていた道、最も今考えると可愛いものだが。

「懐かしいなぁ。」

と呟きながら僕は歩みを進める。

幼少期、友人とドラム缶でかくれんぼをした記憶、風が吹いてゴミ箱が倒れたのを本当にお化けの仕業だと思い、学校で騒ぎ立てた記憶。頭の中をなぞるようにして歩みを続ける。

時間を忘れていた。ふと気づき僕はスマホをもう一度開く。

「8:32」

「やっべ。」

少し思い出に浸りすぎたようだ。しかし走れば間に合うだろう。

そして走り出したとき、視界に何が入る。

それに視線を合わせると…。

1人の女性がベンチに座っていた。膝を抱えて。しかも僕と同じ制服を着ている。

僕は何か無視できず、話しかける。

「どうしたの?具合、悪い?」

「うーん、いや。」

そして女性は顔を上げる。とても整った顔。長いまつ毛に綺麗な弧を描いた目。高い鼻筋にサラサラな髪を下ろした彼女に僕は一瞬見惚れる。

「大丈夫、ちょっと迷ってただけだから。」

と言い立ち上がる。

「遅刻するよ、急がないと。」

と言って走り出そうとする。

僕は何も言えずに立ち尽くしていると、急に立ち止まって振り返って言った。

「あと、先輩には敬語ね!」

「えっ。」

先輩だったのか…。しかもなぜ僕が後輩だと知っている?

僕は頭がいっぱいとなり、この場で立ち尽くすことしかできなかった。

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