AIとのつき合い方は5年後には激変する ~NPU時代の到来と執筆環境~
■ はじめに
「AIの利用料が『今だけ』安い理由 ~数年後には利用料が3倍以上になる?~」では悲観的な未来予測をしましたが、それだけではない……ということをNPUを元に考えてみます。
しかし、より地獄感が増してしまったのは筆者の悪癖です。
■ NPUとは?
NPUの正式名称はNeural Processing Unit(ニューラル処理ユニット)です。
これは、AIモデル――特にディープラーニング系の推論処理を高速・低電力で実行するための専用チップです。
既にスマホやパソコンの一部には、NPUが組み込まれる方向性ですね……既に事態は動き始めています。
あなたも、Microsoftの「Copilot+PC」などは耳にしたことがありませんか?
もっとも現時点では、NPUを搭載しているのはノートパソコンでの限定的な一部です。
■ 現在、個人で自分専用AIを持つためには?
現在のAIはGPU、高性能な最新グラフィックボードをブンブン回して実行しています。
ChatGPTを提供しているOpenAIは、2025年8月に「gpt-oss」の提供を始めました。
極めて高い性能のコンピュータを持つ人であれば、個人でAIを動かせるのです。
私自身、Mastodonという分散SNSにて、その関連のスクリーンショット等を見かけます。
ただし、そのハードルは高いのです。
「gpt-oss-20b」という、ChatGPTでいう「o3-mini」相当を自宅で動かすならば――
メモリは最低32GB、できれば64GBがいいでしょう。
グラフィックボードはnVidia製の新世代(RTX3090/4090/5000 シリーズなど)が推奨です。
CPUも8コア~16コア程度で、クロックが高いのものが望ましいです。
ストレージはNVMe SSDで1TB以上を確保できるものを準備しましょう。
こうなると、電源も700W~1000Wが必要になってきます。
この性能のパソコンを持つ小説家というのは、極めて稀だと思います。
どんぶり勘定で「最高峰のゲーミングPCにメモリ強化と冷却強化」が目安でしょう。
私自身、こんなに高性能のパソコンにはできません。
さらに上位の「gpt-oss-120b」というモデル――ChatGPTでいう「o3」から「o4-mini」に近い性能だと推測されます。
これを実用的に動かそうとするなら――
メモリ128GBに、nVidiaのグラフィックボードのVRAMは96GB。
もはや完全にAI専用マシンですね。
ゲーミンググラフィックボードのVRAMなら、8GB~16GBもあればゲームには十分……まともなAIを動かす為に必要なスペックが、どれ程桁違いかという話です。
実際にChatGPTで、今現在「o4-mini」を――敢えて選んでる人がいますか?
「o3」はChatGPTから既に廃止されたモデルです。
「o4-mini」はChatGPTの現行レガシーモデルで最も軽量なモデルです。
結論として、今この構成で自宅AIを小説家が試すのは――時期尚早と言わざるを得ません。
技術的興味がなければ、gpt-oss-20bでさえ導入は困難でしょう。
今は、熟練の技術者が……色々と試行錯誤しています。
技術的ハードルも、要求するパソコン性能も、極めて高いです。
『ファインチューニング』と言われて、何の事だか、わかりますか?私もよくわかりません。
そもそも「oss」とは何の略かをご存知ですか?――私の観測範囲では、そんななろう作家は希少種と呼ぶことすら、過大評価だと感じています。
自信がある方は、こちらから導入に挑戦してくださいな。
残念ながらWindowsではテストされていないので、MacかLinuxの環境と知識が必須ですね。
WSL(Windows Subsystem Linux)で動かせるとは思いますが……どちらにせよハードルが高いでしょう。
https://github.com/openai/gpt-oss
これを書いている私自身、少し震えています。
「月額20ドル前後で、実用上問題なくAIが使える」――この恩恵が、どれほど異常であるかが見えてきますね。
■ NPU時代が到来したら?
NPUがCPUに内蔵されていくのは、業界全体が向かっている潮流です。
Apple、Intel、AMDがCPUと統合する方向……と言えば、その潮流の強さがわかるでしょう。
ここからは、私の推測比重が高くなります。
今現在はgpt-ossもまたNPUに対応していません。
これも、いずれはNPU対応になっていくでしょう。
しかし、その期間は数年単位……と見るのが妥当です。
そもそもですよ?NPU内蔵CPUが――ノートパソコンやスマホに使われる程度です。
なので、私自身はNPU対応に……五年くらいは掛かるのではないか、と睨んでいます。
NPU内蔵CPUが単体で店に並び、デスクトップパソコンの上位機種にもNPU内蔵CPUが当たり前になる。
そこがスタートラインです。
スタートラインにたどり着いたら、次の課題が待っているのではないか、と私は推測します。
NPUの覇権争いが、きっと起こるでしょう。
時に競合と共通規格を作ったり、時に競合をの差別化をしたり。
AMDはIntel互換のCPUを作った(今やIntelがAMD互換CPUを作っている……これが正確ですが)という経緯から、この二社は互換性を持つ可能性があります。
この二社のデスクトップパソコンシェアは絶大ですから、Appleや他社も――追随する可能性は十分あります。
いずれ、小説家やプログラマなどの創作者にとっては、NPU内蔵CPUが当然になるのではないか、と思います。
ただし、事務などの企業向けや、エントリーモデルのパソコンには搭載されるかは……あまりに未知数です。
もしかしたらMicrosoftが「Windows 12」として、NPU内蔵CPUを動作条件にするかもしれませんね、Windows 11でも古いCPUを切り捨てましたから。
その上で「NPUがあればAIが自宅で簡単に動く」というのも、かなり楽観論だと思います。
例えば、Windows環境ではCopilotがNPUを占有するかもしれません。
現時点で、gpt-ossがWinodwsでテストさえされていない、という事実も懸念材料です。
もしかしたら、Microsoftからの支援を受けている……といった政治的事情があるかもしれません。
加えて、NPUだけで――AIに必要な全ての処理ができるのか?という懸念もあります。
やはり、やはり高性能なグラフィックボードとの併用になるかもしれません。
当然、CPUも高性能でなければならないでしょう。
NPU内蔵CPU自体の価格が、高止まりしてしまうかもしれませんね。
■ 今までのサービス型AIは?
NPUの覇権争いが始まる頃には、サービスとしてのAIも――適正価格に向けて動き始める可能性は十分にあります。
「AIの利用料が『今だけ』安い理由 ~数年後には利用料が3倍以上になる?~」も、是非ご覧ください。
https://ncode.syosetu.com/n2349le/
今はサービスとしてのAIが覇権争いをしている訳です。
そのサービスの覇権争いと、NPUの覇権争い、二正面作戦など採るでしょうか?
私には――正直そうは思えません。
AIユーザーにとっては、この時期が一番厳しくなるでしょう。
サービス利用料が適正価格に値上げされて、その回避策もない――あまり想像したくない時代も、十分あり得ると思います。
NPU内蔵CPUが十分普及する頃に、やっと地獄の業火が弱まるかなと。
その時に――ユーザーは選択しなければならない訳です。
・適正価格のAIサービスを使い続けるか?
・イニシャルコストが嵩む、NPU内蔵のパソコンを導入するか?
当然ですが、NPU内蔵パソコンが動かすAIは――AIサービスに比べて、推論は貧弱になります。
結局の所「高いからAIサービスを諦めるか」と「従来のようにAIサービスを使いたいから、契約を継続するか」という話に収束していくでしょう。
AIサービスのプランも、段階ごとに用意される時代が来る可能性は十分あります。
あるいは、従量制サービス化……という可能性もあります。
「性能が高い」と調子に乗ってAIを使っていたら、高額請求が翌月やって来る。
……そんな未来だけは、個人的には勘弁して欲しいですね。
現実には、そういうサービスが既にあるので――避けられない未来でしょうが。
■ おわりに
このNPUは、ごく部分的にAIサービスでも取り入れられる可能性も、ゼロではありません。
しかし、NPUは基本的に用途が限定的……もっと言えば、NPUは専用化しすぎになります。
ゆえに、高速だけど融通効かないとか、モデルアップデートに極めて弱いとか。
加えて、そのような構成ですと保守性でも難が出てくるでしょう。
なので「NPUをAIサービスで取り入れてコストダウン」という夢を見るのは――ひとまず止めておきましょう。
「おわりに」が抜けていました、伏してお詫び申し上げます。
2025/11/03追記:一部誤解を招く内容がございましたので、お手数ですが「数年後には、小説家もハイエンドグラフィックボードが必要になる?」もよろしければご覧ください。
https://ncode.syosetu.com/n7862lh/




