悪党の美学
誉れを欲せず
善を装わず
だがただの獣にも堕ちぬ者あり
手を汚すを厭わず
だが他人に押し付けぬ
命を奪うその指先で
花びらを拾い上げる
笑わぬ
語らぬ
称されず、記されず
ただ、沈黙のうちに
この世の醜を飲み干す
剣を振るうとき
心は冷えず
筆を走らせるとき
涙もまた流れる
力を誇らず
正しさに酔わず
だが誰よりも
正義を疑い
悪を見つめ
人間という獣の矛盾を
その身ひとつに抱く者あり
誰も救わぬ
だが誰よりも
この世界を愛していた
だからこそ
最後の最後で
名を刻まずに死ぬことを選ぶ
それが
我が悪党の――
唯一にして最後の
美学である