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面倒見はいいからね

文字数は安定しませんw

再構成して、区切りいいところで更新してます。

あらかじめご了承ください。

 俺、清水魁人はアイドルヲタクだ。

 地下アイドルユニット『ロスヴァイセ』のデイジー・ヴァルキリーちゃんにガチ恋こじらせた救いようのないヲタク。きっとデイジーちゃんが卒業して、俺の目に触れない、手の届かない場所に行ったとき。燃え尽きたわけじゃなく、フラれたような消失感を覚えるタイプのヲタクだ。

 わかってんならやめとけって? それができたら苦労しねぇよ。


「……よし、これでOK」


 今までベッドに腰かけてスマホを触っていた俺はぱたんと倒れて横になるとスマホを枕元に置く。

 するとタイミングがいいのか悪いのか部屋のドアがノックされる。


「よ~う魁人、ちょっといいか?」


「こんな時間になんかあったのか?親父」


 時刻は23時半、普段ならとっくに寝てるはずの親父が俺の部屋に来たってことはなんか起きたか?

 俺の返事を聞いて、親父がドアを開けて部屋に入ってくる。


「遅くにすまんな。魁人、来週の日曜日は空いてるか?」


 普段毎週土日はイベントで家を空けることが多い俺。そんな俺に予定を聞くってことはまたアレか?


「ちょっと待って。スケジュール見るから」


 そう言うと俺はスマホのロックを解除して、スケジュールを確認する。

 来週の日曜は……、ロスヴァイセの遠征じゃん。あ、でもこれデイジーちゃんいないから干せるわ。

 干せる、ってのはその日のメインになり得る現場に対してホントは行けるけど回避できるって意味な。


「ライブ行く予定だったけど別に行けなくてもいいやつだわ。どっか行くの? また手伝い?」


「いいや、今回はアレじゃないんだ。今お前が世話になってる瑛二郎。あいつが再婚するってよ」


 ……え? おじさんが再婚した?

 瑛二郎。時光瑛二郎さん、親父のいとこで地元近辺で幅広く事業を展開してる人。

 ひょんなことからおじさんの会社でバイトすることになってもう2年とちょっと。

 バイト中も軽く話したりなんかしてて、仲は悪くない。

 どういうこと?

 5年前に前の奥さんの不倫、かつ子供も不倫相手の子供だったことがわかって盛大に激怒。

 おじさんがやってる会社や取引先まで巻き込んで粛清したあの時。

 もう結婚はいいや、って言ってたあの人が?

 混乱してる俺を見ながら親父は話を続ける。


「最近瑛二郎、会社にあんまり顔出してなかったろ? 結婚相手と過ごす準備のために仕事量を前々から調整してたみたいだ」


 どうりで最近おじさんに会わないわけだ~。

 まぁ、いつも通りの仕事するだけだったし話し相手もそこそこいるから退屈はしなかったけども。

 って、あの離婚以来仕事の鬼だったおじさんが?!


「え? マジで?」


「ああ、マジだ」


 普段おちゃらけた親父の滅多に出さない真顔。

 それだけでマジだってわかる。


「そんで他の親戚連中が金は出すから祝いをするぞ!って盛り上がって。兄貴の家が一応本家だし、そこでやるってよ。新しい奥さんとその人の連れ子も連れて挨拶にくるらしい。兄貴もその話聞いた時に、今大阪にいる春生くんに帰ってくるように言ったみたいでな。うちだけ来ないのもおかしいだろう?」


 そういうことか。

 人がたくさん来る時の親戚の集まりが苦手だから気乗りはしないけど、新しい奥さんや再従姉妹は気になるな。

 仕方ない、行こう。


「わかった。じゃあ俺も行くよ」


「そうか、すまんな。あ、あと朝早いから前の日早く寝ろよ」


 それだけ伝えると親父は部屋から出ていく。

 来週の日曜で助かったな。仮にデイジーちゃんがいたとしても俺はそっちに行ってたと思う。

 いない理由は誰に聞かれても仕方ないって言われる理由だけど、デイジーちゃんがいないならその理由を説明しなくて済む。だってデイジーちゃんがいないんだもん。俺の推しがいないなら俺がいなくてもおかしくない。


「マジか~。おじさん再婚か~」


 俺が今こうしてヲタクやってられるのもおじさんのおかげみたいなところあるからさ。

 そのおじさんが幸せになるならこれほど嬉しいことはない。

 遠征行かないって決めたし、ついさっきしたバスの予約はキャンセルしないとな。





「魁人、今大丈夫?」


 いよいよおじさんの新しい家族に会うのも明後日、となった木曜日。

 絶賛バイト中、大量の書類をシュレッダーにかけている俺の元にやってきたのはそのおじさん。


「大丈夫だけど……」


 手を止めて、おじさんに呼ばれるまま社長室に入るとソファに座るよう手で促される。

 それに従ってふっかふかのソファに座るとおじさんが対面に座る。


「久しぶりだね。お父さんから話は聞いた?」


 何故か机の上に置いてあったケトルから湯飲みにお湯を注いで一口。

 ほっと一息ついたおじさんがそう言う。


「うん、再婚だってね」


「いや~、まさか再婚するなんてね。思わなかった」


 確かにあの頃のおじさんの怒りようからは想像できなかったなぁ。


「明後日、来てくれるんだよね。あの子……、うちの子も来るからよかったら仲良くしてあげて」


「ああ、うん。もちろん。嫌なこと言われなければ」


 冗談めかしてそう言うとおじさんも笑いながら答える。


「うちの子はとってもいい子だから大丈夫だよ。魁人がきてくれて助かったよ。意外と面倒見はいいからね、魁人」


 んなこたねーよ! 面倒なことが嫌なだけだよ!!

 そのあと少し話をして、シュレッダー作業に戻って、ちょっと掃除をするとちょうどいい時間。

 タイムカードに打刻して、俺は家に帰るべく会社を出たのであった。

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