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はじめましての双子ちゃん(後編)

なんとか今日更新できた~。

「魁人お兄ちゃん」


「魁人兄ちゃん!」


「お~、いらっしゃい。ほら、こっちきな」


 あれから足繫くうちに来るようになった双子ちゃん。

 だんだんと慣れてきたのか今じゃ俺の部屋でマンガを読んだりすることもあるんだ。

 俺が部屋にこの前買ったグッズを飾ろうとしていると、2人がやってきた。


「あれ? これなに?」


 ねおんちゃんがグッズに気付いて俺に尋ねる。

 よく聞いてくれた!


「これは俺の推してるアイドルのデイジーって子のグッズなんだ」


「へぇ~、アイドル!すごいね、ゆいちゃん!」


「うん、すごいね。ねおんちゃん」


 君たち2人も十分アイドルだよ、なんて気持ち悪いこと言いそうになったけどしょうがないじゃないか。

 だってかわいいんだもん。


「アイドルはいいぞぉ。基本的には力をくれる」


 基本的には、な。


「基本的には、ってどういうこと?」


「それ話すとなると、長くなるけどいい?」


 ねおんちゃんの質問に笑って答えたはずだったんだ。なのに。


「魁人お兄ちゃん、一瞬で目から光なくなったから聞くのやめよ?」


 なんてゆいちゃんが。

 慌ててたまたま机に立てかけてた鏡を見ると、そこには真っ黒な目をした俺が。

 こわっ。


「う、うん。なんかごめんね」


「魁人お兄ちゃん……、闇深いの?」


 やめて! 全く否定できない!! 闇深いよ!!!

 なんて何とも言えない空気が流れると玄関のチャイムが鳴る音が。


「ちょっと行ってくる!」


 これ幸いと部屋から飛び出て、玄関へと向かうとそこにはささめさんがいた。


「こんばんは、魁人くん」


「あ、うん。どうしたの?」


「今日もあの子たちお邪魔してるんでしょ? 私もバイトなかったし、おじさんたちが帰ってくるまであの子たちの家にいようかと思って迎えに来たの」


 そう言ったささめさんは俺に近付くと、


「……確か今日デイジーちゃんたち来るんでしょ? 準備の時間は大丈夫?」


 なんて小声で。耳元でウィスパー気味に言われるとぞくっとする。

 これがASMRってやつか……。


「ああ、ありがとう。じゃあお願いします」


 双子ちゃんが帰ってからでも問題ないんだけどな。

 でも早く準備ができるのは助かる。


「やっほー! 迎えに来たよ!」


「あっ、芽衣ちゃん!」


「芽衣ちゃんだー!」


 なんてやり取りが聞こえてくるとバタバタ音がして、すぐに3人は出ていく。


「お邪魔しましたー」


「ねぇ、魁人兄ちゃん! 今度ゲームしたい!」


「あっ、ねおんちゃんずるい! 私も!」


 と思い思いの言葉を俺に投げかけて。

 さ、準備しますかね。






「ああ、最悪だ」


 なんて呟く俺。気分は最悪。もうめまいと吐き気が半端ない。

 ことの発端はスタジオの入り口に掃除用品の替えを置いておこうとしたついさっき。

 レッスンも休憩中だったのか、談笑が聞こえる。

 邪魔しちゃ悪いからさっさと物を置いて出ていこうとしたら……。

 聞こえちゃったんだ、俺の悪口。

 すっと何かが冷める感じがして。

 物だけ置いて逃げるように立ち去ったけど。

 ……ここまでやって、この扱いかよ。


「母さん、ごめん。ちょっと調子悪いからレッスン終わりのスタジオ頼んでいい?」


「あんたそう言って……って、本当に調子悪そうね。わかった。お風呂入れそうなら入ってちゃんと寝なさい」


「うん、そうする」


 母さんにやり取りを任せて俺は部屋へと戻る。

 胸も痛くなってきたし、いよいよこれやばいな。

 久しぶりに病んだ。





「ありがとうございました~!」


 魁人の母に声をかけて出ていくロスヴァイセたち。

 普段なら出てこないはずの人がいることに疑問を感じる藍那。


「あれ? 魁人はいないんです?」


 そう尋ねると返ってきた答え。


「ああ、なんか急に体調悪くなっちゃったみたいでね? 顔色も悪いし、また前みたいになったらと思うと心配で。早く寝かせることにしたの」


「そっか~。魁人にお大事にって伝えといてください。じゃあまた!」


「すいません、また来週お願いします」


 魁人の母からの答えに納得した藍那と準備を終えたあやめがそう言うと、璃紗と共に会釈をして帰っていく。

 それから数日間、魁人はベッドから動けなかった。

 精神的なショックからくる心身症。魁人には経験があった。

 今回は前回よりもひどい。いよいよ俺も心療内科か……。

 もう何日も学校に行けてない。ダメだなぁ。

 でも、身体が動かないんだ。何もする気が起きない。

 自分で自分を責めていると、遠慮がちに部屋のドアがノックされた。


「……はい」


 母が何か持ってきてくれたのか? そう思って返事をするとドアを開けたのは意外な人物だった。


「魁人くん、具合はどう?」


 本来ならまだ授業を受けているであろう同級生、佐々木芽衣の姿がそこにあった。


「ささめさん……なんで?」


「いやー、最近魁人くん学校来てないじゃん。連絡した時に調子悪い、って言ってたからお見舞いと……」


 そう言いながらベッドの横に座って鞄を漁り出す芽衣。

 一体何が起こってるんだってばよ、と混乱する魁人。

 すぐに鞄漁りを止めると、芽衣の手には封筒が2つ。


「これ。結衣ちゃんたちから預かったの。手紙」


 手渡された封筒には魁人お兄ちゃんへ、魁人兄ちゃんへ、と書かれていた。

 封筒を開けて手紙を読む。ふっ、と笑みが浮かぶ。


「元気出た? 結衣ちゃんたちとゲームする約束してるんだっけ? 早くよくなってよ、魁人お兄ちゃん?」


 微笑む芽衣と、それを見つめる魁人。

 その瞬間だけ、胃の痛みと吐き気が収まった気がした。


「あの子たちにお礼しなきゃな……。いつまでも調子悪いまんまじゃいけないし。別の病院行って、早めに動けるようにはするよ。……ありがとう、ささめさん」


 双子の力は偉大だなぁ。

次週ですが多分更新できません。

8月2日か3日の更新が最速になるかもです。

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