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いつもどおり

親ドル、設定変更、修正してりにゅ~あるとして更新していきます!


時代設定

2014年ごろの日本によく似た国、日ノ元[ひのもと]


変更点

・魁人のお金稼ぎの手段

・藍那の名字が時光に

・ロスヴァイセのメンバーが3人に(デイジー、アイリス、メリッサ)


その他話の流れが変わったり、旧版とは違った親ドルお楽しみください!

「おっと、そろそろかな?」


 コンビニのフードコートでお茶を飲みながらスマホを見ていた俺は目の前にあるライブハウスへと向かう。


「いらっしゃいませ~。お目当ての出演者はいらっしゃいますか?」


「ロスヴァイセで、名前はさきがけ太郎になります」


「……あ、はい。さきがけ太郎さんで1枚ですね。ドリンク代込で3000円になります」


 何度やったかわからないくらいやったおかげで慣れたこのやりとり。

 このライブハウスで行われるイベントに入場するために、この人を見に来たっていう目当ての出演者を告げる。その出演者サイドに行きます、と伝えるとライブハウス側にチケットの取置、という形で自分の名前が記載された取り置き表なんてものが渡される。そこに名前があればだいたい平均で500円くらい安くイベントに参加できるのだ。安くなるならしない理由なんてない。

 ちなみに本名である必要はないので、俺もオタクとしての名前を告げている。


「すいません、5000円で」


 財布から5000円札を取り出し受付の人に渡すと慣れた様子で小さい金庫にしまい込み、お釣りとラミネート加工された小さい紙を俺に手渡す。


「では、お釣りの1,2…2000円とドリンクチケットになります。再入場用のスタンプを押しますのでどちらかの手のひらを出してもらっていいですか?」


「はい、どうぞ」


「ありがとうございます。それでは中、混雑しておりますので注意してお進みください」


 ライブハウスというのは基本的に飲食店、という形で運営されている。

 いわゆる興行場、として営業するには色々な規制があるためにそこまで規制が厳しくない飲食店で営業許可を取る場合がほとんどだ。

 毎日のようにバンドや歌手が来て歌っていても、興行場、遊び場ではない。ステージのある飲食店なのだ。

 なので、経営者は飲食店という建前があるために来場者からドリンク代、を取る。

 こうすることによって飲み物代、という飲食店として正しい売り上げを確保して興行場の無許可営業、なんてことを回避しているのである。

 再入場用のスタンプは再入場、会場から出てももう1回会場に入れるシステムによって、1度ATMなどに出かけたお客さんと、これから入場するお客さんを区別できるように店側が押したりする。お金の2重徴収などを避けるためだ。これはチケットの半券を見せればOKの場合もあるので、ライブハウスによって様々だけど。


「どうせもらっても使わねぇんだけどな……」


 渡されたドリンクチケットを財布にしまいながらそう独り言。

 さっき言ったようにライブハウスは飲食店。でも無理矢理飲み物を飲ませるわけにはいかない。

 だからこうしてライブハウスはドリンクチケットを渡す。喫茶店チェーンにあるコーヒーチケットみたいなもので、飲み物代を先に払っているだけでいつ使うか、どう使うかはお客さんの自由というわけだ。

 ちなみに基本的に有効期限はその日限りである。

なので、ひとしきり音楽を楽しんだ後、乾いたのどを潤すためカウンターで引き換えるパターンが多い。


「おう、太郎!今前の演者ラストだからすぐ始まるぞ!」


 客席へ向かう俺に誰かが声を掛ける。声のする方を向くとそこにはいつものメンバーがいた。


「うっす。スピカさんたちも来てたんすね!」


「学生はいいよな~、夕方でも問題なく動けて。病院行くって言って早退してきたわ」


「スピカさん行けるか微妙って言ってたから、俺も会場きてびっくりした」


「やべぇ、俺暇すぎて開凸したんだけどさ。2番目の逢沢美優ちゃんくそかわいかった。始まるわ」


 笑いながらそういうスピカさん(年齢不詳、男性)とバルさん(22歳、男性)、たまもさん(20歳、男性)。

 ちなみに俺、さきがけ太郎こと清水魁人は17歳の男子高校生だ。

 オタクを始めてから何かと面倒を見てくれるスピカさんと、いつの間にか仲良くなってたバルさん、たまもさん。

 なんだかんだこの4人で固まってることが多いからなんだろ……、誰かいると安心する。


「ちょっとたまもさん、始まりすぎだわ」


「いや、マジで美優ちゃんやべぇから。物販行くしか」


 ちなみに演者というのはイベントの出演者、という意味だったり地下、での活動者全般を指したりする。

 開凸、というのは開場から会場でライブを見てるという意味で、始まる、というのはこれから推す、という意味だ。

 そんないつものやりとりを少ししていると、どうやらもうすぐ出番のようで。

音楽が止まり、客席から人がどんどん出てくる。その流れに逆らうように俺達は中へと入っていく。


「すいません、失礼しまーす」


 オールスタンディング、キャパ200くらいの客席。その最前を目指そうとするけど人が多くて思うように進めない。急がないと始まる。少し強引に進んでいくと、ちょうど客席の真ん中あたりで音楽が流れ始めた。


「今日はここらへんで沸くか」


「そうっすね」


 スピカさんの呼びかけにそう答えた俺は静かにその時を待つ。

 暗転したステージに続々と女の子が立っていく。

3人目の女の子がステージの真ん中に立つと音楽が止まり、少しの静寂の後マイク越しに声が聞こえる。


「まずはこの曲。Break Through The Maze!」


 その声と同時に眩い光がステージを照らし、音楽が流れだす。

 ヤバい、アガる。いや、違う。高まる!!

 横を見るとスピカさんたちも同じようで、首を上下に動かしカウントを取り始めた。


 3、2、1、0……!!


「ぅっうぉい!ぅっうぉい!ぅっうぉい!ぅっうぉい!あーっ……、しゃーいくぞぉー!」


 俺達の濃い20分間が始まった。

 




「みなさん、どうも~!私達の世界へようこそ!」


「1人1人が女神さまっ」


「「「ロスヴァイセです!!」」」


 1曲目が終わり、息を整えながらのMCが始まる。

 だいたい尺短いと1曲目の前奏中に自己紹介するし、それ以外だと1曲目終わりにMCをして自己紹介を入れるパターンが多い気がするな~。あくまで今まで通った現場の中でだと。

 あ、尺って言うのは出演時間。1組当たりの持ち時間がだいたい15分~20分。

 人気があったり、出演組数が少ないじっくり楽しむタイプだと25分~30分なんてところも。

 現場っていうのはイベントやライブのことだったり、その会場のことを指したりする。

 ライブハウスやイベント会場のことは箱、って言ったりするから覚えておくように。


「それでは自己紹介していきます!今日は~…右からいこう!」


 客席から見て1番左のお姉さんの仕切りでメンバー個人の自己紹介が始まる。

 自分から逆側から順番にってことだな。

 ちなみに客席から見て右側を上手、左側を下手ともいう。


「はーい、みなさんこんばんは。メリッサ・ネクタールでーす」


 自己紹介が終わった瞬間にそこらにいるメリッサ推しから名前を呼ぶ声が会場に響き渡る。

 今日は短縮版か。持ち時間20分はさすがにきつかったみたいだな。


「こんばんわー!デイジー・ヴァルキリーです!今日も盛り上がっていきましょう!!」


 そういうと手首につけたシュシュを取り、客席に向かって投げるデイジー。

 俺の推し、デイジーちゃん。

 アイドルの私物プレゼントにヲタクたちがざわつく。

 シュシュの行く先を目で追うと真っ直ぐ俺に向かってくる!!

 滅多にない出来事に心が叫びたがっているがそうも言ってられない。

 獲るっきゃねぇ! 俺がやることはただ1つ。


「でいっじいいいいいいいいいいいい!!!!!!」


 推しの名前を全力で叫ぶ! そして高く飛ぶ!大地を蹴って飛び上がる!

腕を振り上げてここにいるよってアピールも忘れずに!!

 そして、見事にキャッチ成功!! 推しの私物はなんとしても手に入れたい派のオタクです。

 あ、デイジーちゃんと目が合った。レスきたわ。高まった。

 ……ん? マジかよ!! 手ぇ振ってくれた!!

 あー、もう最高。はい、もう今日帰れる。帰らないけど。


「あー、やば。膝痛いけど推しジャンも辞さない」


 好きな女の子と目が合うだけで、なんでこんなに胸がドキドキするんだろう。

 なんてことを思っている間に1番左のリーダー、アイリス・メーテルリンクさんの自己紹介が始まろうとしている。


「どうもー、アイリス・メーテルリンクです。よろしくお願いします!」


「アイリース!!!」


 間髪入れずに大声で叫ぶスピカさん。……めっちゃうるせぇ。


「はーい。今日はちょっと長い曲を歌うのでMC短めでいきまーす。次はあのアニメの歌を歌います。聞いてください……」


 そうして2曲目が始まり、あっという間に終わると、続けて3曲目。


「最後の曲です! ……狂気が求む比翼連理」


 2曲目が終わってアイリスさんがそう言うとすぐに歌が始まる。

 マジかよ、比翼連理かよ。

 

「キミ以外何もいらないから、ひとつ証をちょうだい」


「離れないよ、離れないで。この想いを全部受け止めて」


 メリッサさんが歌い出し、続けてデイジーちゃんが歌って始まるこの狂気が求む比翼連理って曲。

 ロスヴァイセらしからぬ楽曲で、好きなんだけど。

 とにかく歌詞! マジでこういうのは昔のヴィジュアル系バンドでしょ。

 曲もそれっぽいし! って最初聞いた時思ったね。

 誰かがごり押したに違いない。

 そんなことを思いつつ、俺は最後の1曲、声を張り上げるのだった。


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