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階段
トンネルの向こうからムワッとした嫌な空気を感じる。
そして電車の走るレールの音が近づいてきた。
太一は駅のホームの柱に身を潜めた。
真っ黒な電車が大勢の人影を乗せてホームを通過する。
直感的に見られてはいけない気がした。
太一は駅の階段を上がり始めたが、登っても登っても出口が見えない。
そのうち、太一は階段の途中でうずくまってしまった。
「おれはもうだめだ。これは空想なんかじゃない。こんなに息が苦しいのは現実だからだ。
おれはどこから来たんだ。。でも、、あの丘で会いたい__。」
おぼろげの意識の中で太一はまだ希望を失ってはいなかった。
這いつくばって、太一は力を振り絞り、階段を登る。
どれだけ時間がたっただろう。太一の足が完全に止まってしまった。
「もう無理だ。。。サキ。。」
太一はふと自分の口から出た言葉に驚いて、口をおもわず押さえた。
「さ、、サキ?サキって誰だ。。」
「サキ。。」
太一はそのまま気を失ってしまった。