記憶
妙に腑に落ちた。
太一は自分の心の虚しさをちゅむに知られていることに気がついた。
「じゃあ、どうすれば?俺に大切な人がいるとすれば、どこの時点にもどればいい?」
ちゅむ
「それは君にしかわからないよ。ただ一つ言えるのは、ここには時間がないの。
でもその虚しさは広がっている。つまりここに何もしないでいたら、その虚しさが広がって
それに支配される。君自身が暗黒の森になってしまうかもしれない。
今、行動するしかないんだよ。なにかおもいだせることはないの?」
太一はネックレスをじっと見つめる。が、何も思い出せない。
わかるのは、、懐かしさ。。雨あがりのアスファルトの匂いのような、懐かしい時間。。
太一は目をつむって、しばらくその懐かしさを頼りに
妄想を広げ始めた__。丘の上に花畑が風に揺れている情景が浮かぶ。
花の香に誘われて、、進んでいく。
すると、花畑の向こうに気配がした。
白くてうすいピンクの肌。ここちいい柔らかな肌の上に転がり、空を眺めている。
青い瞳。その視線の先には、、、子どもの声がする。
見上げると彼女の笑顔が一瞬見えた気がした。
気がつくと太一は、別の駅に飛ばされていた___。
うずくまる太一があたりを見ると、そこは真っ暗な地下鉄の駅だった。