再会
次の日の朝だった。サモラが食事の乗った盆を持って入って来た。
「おはよう! 今日もいいお天気よ。ハルファ様とアドラル様がいらっしゃる日ですものね。早くお会いしたいわ」
食事を終え、アラカはサモラにしばらくいてくれるように頼んだ。ブリア村からマサナ村へ行く途中でハルファと出会い、グルアナの住むラドムに行ったことをアラカはていねいに語った。だがハルファへの想いを告げることはなかった。
「アラカさんをすっと心配してた。ノニさんのこともよ。母も元気がなくて……でも、もう大丈夫ね」
アラカはそっとサモラの手を握った。サモラは強く握り返してくれた。
しばらくベッドで横になっていると、少し開いた窓から聞こえてくるにぎやかな人々の声がしてきた。ゆっくり起き、立ち上がってみる。少しずつ足を動かし、窓に近づいた。
外は大勢のひとであふれていた。庭では花束を持った子どもたちがはしゃいでいる。道にも着飾った男女が並んでいた。ノニたちの姿も見える。
やがて何頭もの馬が整列してやってきた。兵士たちが背中をまっすぐ伸ばして馬にまたがっている。その後ろに王家の紋章が刻まれた馬車が一台ゆっくりと進んでいた。ハルファとアドラルだろう。馬車の後ろには荷物を運んでいる馬車が何台も続き、兵士たちに守られている。見たこともないほどの長い行列だった。
アラカはカーテンの影から眺め、胸に手を当てるとゆっくり息を吐いた。
ハルファとアドラルが馬車から下り、ひざまずいている人々に丁重にあいさつをしている。それからミリアの手を取った。
アラカはゆっくりベッドに戻り、じっと耳を澄ます。やがて廊下に足音が聞こえてきた。扉が静かに開く。
「ずっと傍にいられなくて心配でたまらなかったよ。元気になってほんとによかった。こんなにうれしいことはない」
ハルファの言葉に、アドラルもアラカの手を握りしめて言った。
「ハルファは宮殿にいても、ずっとあなたのことばかり気にしていたの。今日あなたに会えて、やっと心を落ち着けて過ごせるわ。アラカさん、私もとてもうれしいのよ。あなたがどんなに苦しかったかと思うと……」
アドラルが声を詰まらせた。
「もう大丈夫よ。御心配ありがとう」
仲睦まじい二人の前では中々言葉は出てこなかった。
「王は全てを私に任せて下さった。アドラルとグルアナ様にも会いに行くんだよ。私は生涯アラカを忘れない。深い絆で結ばれた同志なのだからね。元気になったら、宮殿にもぜひ来て欲しい。いいね?」
アラカはただ頷いただけで、ぎこちない笑みしか浮かべることができなかった。
やがて二人は立ち上がり、また来ると約束して部屋を出て行った。
夕暮れがやって来て、ノニが食事を運んできた。
「明日から聖堂をこわす作業が始まるよ。クルアーン様を傷つけないように、上の方から屋根をはがしていくんだと。大仕事だね。だから大勢の人間がこの村にやってきてるのさ。そろそろ家に帰りたくなったよ。お前はどうだい?」
ノニが優しく囁いた。
「わたしの家はおまえの家でもあるんだ。分かっているだろ?」
ノニに目を向け、にっこり笑う。アラカの髪を直してから、ノニはベッドのメイに向かって言った。
「すっかり汚れちまったね。お前にも大変な旅だったろう」
メイにもそっと触れ、ノニは部屋を出て行った。
ノニと暮らしたサッサリの家が懐かしく思い出される。井戸端でメイと毎日おしゃべりした。裏庭の壁を飾っていた花々はまだ咲いているだろうか。
「あんたに帰りたい家はあるの?」
メイがたずねた。
「わからない」
「情けないこと」
アラカは肩を少しゆすって笑った。




