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取れないまま

作者: 清水野 凪

 ぼくだけは、オムツが取れないままだった。

 周りのともだちはみんな、オムツを卒業していて、ウルトラマンや、仮面ライダー、戦隊もののパンツをはいている。ぼくはそれを羨ましいなあ、と思っていっつも見ている。ぼくはこの中なら、仮面ライダーが好きかな。

 おかあさんやおとうさんは、ぼくに、トイレの仕方を優しく教えてくれる。それでも、なんでぼくはオムツをとれないのか?考えてみると、やっぱり、毎晩夢に出てくるアイツのせいである。

 アイツは、大きくて黒い怪物だ。最近読んだ絵本によく似た怪物が出てきた。名前は、じゃばうぉっく?ぼくには聞き慣れない。

 夢の中で、じゃばうぉっくはぼくを追いかけて来る。ぼくは必死で逃げる。汗もうんとかく。けど、じゃばうぉっくは飛べるから、最後は絶対にじゃばうぉっくに捕まっちゃう。

 じゃばうぉっくの大きくて硬い手の中で、ぼくは怖くなって、とうとうおもらししちゃう。

 ぼくは、そこでいつも目が覚めて、布団にお漏らししている。現実にじゃばうぉっくはいないのに。


 ぼくは、じゃばうぉっくに勝たないといけない。そう決心した。

 夜になった。うとうとしてきて、目を開けているのが精一杯になる。まぶたが重たい。

 ぼくは、おもちゃ箱から、仮面ライダーも使っている剣を取った。剣を持って布団に入った。じゃばうぉっくっとこれで戦うつもりだ。

 部屋の電気をお母さんが消した。暗い部屋の中、剣を強く握りしめていると、いつの間にかぼくは眠っていた。

 

 気がつくとそこは、あの見なれた風景だった。枯れた木がたくさん生えている。空は低くて紫色になっている。ぼくの知らない鳥の鳴き声がする。怖いところだ。

 そんな時ぼくは、ふと気がついた。手には正義の剣があった。仮面ライダーが、ぼくの味方をしてくれているような気がして、心強かった。

 ぼくは、剣をもってあたりを歩いた。もう少しでじゃばうぉっくが姿を現すはずだ。

 遠くで恐ろしい鳴き声がひびいた。来る。じゃばうぉっくが来る。

 ばさばさと羽がはばたく音がした。遠くから黒い点がこっちに飛んできた。だんだんと黒い点は大きくなって、はっきりと姿が見えるようになってきた。黒くて鋭い爪を持ったじゃばうぉっくだ。

 じゃばうぉっくは、ぼくの目の前に降りてきた。そして、ぼくに吠えて威嚇した。

 ぼくはもう怖くてからだがブルブル震えた。けど、ぼくは負けなかった。

 「今日こそやっつけてやる」私は、剣をじゃばうぉっくに向けて叫んだ。

 じゃばうぉっくはもう一度吠えて、ぼくに向かって、鋭い爪の生えた手を伸ばした。

 ぼくは勇気を出して、その手を剣で振り抜いた。すると、じゃばうぉっくの手は切り裂かれ、じゃばうぉっくは大きくうめいた。

 ぼくはじゃばうぉっくと戦える。そう思うと、どんどん勇気が湧いてきた。自信が出てきた。

 「行くぞ!じゃばうぉっく!」

 ぼくは、じゃばうぉっくにスキがある今のうちに、じゃばうぉっくに走っていって、からだに剣を突き刺した。

 じゃばうぉっくは大きく鳴いて、ゆっくりドスンと倒れた。

 「ぼくは勝ったんだ!」そう叫ぶと、周りが光で溢れた。まぶしくて目を閉じた。


 ぼくは夢から覚めた。ぼくはじゃばうぉっくに勝った。手には剣が握られていた。お漏らしもしていない。

 起きるためにかすんだ目をこすると、目の前に黒い大きい何かがいた。

 「お前、よくもやってくれたな。夢の中で遊んでやるだけにしようと思ってたが、もうやめた。お前を食ってやる」

 ぼくは、目の前のじゃばうぉっくに怖くなって、やっぱりまたお漏らししてしまった。やっぱりオムツは取れないままだ。

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