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あなたの本心を知ってみたい。

 静かな静かな地下室。

僕の縛り上げられた椅子の側にはたくさんの拷問器具や武器が壁にかけられている。

入り口は1つ。窓はない。

ただ天井に吊るされたランプが1つ、この部屋を照らしているだけである。

僕の両手両足は椅子に縛り上げられていて簡単には逃げ出すことができない。

しばらくの間、周囲を観察したり動こうとするが、意味はない事を理解する。


「誰かいないのーー??」


狭い地下室に木霊する僕の助けを求める声。

その声は他者に届くことがないことくらい僕だって知っている。

この洋館にいる人物は僕とあいつの2人だけ。

助けを求める人物による仕業であることは理解している。


「ハァ……まさか、伝説の剣の隠し場所を聞くためにここまでしてくるとは思ってなかったな」


どうせ、犯人の目的は僕から情報を聞き出すことである。

しかし、まさかここまでしてくるとは思ってなかった。

こんなことになるなら地下室があることを教えなければ良かった。

後悔しても遅いのだが、僕は今の状況に至るまでを後悔していた。

もちろん、あいつも情報を聞き出すために僕を殺したりはしないだろう。

だが、あいつのことだ。僕が口を開くまで残酷な拷問を行ってくるに決まっている。

爪を剥がされたり、指を切断されたり、水責めなんかも行われるかもしれない。

そんな拷問を受けている自分の姿を想像すると震えてくる。

なんとかして、ここから脱け出さなければ……!!

速く。速く。急がないと……!!

奴が来てしま…………。




 時がきた。

1つしかない入り口のドアが開き、僕の目の前にあいつの姿が現れた。この洋館にホームステイとして住んでいる人型付喪神イクナである。

今回の現状を起こした犯人である彼女は、どうやら罪の意識はないらしく。

ニコニコとクリスマスプレゼントが届いた子供のように期待した笑顔で、この部屋に入ってきた。

そんな彼女を殺意を込めて睨み付ける。

すると、彼女は一歩足を退いた後、縛り付けられていることを思い出して、ニヤニヤと嘲笑いながら、再びこちらへ向かってきた。


「気分はどうなのです?」


「ああ、最悪だよ。かび臭いし暗いし……。今度ここも掃除してもらうよ?」


「もちろん了解…………って違うゥゥゥ!!!

わっちはもう貴様のメイドではないんです!!」


僕の発言にイラついた彼女は、僕の頬をベシンッと叩いてきた。

頬が赤く染まって少し痛かった。


「こいつ……無抵抗な僕をぶってきやがった。誰からもぶたれたことはなかったんだがな……」


「へッ、今にその余裕ぶった顔が泣いて懇願するようになるのが目に見えますわ!!」


ベシンッ!!

今度は反対側の頬をぶたれた。




───────────────


 ここまで完璧にわっちのペースである。

今回、用意したのはこちら!!!

わっちは持ってきた機械を葛木の前の机にドンッと置く。

その機械を見た葛木はこれが何か分からない様子でポカーンと目の前に置いてある機械を眺めている。

なんだか金魚みたいでその顔がおもしろく。吹き出しそうになりながらも、心優しいわっちはこの機械について説明してあげることにした。


「本心判断付喪神~!!(ダミ声)

これは本心判断付喪神といって文字通り本心を見破る付喪神なのです」


これは相手の心に反応するのだ。


────相手が質問に答える際に思い浮かべた内容を音で判断する尋問器具である。

YESなら音はならず、Noならブブーっという音が発せられる。


これで伝説の剣の隠し場所を聞き出すというわけだ。

久々に我ながら天才の所業であると自覚せざる終えない。

さぁ、さらけ出せ。その冷静な表情の裏に隠されている本性を剥き出しにしてやろう。

早速、わっちは葛木への尋問を始めるのであった。


「まずはこの機械が壊れていないかを確かめなきゃね~。『あなたはホラー映画が好きですか?』」


「はぁ? そんな幼稚な質問がくるとはね。答えはYES…………」


ブー!!

この本心判断付喪神は質問に対する本心を音で表す尋問器具。

音が鳴ると、それはNoということになる。

つまり、葛木は嘘をついているのだ。この音は嘘をついている音なのだ。

その音が地下室に響き渡った瞬間に葛木の顔は恥ずかしさで赤面している。

彼はわっちと目を合わせないように下を向いて、口元に力をいれていた。




 これは面白い。どうやらわっちは面白い玩具を手にいれたようだ。


「ハハハ!! 音がなってるのです。

お前ホラー映画苦手なのかぁ?」


日頃のストレスが溜まっているせいだろうか。わっちは葛木に対して煽り、その彼の悔しそうな顔を見て楽しんでいる。

これはなんと言う面白い機械であろうか。

他者の秘密を二択ではあるが、知ることができると言う素晴らしい道具。

これさえあれば、芸能人のスクープやこの世界の秘密を知っている者から簡単に聞き出せる夢のアイテムである。

しかし、わっちはこの素晴らしい道具をそんなちんけな事に使う必要性を感じない。

行うのは復讐。これまでさんざんメイド扱いしてきた主人への復讐なのだ。


「それじゃあ~♪ 第二問行くよ~!!

『あなたはエッチな本を持ってますかぁ?』」


音が鳴らない。つまり、これは!!!


「へぇー持ってるんだ~。じゃああれかな?」


わっちは悪魔のような笑顔で葛木を見つめる。


「『あなたのエッチな本の隠し場所はぁぁ?

貴様のベッドの下だな!!』」


音は鳴らない。つまり、そういうことである。


「へぇー、やっぱりあの本はそういう本だったのですね~? いや~あなたのお部屋を掃除している時に本の束を見つけたんですがねぇ?」


わっちからの指摘に葛木は何も答えない。

恥ずかしさで死にそうなのだろうか。だが、相手が何も言わない場合でも発動するのがこの本心判断付喪神の恐ろしい所である。

どんなに口を閉ざそうが、どんなに嘘をつこうが、この機械の前では無駄なのだ。


「ほらほら、これを動画にしてあげちゃえば~。どうなるんでしょうねぇ~。あんたの秘密が露見しちゃうのよ~」


ニヤニヤと嘲笑いながら、わっちは葛木を見つめる。

そんなわっちに彼は歯を食いしばりながらも、悔しがっていた。

しかし、さすがにそろそろ本題に入ろうとしたその時!!

わっちは葛木を更に屈服させることができる質問を思い付いたのである。


「『お前に好きな人はいるか?』」

「ちょっ………!?」


この質問にはさすがの葛木も慌てたようだ。

わっちはここで葛木の好きな人を暴露させて、もしもの時に人質として利用するつもりなのである。

さて、その返答は音が鳴らない。

つまり、好きな人はいるという流れである。

では………次にいこう。




 さて、ここからは葛木の好きな人を暴いていこう。

伝説の剣の在処はその後でも充分に聞き出せる。

今はこの機械で遊びたいのだ。この質問の本心をNoだと音を鳴らして表す尋問器具で遊びたいのだ。


「『それは偶数か?』」音が鳴らない。

「『それは2人か?』」音が鳴らない。

「『それは両方とも女か?』」音が鳴らない。

「『それは両方とも同級生か?』」音が鳴る。

「『そのどちらかは年下か?』」音が鳴る。


ここまで集計すると……。

同級生と年上の女性に好きな人が2人いるみたいだ。

まぁ、葛木の同級生については後々調べることとして……。わっちが気になったのは年上の女性である。


「それは誰だ?」


思わず、二択で回答できない質問を投げ掛けてしまった。

すると、尋問器具から機械の音声で『ニンショウデキマセン。シツモンヲカエテクダサイ』と言われてしまう。

なるほど、もしもYESかNoで回答できない質問が出た場合はこうやって教えてくれるのか。

なんて、感心している場合ではない。


「じゃあ、『それはバイト先の人か?』」わっちからの問いに反応して音が鳴る。


「『それは学校にいるやつですか?』」わっちからの問いに反応して音が鳴る。


「『近くに住んでいますか?』」わっちからの問いに音が鳴らない。


「『髪の色は金髪か?』」わっちからの問いに音は鳴らない。


「『それは日本人ですか?』」わっちからの問いに音は鳴る。


ここまで集計すると、年上の女性はバイト関係ではなく、学校関係でもない我が家の近くに住む金髪の外国人だ。

しかし、ここまで聞いてわっちは困ってしまった。

近所に外国人なんて、まだ住んでいないのである。

わっちがまだ出会っていないだけかもしれないが、外国人が歩いている所を見た覚えがない。

日本人じゃない………人が近所にいたのか。

さすがに人質利用作戦は失敗か?

そう思って、真面目に伝説の剣の在処を聞き出そうとしたその時!!

わっちの脳内に一筋の可能性が浮かび上がった。




 いや、いやいやいや、さすがにこの結論には至るはずがない。

わっちのこの予想は絶対に外れているはずだ。

年上で、バイトでも学校にも居らず、近所にいる日本人以外。


「………………ないないないない。いやいやいや。」


わっちはよからぬ想像をしてしまい、首を横に振って雑念を払おうと試みる。

とりあえず、この決定的な質問で判断するべきであろう。


「ないとは思うんだけどさ?

そっ………『それは人間?』」


わっちはこの質問に全ての結果を賭けた。

これがもしもわっちの考察通りなら、ここで葛木の好きな人がバレる。

わっちの脳内で葛藤する小さなわっち達は、この結果をドキドキしながらも待ち望んでいる。

わっちは覚悟を決めて、出てきた回答を受け入れるしかない。

わっちの心臓はドキドキと音を立てて、はち切れそうになっている。

ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ。

どうやら、お互いに緊張しているようだ。

2人はこの地下室でお互いに目を瞑りながら、結果を把握するのだ。

さぁ、その答えは………?




 バキッ!!!???

突然、機械がバラバラと砕けるような音が聞こえてくる。

目を瞑っていたわっちには、何が起こったか分からずに思わず目を見開いた。

すると、足下にまっぷたつに壊された機械の破片。本心判断付喪神はもう判断することはできなくなるほど壊れてしまっている。


「えっ? なになに?

どうなったの? 葛木の相手は?

わっちはどうすればいい?

キスか? なぁ、わっちはどうなるんだ?」


もう何がなんだか。混乱して冷静な判断ができない。

見ると、本心判断付喪神と共に縛り上げていた椅子も破壊されている。

ああ、なんということでしょう!!

あんなにキツく縛っておいた椅子から脱け出し、椅子も機械も粉砕したのである。

わっちの全身が「ここから逃げろ」と危険信号を発している。


───どうやら、さすがにふざけすぎたのかもしれない。

人の恋愛対象に首を突っ込みすぎたのかもしれない。


こいつ…………サイコパスだからな。なんて葛木の性格に納得するが、そんなの口が割けても言えない。

とにかく、葛木を落ち着かせなければ………。


「なぁ、落ち着け葛木。わっちが悪かったのです。」


しかし、わっちの声も葛木には聞こえていないらしい。

彼は壁に飾られた沢山の拷問器具や武器を手にとって物色しているのである。


「なぁ………聞けよ~?」

「おい、イクナ?」


ドスの効いた声でわっちの名前を呼ぶ葛木。

その声にビビリながらも、わっちは葛木からの質問を耳にした。


「今からこの左手に握られた朝星棒ちょうせいぼうと、右手に握られたバルディッシュのどっちでお仕置きすると思う?」


さすが、サイコパス。

わっちみたいな付喪神には容赦がない。優しい笑顔で殺す気満々である。


「そっ…………そうだな~。朝星棒?」


壊れていたはずの本心判断付喪神から、小さな壊れかけの音が鳴る。


「じゃあ…………バルディッシュ?」


先程よりも小さな音が本心判断付喪神から発せられたかと思うと、シーンと完全に壊れてしまい、ただの鉄屑と化してしまった。


「それじゃあ、正解発表行くね?

正解は~」


ダラダラダラ~♪とタイトルコールが鳴り響くような幻聴がわっちには聞こえてくる。

葛木はニコニコとした不適な笑みを浮かべながら、両手に握った武器を振り上げると……。

グジャッ………!!!

結果発表!!!


・イクナ粉砕


・葛木……好意を寄せる人がバレかける

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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