深夜2時に目覚めたい
『ピンポーン ピンポーン ピンポーソ』
夜の2時。
─────ここは福助町にある2階建ての洋館。
草も木も生き物達も眠る丑三つ時の深夜に洋館のインターホンが3回響き渡る。
それはちょうど、僕は自室で寝ようとしていた時です。
こんな夜遅くにいったい誰がやって来たのであろうか。
普通はね。誰かが訪ねてくる時間ではないんですよ。
いや、しかしおかしいんです。
さすがに常識人がこの家のインターホンを鳴らすのはおかしい。
このまま狸寝入りで朝を迎えようと考えたわけですが………。
また、聞こえてくるんですよ。3回!!
『ピンポーン ピンポーン ピンポーソ』
これはもう玄関に向かうしかない。
明日、「こんな夜中に近所迷惑だ」って怒られるわけにもいきませんからね。
そう思った僕は部屋から出ると、おそるおそる玄関へと向かうために、暗い廊下を歩く。
その日の夜は月明かりのみが明るく輝き、美しい満月の日でして……。
こうして夜の廊下を歩いてみると、なんだか肝試しをしているみたいでドキドキしてしまう。
いや~自分の家に住んでいるのに肝試しをしている感覚を味わっちゃったわけですよ。
見慣れている場所も夜だと闇に覆われているわけです。
怖いんですよね。これが…………。
さて、しばらく歩くとまたチャイムが聞こえてくるわけですよ。また3回!!
急かしているんでしょうかね。ちょうど僕も玄関のすぐ側まで到着していまして………。
「はい。はーい。」
何気なく返事をしたんです。
ですが、返事が帰ってこない。
玄関の扉の向こうはシーンと静かなんです。
不思議だな? そう思っていますと……。
その時です。
ガタガタガタガタ!!!!
ドアノブが激しく上下に動かされました。
「ヒヤァァァァァ!?!?」
もう顔面蒼白。急にそんな音をたててきたんです。恐いんですよ。訳がわからない。
とりあえず、玄関から離れて柱の影から覗いてみるんですが。
また、何事もなかったようにシーーーンと静まりかえっていまして………。
もう恐怖と不審で心臓はバクッバクッと大きな音を発てています。
それでも、行かなきゃいけないんです。
ソーッとソーッとゆっくり足を動かして前に進むんですよ。
せめてね? せめて、何者の悪戯か確かめてやろう。そう思いました。
呼吸を整えて、恐怖を圧し殺して進むわけです。
いや~この時間が本当に恐い。
なにせ、玄関前にいるのが誰か分からないんです。
それにこんな夜更けにドアノブをガタガタする野郎がただ者のわけありません。
僕は勇気を振り絞って確かめてやろうと思いました。
このまま逃げ帰ってベッドで寝ることなんてできません。
安心しないと眠れませんからね………。
ふと玄関前に来て気づいたことがあります。
ここに来てからインターホンが鳴らされていないんです。1度も鳴っていない。
ここに来るまでは何度も何度も繰り返し3回鳴らされていたインターホンがピタッとやんでいるんです。
まるでインターホンは僕を呼び寄せるために鳴らされた。
そう感じました。まさに不自然なんですよね。
さて、ようやく玄関前にたどり着いた。
先程あんなに上下に動かされましたドアノブ。
誰もいないようにピタッとやんでいるんです…………。
先程のドアノブ騒ぎが嘘のようにピタッとやんでいるんですねぇ。
ドアの前に立ちますと………。
外から生暖かい空気がヒューッと玄関に入ってくる。
なんだが、背筋がゾワゾワとしてくるんです。
ジィーーーーーーーーっと誰かに見られているような…………。視線を感じるわけです。こうなってしまえば、もう~恐い。
誰も起きていない時間に視線を感じるんです。
廊下の暗闇が恐ろしく感じるほどですよ。
静かすぎるのが怖くなっちゃった。
しかし、開けないわけにはいかない。
「ふぅ…………。ふぅ…………。」
ゆっくり2回深呼吸をします。心を落ち着かせて冷静になります。
もうここまで来たら見る以外の選択肢なんてありませんからね。
僕は冷や汗をかきながら、恐る恐るドアノブに触れました。冷たい鉄の感触。
あとはこのドアを開くだけです。ですが、やっぱり恐い。これが昼間でも恐いのに夜の2時ならもっと恐い。
ギィィィ!!!
ゆっくりゆっくりドアを開いていきます。
もう先程の出来事のせいで背筋が凍りそうになっていましたが、それでも覚悟を持ってドアを開いていきました。
バッ!!!
僕が勢いよくドアを開いてみますと、目の前は夜の闇。
なーーーんにもありません。
人が走り去っていく音だって何もない。静かーな夜です。
もしかして、さっきのドアノブの現象も僕が疲れていたから見た幻覚なのか?
本当は恐怖心から来た幻想なのでは?
これは夢の中?
そう考えますと、なんだかホッと心の中が暖かく感じまして、もう恐怖心なんてない。
「なんだ………」
人騒がせな夢です。
変な怖い夢だったんです。
「よかった~夢か~」なんて思いながら落ち着いてドアを閉めようとしたんですが。
何かに当たってドアが思うように閉まらない。
「変だな~」なんて思いながら、ドアに引っ掛かっている何かを見る。
すると、ちょうどそこには小さなダンボールの箱が置いてありました。
「宅配便?」
なるほど!!
インターホンが鳴っていたのは宅配業者が持ってきたから。
ドアをガチャガチャしたのは、悪戯心でその後宅配業者さんはそそくさと立ち去ったというわけです。
これなら、夢ではないという立証にもなります。
しかし、人騒がせな夢であり宅配業者さんです。
地面にポンッと荷物を置いて帰るだけなんて……。
とりあえず、僕はその届いた荷物を持ってドアを閉めました。
誰かさんからの視線を感じながら…………。
とりあえず、この届いた荷物を開けてみたい。
夢であれ、現実であれ、どうしてもこの夜中に届いた荷物の中身が気になって気になってしょうがないんですよ。
だって、おかしいんです。
こんなもの注文した覚えがない。
不思議な荷物です。
それに両手で持ってみますが、なんだか固くて重いんです。
なんだろうな……なんだろうな………?
速く部屋で開けるのが待ち遠しくて、夜の暗い廊下を1人でウキウキとした気分の中歩いていきます。
その日の夜は月明かりのみが輝き、美しい満月の夜でして……。
こうして夜の廊下を歩いてみると、なんだか肝試しをしているみたいでドキドキしてしまう。
いや~自分の家に住んでいるのに肝試しをしている感覚を味わっちゃったわけですよ。
見慣れている場所も夜だと闇に覆われているわけです。
それなのに箱の中身が気になってワクワクなんです。
それなのに背筋が凍りそうに、生暖かーい空気が肌に触れるんです。
なんか………嫌なんですよ。
まるで、1人じゃないみたい。
そもそも、おかしいと思っていました。
なんで丑三つ時に荷物が届くのか?
考えてはいませんでしたが、冷静になりますとなんだかおかしい。
その予感は的中していました。
そのときです!!!!
僕の持っていたダンボールの蓋がバッ!!!!と開き、中から何かがバッと飛び出したんです。
ウワワワワワワワワワワワーーー!!!
もう言い表せない。恐怖に感情が染まってしまったんです。一瞬にして頭の中が染まったんです。
それなんだったと思います?
実は中身、真っ白な顔をした金髪の女の体だったんです。
この世の者とは思えませんでした。
僕は声にならないような叫び声をあげて、ダンボールを地面に叩きつけます。
「うぅぅぅぅ…………………うぅぅぅぅ……………」
呻き声をあげながら地面をヤモリのように這っている人間。
暗き闇の中で月明かりだけがその姿を明らかにしていました。
恨めしそうに床に金色の髪の毛を広げながら、その青色の瞳がジィーーーーと僕だけを睨み付けているんです。
悲しそうに、憎そうに、怨めしそうに…………。
ただ、ジィーーと一点を睨んでいるんです。
僕はもう腰を抜かして、その場から逃げることすらできません。
ただ、顔面蒼白で口がガタガタと音をたてて恐怖していました。
すると、ダンボールの中の人間は宙にバンッと飛び上がり、叫びながら恨み言を発します。
「………………フハハハ、恐れ過ぎて声も出ませんわ。わっちの企画である『恐怖大作戦』成功。さぁ、ここからが本番です。
伝説の剣のある場所を自白してもらおうか!!!」
飛びかかって僕に自白を要求してきます。
1度死んだやつが幽霊にでもなって現れたのでしょうか。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
あ゛っ!! あ゛っ!! あ゛っ!! あ゛っ!! あ゛ああ!!!」
でも、考える余裕もありませんでした。
恐怖で頭は真っ白でしたから………。
僕はもうなりふり構わず、側にあった物で殴り付けます。
力を込めて、おもいっきりおもいっきり。
ゴツッ……………!!!!
鈍い音がしました。
ゆっくりとその目を開けると、目の前には頭からオイルを出して横たわっている女性の姿が…………。
青色の瞳をバッと開いたまま、地に伏せています。
そして、僕の手には金属バット。
ああああああああああ、なんということをしでかしてしまったのでしょう。
いいや、正当防衛。正当防衛。
僕はそうやって自分に言い聞かせます。
目の前には倒れた女性。
そうだ………侵入者との乱闘の最中に殴ってしまった正当防衛だ。
まずは落ち着いて、彼女を隠さなければ………。
証拠の隠滅。この事を見るものは月明かりだけです。暗い廊下ですから、監視カメラがあったとしても映らない。
それに家の中ですから警察にもバレない。
僕はもう無我夢中で彼女の体を抱えて、どこかの部屋へと隠さなければなりません。
重い体を抱えて、僕は三階へと向かいます。
階段を登りたどり着くと、私は3階の一室に彼女を閉じ込めて、急いで部屋へと走ります。
もう全速力。冷や汗を拭いながら、自分の部屋へと走ります。振り返りません。
これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ。
これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ。
これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ。
これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ。
これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ。
心の中で必死に念じながら、部屋へとたどり着くと、僕は部屋の鍵をキッチリと閉めてしまいました。
これでもう一安心。あとはベッドに入って眠り、夢から覚めるだけでよいのです。
カーテンをすべて閉めて、電気を消して、布団を頭から被ります。
あとは夢から覚めればいいのです。
夢から覚めればいいだけです。
覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚めろ。覚め…………………。
これで話は途切れます。
これは夢だったのか。現実なのか。
語り手にはわかりません。
ただ、1つだけ言えることがあるとすれば……………。
2階建ての洋館であるということだけですから……………………………………………。
結果発表!!!!
・イクナの潜入成功
・葛木へのトラウマ付与