第2話 ゲームで言うところのキャラセッティング
気がつくと俺は生きていた。
俺は死んだはずではなかったのか?
身体を見てもいつも通りで怪我なんて一つも無い。
辺りを見回すが、雲の上の様な場所に一人で居て、目の前にはちゃぶ台が置いてある。
いや、一人では無かった。
ちゃぶ台の向こう側から少女が俺に向かって土下座している。
「この度は誠に申し訳ございませんでしたっ!」
「いや何のことかわからないんだけど?」
女性が顔を上げる。
金髪碧眼の美少女だ。
15、16歳ぐらいだろうか。
「申し訳ございませんが篠宮 諒太さん、あなたは私のミスで死んでしまいましたっ!ごめんなさいっ!」
「あ、やっぱり死んだんだ。」
少女がまたもや土下座しながら謝ってくる。
まぁそりゃ特大サイズの鉄骨に押し潰されれば死ぬわな。
恐る恐る少女が顔を上げながら俺に尋ねる。
「怒らないんですか?私のミスで死んでしまったのに?」
「別に怒ってもどうにもならないし。」
死んでしまってから怒っても意味がない。
気持ちの無駄だ。
「そんなことより今回の事を説明して欲しいんだけど?」
「はい、わかりました。ちなみに私は女神でヘスティアって言います。あなたが生きていた世界と、それに隣接する世界を担当しています。それでは説明させていただきます。」
数分後、女神ヘスティアの俺が死んだ経緯の説明を聞き終わった。
要約すると、世界を担当する神達は人口のバランスを保つために少しずつ調整をしているらしい。
今回の対象は俺の近くにいた人、そう、あの工事現場にいた立ち番のおじさんだった。
しかし、ヘスティアは間違って俺のことだと思い、俺を殺してしまった。
後から確認するとビックリ、死んだのはおっさんではなく高校生だった。
そしてその謝罪をするために俺はここに呼ばれ、今に至る、というわけだ。
「今後俺はどうなるんだ?」
やっぱり一般的にあの世と呼ばれる世界へと旅立つのだろうか?
「はい、そのことなんですが、私のミスであなたは死んでしまったので、あなたには選択肢があります。
選択肢その一、天国へと旅立つ。
選択肢その二、300年ほど違う生き物として生き、その後人間に転生する。
そして選択肢その三、全く違う存在として異世界に行く。
この3つが今あなたにある選択肢です。」
予想はしていたが、俺には選択肢があるようだ。
でも嫌な選択肢もある。
まずその二だ。人外として生きるのは嫌だ。しかも300年も。もしフンコロガシにでも生まれ変われば絶望するほかない。
次にその一。天国に行くのはそれはそれで楽しそうだが、俺としてはその三の方が魅力的だ。
「質問がある。」
「どうぞ。」
「選択肢その三の異世界とはどんな世界だ?」
「はい、諒太さんが住んでいたところのゲームでよくあるような、剣と魔法のファンタジー世界です。」
「三だ。決定。」
「分かりました。」
剣と魔法のファンタジー?そんなもの興味がないわけない。
おまけみたいなものだ。
次の人生を楽しんでみたい。
するとヘスティアが心配そうに言う。
「しかしその世界には危険もあります。現代日本のように文化はそこまで発達していません。医療技術も中世
並みなので期待できません。大丈夫ですか?」
「大丈夫、と言いたいところだが分からないな。だが、生きていくのに必要な知恵はある。選択に違いは無
い。」
俺の言葉を聞き、ヘスティアは少し満足げに頷く。
「諒太さんならそう言うと思いました。それならそれで、私なら転生するあなたの要望をいくらか叶えること
が出来ます。どうされますか?」
少し考える。前世では学校やら交友関係やらで忙しかったからな。
「じゃあ、次はゆっくりと人生を満喫したい。それなりに死なないように、次の俺の身体を整えて欲しい。」
「分かりました。それではまず、どのようにあちらの世界へ行きますか?転生して誰かの子供として誕生して育っていくか、それとも今の身体と同じぐらいの身体からスタートするか。」
「この身体は使えないのか?」
今の身体を指し示しながら俺は言う。
「本当に申し訳ないんですが、その身体はもう使ってはならないんです。そういう決まりなんです。」
ふむ、ならしょうがないか。今の身体グッバイ。
「じゃあ今のと同じぐらいの年齢の身体で。」
「分かりました。
あと、この身体に、中々死なないように【超再生】のスキルをつけておきますね。【超再生】があればどれだけ怪我しても一瞬でもとに戻ります。身体能力も底上げして強くしておきますね。自身の状態が見たければ、「ステータスオープン」と唱えてください。ほかの人や物を調べる時には【鑑定】のスキルを発動させてください。」
「わかった。試してみる。ステータスオープン。」
そう呟くと目の前にゲームの画面で出てくるようなウィンドウが出てきた。
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篠宮 諒太 Lv.ー
年齢:16
種族:人間
性別:男
HP:391
MP:0
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「この身体は一般的にはどうなんだ?」
「一般人でHPが400近くある人は中々いないので凄いです。」
それでも俺は鉄骨に負けてしまった。さしずめ鉄骨の攻撃力は5000といったところだろうか。
「あと、【言語翻訳】と【武術Lv.1】、【格闘術Lv.1】のスキルも付与しておきますね。武術はほぼ全ての器をそれなりに扱うことができます。格闘術は自身の身体を中心とした戦い方ですね。今はどちらもLv.1ですが、後々レベルアップします。レベルアップすれば更に戦いやすくなります。最高でLv.100まで上げれます が、Lv.100ともなれば達人以上ですね。魔法も同じ仕様です。」
その後も俺はヘスティアに、俺の新しい身体に付与されるスキルについての説明を受けた。