表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

星は瞬く

作者: 神内 恵

これはショートショート小説です。

やっぱりもう見えないのかな。


暗い夜の学校。

今日は五年生とその保護者とで10時まで星の観察をすることになっている。

今の時刻は9時。

みんなビデオを見ながら教室ではしゃいでいる。

でも僕はそんな気にはなれなくて、こっそりベランダへ出た。


ビューッ・・・


冷たい風が僕の頬をなでていく。

外は真っ暗で、近くの建物の光がポツポツと光っている。

グラウンドもなんだか淋しそうだ。

お昼時にはみんなの明るい声で溢れているグラウンドも、今は暗く静かに息をひそめている。

空を見上げてみる。でも空には分厚い雲が覆い尽くしていて、星なんて一つも見えない。



「もう、ダメなのかな。」



楽しみにしてたのに・・・


そう言って、教室へ戻ろうとした時だった。



「見えるよ。」


「えっ」



声がした方へ振り向くと、誰かが少し離れた所に立っている。

暗くてよく見えない。

でも多分、声からして僕と同じくらいの歳の男の子。・・・だと思う。



「見えるって、星が?」


「そう。」



落ち着いた静かな声。でも、なんだか少し楽しそうな声。

とても不思議な澄んだ声。



「こんなに曇ってちゃ無理だよ。」


「いや、見えるよ。」


「こんなに大きな分厚い雲が、あとたった一時間でなくなるわけないだろ。」


「なんでそう言い切れるの?まだわからないじゃないか。」


「なんでって、無理なものは無理だろ。」


「でも、見たいんだろ?」



そりゃ見れるもんなら見たいに決まってるじゃないか。



「ならそれでいいじゃないか。見たいなら見たいで、最後まで信じろよ。」



何も言ってないのに。まるで、心を読まれたようだった。



「で、見たいの?見たくないの?信じるの?信じないの?」


「・・・見たい・・・」


「じゃあ、信じろ。」



また、冷たい風が僕の頬をなでていった。


すると彼はもう、その場所にはいなかった。


笑った。と思う。最後にこっちを向いて彼は笑った。


とても楽しそうに。


僕は皆のいる教室に戻った。

心の中に小さな輝く星を抱いて。



「おい、どこ行ってたんだよ。」


「いや、別に。ちょっとベランダ出てただけ。」


「なんか楽しいことでもあったか?」


「え、なんで?」


「だってお前、笑ってる。」



ビデオを見終え、先生の星座の説明を聞き終えた頃、時刻は9時40分。



「はい。では、そろそろみんなでグラウンドに出てみましょうか。荷物も一緒に忘れずに持って行って下さいね。」



先生がそう言った途端、みんな「えー」と不満そうに言った。

もう終わっちゃうのー。帰りたくない。どうせ星見えないだろ。

みんな口々に不満を言っていた。



「俊、行こうぜ。」


「おう。」



みんなと一緒にバタバタと階段を下りていく。

急いで靴をはき、グラウンドへ走った。



「おい、俊!・・・すげーな・・・!」


「・・・うん・・・」



あんなに淋しそうだったグラウンドが、明るい声で満ちた。

僕らの上には数えきれないほどの星が瞬いていて、さっきまで空を覆っていた雲はもうどこかへ消え去っていた。



そして、僕の眼差しの先にはひときわ輝く星があった。


なんだか今にも踊りだしそうな、とても楽しそうな星が。




Fin..



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[一言] 拝読させていただきました。 どうもお話が消化不良気味ですね。謎の彼の正体もですが、この話のテーマすら曖昧です。 謎の彼をもう少し積極的に絡ませても良かったかもです。
[一言] 神内恵さん、こんにちは。日下部と申します。     なかなか良い作品だと思います。  ベランダで話しかけてきた彼は、一緒に来ていた友達の誰かなのか、それとも、彼の気持ちが作りだした幻なのか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ