9.お友達
10月20日。
今日は友達が遊びに来る。
大商人の娘だから、そーっと遊びに来ないと行けないらしい。かわいそうだけど、私がそっちに行くことはできない。
大商人さんも大変だな……
コンコン
もう来たみたい。
「はーい」
そう言って、私はゆっくりとドアを開ける。
「前に会ったのは半年くらい前かしら、ユズ」
「アイリー、会いたかったよ、嬉しい。
とりあえず中にどうぞ」
「言われなくても入るってば」
ぐりんぐりんの金髪を揺らしながらやってきた。この髪、毎日お手伝いさんが結ってくれるって言ってたけど、すごく面倒くさそう。
「そんな広くないけど、どうぞ」
アイリーを自分の部屋へ招き入れる。
「庶民の部屋ってこんな感じなのかしら、狭いわね」
「ごめんなさいねー」
これでも私のお家は広くてお金がある方なのにな……
ちょっとカチンときたけど我慢。
「さて、何をしましょうか」
「本は?」
「いつも読んでいるじゃないの、もう飽きたわ」
「本って飽きるモノなの?」
「あなたくらいじゃないの、勉強が好きなのは」
「えっ……」
本に飽きる人もいるんだ、本音が一瞬漏れてしまった。
「お茶、用意するね」
「あら、お手伝いさんは居ないのかしら」
「だから、アイリーのお家はお金持ちなの」
「ごめんなさいね」
アイリーと一緒に居ると楽しいけど、こういうお金持ち自慢が時々入るのが癪に障る。
あ、"癪に障る"って使い方合っているのかな、今度調べてみよう。
私はせっせとお茶を用意する。
お湯を沸かして、ポットとカップを温めてから淹れるのがコツらしい。お母さんが言ってた。
火を使うのは流石に怖いけれど、加熱器で沸かすのなら私でもできる。実験中のを、同僚から譲ってもらったとか言ってたような……
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
なんか私と飲み方が違う。綺麗に見える。
これがお金持ちパワーか……
「そういえば、二ヶ月くらい前にテストを受けて、二層まで行けるようになった」
「あら、早いわね」
「ありがとう」
「私も受けてみようかしら」
「アイリーならきっと行けるよ」
「まあ、勉強あるのみになりますけどね」
「じゃあ勉強する?」
「そういえば私たち、勉強くらいしかないんでしたわね」
「それに何持ってきた?」
「本と筆記用具ですけど」
「勉強しかやることないじゃん、それ」
さあ、ここからは楽しいお勉強の時間だ。
図書館迷宮で知り合ったのだから、勉強くらいしか接点がないのは当然なのですがね。
「この植物は……?」
「それはリピ。怪我に効く」
「どうやって覚えればいいのよ」
「私は実際に外に出て覚えた」
「私はできませんね」
「とりあえず、そういうのはひたすらテストして覚えるのがおすすめ」
こんな感じにアドバイスをしたりされたりしながら、時間は進んでいく。
「ユズ、今は何時なの」
「ちょっと待って」
私の家には機械仕掛けの便利な時計はないから、窓辺にある大きな日時計で確認するしかない。
「大体四時くらい」
「そろそろ帰らないと」
「そうなの?」
「五時までに帰ってきて、と言われてますから」
「仕方ないね」
出していたものをがたがたと仕舞いながら帰る準備をする。
「一人で帰れる?」
「も、もちろんよ。ユズが付いてきたら一人で家まで戻れそうにないじゃないの」
「んー……」
「なら、また図書館迷宮で会いましょう
その時は二層で」
「わかった、勉強頑張ってね」
アイリーの言うことはあながち間違ってはいないので、素直に認めて玄関までにしておく。
「じゃあね」
「絶対また来ますわ」
アイリーの姿が見えなくなるまで送る。
とっても楽しかったな……
勉強が楽しいって言いたい……
受験生忙しいです。




