【第156話(最終話)】おやすみ なおたん
12月24日。研究所。
ロビーに飾ってある小さなクリスマス・ツリーのライトがゆっくりと点滅を繰り返していた。
ちなみにツリーの飾り付けはなおたんも手伝ったせいか、クリスマスと関係なさそうなものまで飾られてあった。
(ピーマンとか…。)
なおたん「♪じんぐーべー、じんぐーべー、すすすーすすー♪」
かえぽ助手「『す』しか言ってないし。。」
ぽん博士「予約してあったチキンのセットはN君が取りに行ってるんだよな?」
研究所では毎年12月24日は通常業務をこなしているだけだったが、今年は取り組んでいた研究テーマに区切りが付いたため、少し落ち着いたということで、ささやかながらではあるがクリスマス・パーティーを研究所メンバーで行なおうということになった。
なおたん「♪とりとり肉々~!にくじゅうはち~!遥か昔にかえぽが過ぎ去りし年齢~♪」
かえぽ助手「誰もが過ぎ去るんですっ!、、それにそんなに昔じゃな、、昔か。。」
ポンキー「ワン♪」
なおたん「あ!ポンキーと行くお散歩の旅の時間が今日もやってきたよー♪」
かえぽ助手「なおたん!今日は道草食ってないで、早く帰ってきなさいね!!」
なおたん「大丈夫だよー!道に生えている草はちゃんと水で洗ってから食べるよー!、、あ!天ぷらセット持っていかなきゃー♪」
かえぽ助手「そーいうことじゃなくてっ!!」
なおたん「いってきマンハッターン♪」
ポンキー「ワンワン♪」

いつもの散歩コース。いつも寄る公園に着いた、なおたんとポンキー。
なおたん「ポンキー!いつもの場所が空いてるよー♪ 座ろー!座ろー!スワローズ♪」
ポンキー「ワン♪」
なおたんは公園の中央にある噴水を眺めるのが好きだった。ポンキーの散歩をするときは噴水の一番近くにあるベンチで休憩をするのが定番になっていた。
なおたん「おっきなイスって便利だねー!でもこれベンリじゃなくてベンチって言うんだよー♪」
ポンキー「ワン♪」
なおたん「今日も噴水ぴゅーってしててイイねー!キラキラし、、ふわぁ、、」
ポンキー「ワゥー?」
なおたん「、、あ、れれー?、、なんだか眠たくなってきたよー、、でもお外で寝たらダメだーって言われてるんだよー、、かえぽが前歯を出して怒るよー、、あれー?目だったかなー?、、違うー、、ツノだー、、ツノ出して怒るんだー、、前歯は最初から、、で、、、」
ポンキー「ワン!、、ワンワン!ワンワン!!」
なおたんはベンチに座ったまま眠ってしまった。ポンキーの鳴き声にも全く反応をしなかった。

1時間後。研究所。
かえぽ助手「あ!雪が降ってきましたね。今夜はホワイト・クリスマスですね!」
ぽん博士「ところで、なおたんはまだ帰ってこないかね?」
かえぽ助手「そういえば、ちょっと遅いですよねえ、、早く帰ってきなさいって言ったのに!、、またどこかで時間潰してるんですよー!、、きっと!!」

ポンキー「ワンワン!」
かえぽ助手「あ!帰ってきた!、、おかえり!ポンキー!!」
ポンキー「ワン!ワンワンワン!!」
かえぽ助手「あれ?、、ポンキー?、、なおたんは一緒じゃないの!?」
ポンキー「ワン!!」
ぽん博士「ポンキーだけが帰ってきたのか!?」
かえぽ助手「なおたん、、どうしたんだろ、、!?」
ぽん博士「電話がつながらんな。。GPSはタワレ公園を指している。そこからずっと動かないな。。」
かえぽ助手「私、見にいってきます!、、ポンキー!行こっ!!」
ポンキー「ワン!」

かえぽ助手はポンキーと一緒に公園まで走った。
かえぽ助手「なおたん!?、、なおたーーん!!」
公園中央の噴水近くのベンチになおたんは座ったまま、いつもと同じ柔らかい表情で静かに眠っていた。頭にはうっすらと雪が積もっていた。
ポンキー「ワンワン!」
かえぽ助手「居たー!!、、なーにやってんのよー!もー!、、あーあー頭に雪積もらせて、、心配させないでよ!ポンキーしか帰ってこないからどうしたのかと思ったら!、、どうしてこんな天気なのにここで寝ちゃうかなー、、研究所の外で寝たりするのはイロイロと危険だからダメだって言っていたのに!!。。」
かえぽ助手は「どうせ私の言うことなんて聞きやしないんでしょうけど!」と思いながらも大声でなおたんに話しかけた。その声でなおたんが目を覚ますだろうと思ったからだ。
なおたん「…。」
かえぽ助手「なおたん?、、あれ?、、起きない?、、なおたんっ!起きてっ!!」
なおたん「…。」
かえぽ助手「え?、、起きない!?、、なんで?、、ちょっと、なおたん!、、なおたんってばっ!!。。嫌だ、、どうしちゃったの!?、、なおたん!、、なおたんっ!!」
なおたんの肩を激しく揺らしても全く起きる様子がなかった。
慌てて研究所のぽん博士に電話をかけるかえぽ助手!

かえぽ助手「は、博士!!」
(ぽん博士)「かえぽ君!なおたんは見つかったかね!?」
かえぽ助手「見つかりました!、、公園のベンチで眠っていました。。ですけどちょっと様子がおかしいんですよ!、、通常のスリープモードと違ってこちらの声に全く反応しません!身体を揺らしてみてもダメでした!、、唇の色はピンク色のまま※ なのでバッテリーの充電量は問題無いみたいですが、、!!」
※なおたんの唇の色はバッテリーの充電量に応じて変化する。(【第1話】スーパーロボット誕生!を参照)
(ぽん博士)「そうか!、、そもそも、なおたんは自己防衛機能が働くようになっているから、私かかえぽ君が近くに居ない場合は、自分の意思では研究所以外でスリープモードにならないようにしてあるんだがなあ、、」
かえぽ助手「こんなパターンは初めてです!!」
(ぽん博士)「待てよ、、自己防衛機能?、、もしや!!、、かえぽ君!なおたんの瞼をめくって瞳を見てもらえるか!、、どんな状態だ!?」
かえぽ助手「瞳?、、はい!わかりました!、、ちょっとゴメンね!なおたん、、あ!真っ赤です!そして点滅してますっ!!」
(ぽん博士)「やはりそうか!、、『緊急スリープモード』だっ!!」
かえぽ助手「『緊急スリープモード』!?」
(ぽん博士)「なおたんの命に関わる重大な異常が出ている!通常であれば回路のどこかに異常が出ていても体内のスペアの回路に切り替わってカバー出来る筈なんだが、それが働かないということは、スペアの回路にも、しかもひとつふたつではなく数カ所が同時に損傷している可能性がある!」
かえぽ助手「、、!?、、命に、、関わる、、!?」
(ぽん博士)「この状態のまま会話や歩行をしてしまうとメインの回路まで損傷してしまう恐れがあるんだ。それを防ぐためになおたんのメインコンピュータが強制的に全機能をシャットダウンしたんだ!。。かえぽ君!そこで待っていて、なおたんを見ていてくれるか!、、今、応援の者を連れて迎えに行くっ!!」
かえぽ助手「早く!、、早く来て下さい!!、、早く!!、、お願いします!、、お願いします!!。。」
これほど取り乱したかえぽ助手の声をぽん博士は今まで聴いたことが無かった。

なおたんは、いつものベッドではなく、電子機器に囲まれたロボットメンテナンス専用のベッドに寝かせられた。修復作業は何時間にも及んだ。
ぽん博士「なおたんに無理をかけさせてしまっていたんだ。。私の予想以上になおたんに負荷がかかっていた。。」
かえぽ助手「なおたんは強い衝撃や急激な気温差にも対応する高い耐久性がある筈ですよね。実際今までかなりのことがあっても全く異常は見られなかったですし、どうしてこんなことに、、!?」
ぽん博士「そういった外側の異常は全く無いんだよ。私が自分でも呆れるくらい丈夫に作ってあるからね。。今回の異常はなおたんの内部で起きていることなんだ。先週、なおたんがメグを助けようとして、肉眼では見えないくらいの驚異的な速度で動いただろ。あのとき、正直私はかなり驚いたんだ。まさかあそこまでの速度でなおたんが動けるとは思っていなかった。。落下してくる照明とメグの位置関係を瞬時に計算してメグを抱きかかえたままステージ後方に移動した。メグに怪我ひとつ負わすことなく。。そのときのなおたんの計算力、判断力、機動力は私が予想していた値をはるかに上回っていたんだと思う。。私たちが直接見たのはあのときだけだったが、おそらく私たちの知らないところでも、なおたんは自分のスペック以上の動きをしたときがあったんじゃないのだろうか?。。」
かえぽ助手「え!?、、なおたんは自分の身体を守るシステムになっていませんでしたか?、、自分のスペックをオーバーするような動きにはリミッターがかかることになっていましたよね!!」
ぽん博士「その様に設計した筈なんだ。。しかし、私の予想しなかったことが、なおたんに起きたんだ。。いや、なおたんが起こしたんだ!自分の目の前に居る人間が危機になると『自分は壊れてもイイからその人を助ける!』という思いが働いて強制的にリミッターが解除されるというシステムがなおたんに生まれた。その結果少しづつ体内のシステムが破壊されていったのかもしれん。。まさかそうやってリミッター解除の機能が働いてしまうとは、、私の計算が甘かった、、私のミスだ。。」
かえぽ助手「だけど、なおたんの判断で多くの人が助かることになりました。博士は何もミスなんてしていません。人に優しい素晴らしいプログラムだったと思います!!」
ぽん博士「ありがとう。かえぽ君。。なおたんは絶対に死なせはしない。私の持っている能力の全てを出して、なおたんを助ける!!」

なおたんは夢を見ていた。
いつもと同じように、ぽん博士とかえぽ助手と会話をしていた。
「ぽんちゃでは無い!ぽん博士だっ!!」
「誰が前歯族よっ!!」
なおたんは笑っていた。
大舞台でライブをするウニッコをみんなで応援していた。
ナオ、メグ、カエデが全力で歌い舞っていた。
ファンの人たちは幸せいっぱいの笑顔だった。
なおたんも幸せいっぱいだった。
研究所のロビーでテレビを観ていた。大好きなNegirangerとカエポリンをニコニコしながら観ていた。
ぽん博士とかえぽ助手は無理矢理なおたんに付き合わされて一緒に観ていた。その割にはけっこう楽しみながらテレビに向かってツッコミを入れていた。
なおたんはおやつのシュークリームを食べるのに一生懸命だった。勢いあまってかえぽ助手のシュークリームも食べてしまった。口の周りがクリームだらけになった。ポンキーがそれをペロペロ舐めた。
みんなが笑った。
なおたんも笑った。
幸せいっぱいの顔で笑った。

ぽん博士「とりあえず、なおたんの命は救うことが出来たよ。」
かえぽ助手「あああ~!、、良かった、、良かった、、!!」
かえぽ助手にようやく安堵の表情が戻った。
しかし…。
ぽん博士「ただ、、このままでは完全に直ったとは言えないんだ。」
かえぽ助手「え!?」
ぽん博士「なおたんの自己再生プログラムが新システムと完全にシンクロしなければ、なおたんは目覚めることが出来ない。。」
かえぽ助手「それは、、どれくらいの時間が必要なんですか!?」
ぽん博士「すまない、、それは私にもわからないんだ。。なおたんは人間と同じなんだよ。なおたんが目覚めるかどうかはなおたんの意思にかかっている。感情を制御するシステムを外部から強制的に操作してしまうと、なおたんの感情や記憶を破壊することになってしまうんだ。。なおたんが強く『生きたい』『目覚めたい』と望まないと目覚めることが出来ないんだ。。もしかすると明日にでもなにごともなかった様に目覚めることがあるかもしれない、、だが、それはそういった可能性もあるというだけで本当に目覚めるのは予想が出来ない。長ければ数ヶ月後、、場合によっては数年後になってしまうのかもしれないんだ。。」
かえぽ助手「数年、、後!?、、そんな!?」

ベッドで静かに眠るなおたん。かえぽ助手はその脇にある椅子に座ってなおたんを見つめていた。
なおたん「うーん、、」
かえぽ助手「なおたんっ!?」
なおたん「むにゃ、、、ぽんちゃー、、かえぽー、、雪が降ってきたよー、、キラキラ、、キレイだねー、、いっぱい降るかなー、、あした起きたら雪だるま作るよー、、楽しみだねー、、むにゃむにゃ。。」
かえぽ助手「なんだ、、寝言か。。ふふふ、、こんなときでも夢見たり寝言を言ったりするんだね。。ヘンなロボットだね、なおたんは。。うん、そうだね、、雪だるま作れるくらい積もるとイイね、、私も楽しみにしてるよ。。なおたんが目を覚ますの楽しみにしているよ。。それまで、、、」
おやすみ、、なおたん。
-END-
『ロボットなおたん』のストーリーは今回で終了となります。
短い間でしたが今までありがとうございました。
もしもNegiccoのライブ会場でNao☆ちゃんそっくりの女の子が居たら、それは目を覚ました なおたん かもしれません。。
(Nau)




