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ヴァンパイアを退治するために召喚されたが、一緒に住むことにした  作者: たこす
第一章 ヴァンパイアを退治するために召喚されました
7/24

scene6

「そうだったっすか、畑を荒らしていたのはヴァンパイアではなく、山賊だったっすか」


 明晩、オレとシーラは村人たちに真相を伝える為、村人を集めて説明会を行っていた。

 この場にシーラを連れてきたのは、オレの言葉が嘘ではないと伝えるためだ。

 はじめは怖がっていた村人たちも、シーラの穏やかな雰囲気と気品漂う言葉づかいに冷静になっていった。


「それはまた、とんでもない勘違いをしてしまったっぺな」

「まったくじゃ。勘違いでわらわの身体をバラバラにするなどと」

「いや、でもまあ、こうして生きてるわけだし、結果オーライてことで」


 全然オーライじゃねえよ。

 一歩間違えれば犯罪だよ。いや、間違えなくとも犯罪か。

 冤罪だったわけだしな。


「山賊もこらしめたし、もう畑を荒らされることもあるまい」

「ありがとうごぜえましただ。それもこれも救世主様のおかげでごぜえます」

「いや、オレはほとんど何もしてないけど」


 やったのは、シーラの力だしね。


「これからはシーラどのに干渉せず、ひっそりとつつましく過ごそうと思うっす」

「それはよかった」

「ま、ヴァンパイアは昔から人間とはあまり接点はなかったからの」


 シーラの言葉に、オレはふと思った。


「……ところで、シーラっていつからあの館にいるの? 生まれた時から? にしては、家族は誰もいないみたいだし」

「わらわか? そうさな、かれこれ400年になるかの」

「ふごおっ!?」


 よ、400年……!?

 シーラって何歳なの!?


「家族などおらん。気づいた時から一人じゃ」


 か、家族もなしに400年も過ごしてたのか。

 ある意味、すごい……。


「それでは救世主様。お約束通り、元の世界へとお送りいたします」


 村人の言葉に、シーラは笑顔で言った。


「よかったの、無事に帰れて」

「シーラのおかげだよ」

「そういえば、今さらじゃがおぬしの名前を聞いてなかったの」


 本当に今さらだな。

 ま、最後くらい名乗ってもいいか。


「オレは宮本勇太郎。宮本武蔵の宮本に勇者の勇、桃太郎の太郎だ」

「……言ってる意味がわからん」


 でしょうね。


「じゃ、ユータロー。元気でな。久々に楽しかったぞ」


 ちょっと寂しそうな表情で見送るシーラ。

 ふとオレは思った。

 400年も一人で生きてきたこいつは、これからも一人で生きていくのか。村人たちもこれ以上干渉しないと言っているし。

 オレも大学を出た直後に両親が他界して一人で生きてきたけど、孤独というのは想像を絶する寂しさがある。それをシーラは400年も続けてきたんだ。

 なんだかんだ言って、このまま帰るのもはばかれる気がしてきた。


「……もうちょっと、ここにいようかな」

「は?」


 きょとん、とするシーラの顔。黙っていれば、本当にかわいいな。


「救世主様、何を申されるっすか。お送りの準備はできてるっすよ」


 わいのわいのと魔方陣を作っていた村人たちもオレに顔を向ける。

 けっこう大掛かりな作業だったみたいだ。みんな汗まみれになっていた。


「せっかく用意してくれて申し訳ありませんけど、それ延期できませんか? オレ、もう少しこの世界にいたい」

「いや、それは構わねっすけど……、どこにお泊りで?」


 オレはきょとんと顔を向けているシーラに言った。


「あのさ、シーラ。隅っこでもかまわないから、しばらくあの館に住まわせてくれないかな?」

「はあ? 何を申しておる。人間がヴァンパイアの館に住むなど、正気か?」

「だめ?」

「いや、ダメではないが……いいのか? 帰りたかったのであろう?」

「うん。でもオレ、この世界についてもっと知りたいし。せっかくだから、シーラと一緒にいたい」


 オレの言葉に、シーラはカアッと顔を真っ赤に染めた。


「か、勝手にせい!」


 そう言いながらスタスタと館へと帰り始める。


「あ、ちょっと。じゃ、村のみなさん、しばらくよろしくお願いします」


 ペコリと頭を下げるオレに、彼らは口々に褒め称えた。


「さすがは救世主様だ。ヴァンパイアとともに過ごそうなどとは」

「ワシらにゃ、絶対マネできんわ」

「だども救世主様が一緒にいりゃ、安心だべ」


 いや、シーラはそんなヤバい子じゃないよ。

 と思いつつ、スタスタと館に向かって歩くシーラの後ろをオレは慌てて追って行く。

 日本の暦でいえば2023年の春、オレの異世界ライフが始まろうとしていた。



 第二章につづく

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

あとがきを書こうか書くまいか迷いましたが、注意書きの意味合いも込めまして作品の合間ですが書かせていただきました。こういうのが嫌いな方は、本当にすみません。


本作は、非常に軽いノリで書かさせていただいておりますが、一部修正する以外はほぼ草稿状態です。これはひとえに自分の筆力のなさが原因であり、推敲するたびに駄文がさらなる駄文へと変貌を遂げるという摩訶不思議な現象が起きているからです。

そのため、矛盾点が多々あるかもしれませんが、お気づきの方はご指摘いただければとても嬉しいです。


この物語は全5章を予定しております(あくまで予定ですが)。ヴァンパイア・シーラとの甘い生活描写よりも、勇太郎にふりかかる様々な出来事を描こうと思っております。期待されていた方はごめんなさい。


それでも気にしない、という方は(いらっしゃるのか不安ですが)第二章もよろしくお願いします。

作品の合間のあとがき、失礼しました。

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