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ヴァンパイアを退治するために召喚されたが、一緒に住むことにした  作者: たこす
第五章 モンスターハンターがやってきました
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scene1

「ふわああぁぁ」


 朝のまぶしい光が、窓から差し込んでいる。

 眠気眼のオレにはちょっと刺激が強い。

 空を見上げると、雲一つない青空が広がっていた。

 うん、今日もいい天気だ。

 いい天気は大好きだ。


 昨晩はシーラと久々にスピードをやった。

 といっても、彼女のスピードに(シャレじゃないよ)ついていけるわけもなく、全敗。

 相手は人間なんだから、手加減してくれてもいいのに……。


 とはいえ、オレもムキになって何度も挑んだから、ちょっと手首が筋肉痛だ。


 トランプで筋肉痛って……。ウケる。

 でも今後はもうちょっとアクション性の低いゲームにしないとなー。

 シーラの勝ち誇った顔だけが印象に残っているからムカつく。


「ほほほ、ユータローの動きはハエのようじゃ」

 とか言われたし。

 それって、遅いの?速いの?どっちなの?


 とりあえず今日はすることもないし、久々に館の掃除でもするか。


 と、思っていると、窓の外からこの館に向かって歩いてくる人影が見えた。

 赤いコートを羽織った、テンガロンハットをかぶった男だ。

 この辺じゃ見かけない顔だ。

 コートの隙間から、きらりと光るものが見えている。

 あれ、剣じゃね?


 男は、チラリとこちらを伺うように顔を向けた。

 頬にざっくりと傷跡が見える。

 どう見ても、カタギじゃないよね。

 あれもモンスターなのかな?


「次から次へと、来訪者が多い館だな」


 つくづくそう思う。

 とはいえ、あの男がいったいどんなヤツなのかは知らないが、最近わかったことがある。

 それは、どのモンスターも根は優しいってことだ。

 いくら強面の男であっても、おそらくはいい奴なのだろう。

 そう信じよう。


「……あれ」


 窓から見えていた男は姿を消し、代わりにドアをノックする音が聞こえてきた。

 いつの間に玄関まで移動してたんだろう。


 ドンドンという音が大きくなり、オレは慌てて玄関に向かった。


「はい、どちらさま……」


 ドアを開けた瞬間、オレの身体は床に叩きつけられていた。


「ひっ!?」


 なになに?

 何が起きたの?


 気が付けば、首元に剣が突き付けられている。

 そして、そんなオレを見下すかのようにテンガロンハットの男が冷たい目でオレを見おろしていた。


「ふん、人間か」


 低い、ドスのきいた声だ。ていうか、この人、人間なの?


「おおかた、下僕にするためにさらわれたのだろう。命拾いしたな」


 下僕?命拾い?

 何を言っているのかさっぱりわからない。


「い、いえ、オレは……」

「安心しろ。お前をさらったヴァンパイアはオレが退治してやる」


 そう言って、コートの中からおびただしい数の武器を取り出した。

 なにこの人。

 本気でヤバい系?


「長らくヴァンパイアの退治方法などわからなかったが、風のうわさで心臓にクイを打ちこめばいいと聞いた。ならば試してみようと思ってな」

「あ……あ……あ……」


 これ、本格的にヤバいじゃん。

 シーラに知らせないと。


「お前は急いでここから逃げろ。丘のふもとまで行けば村があるからそこで匿ってもらうんだな」


 オレは立ち上がると同時に、館の奥へと駆け出して行った。

 と、思ったら、その足をすくいあげられ、ものの見事に転倒してしまった。


「なぜ反対方向に逃げる?」

「あ、いや、えーと……」


 男の握る剣が怪しく光る。

 ほんと、只者じゃないよ、この人。


「お前、妙だな。まさか、もうヴァンパイアの下僕になってしまったのか?」


 言いつつ、ものすごい殺気をはらんできた。

 ヤベエ、まじヤベエ……。


「い、いえ、人間です。どっからどう見ても人間です」


 どっからどう見ても怪しいけどね。

 男は再度、剣を突き付けてきた。


「本当か」

「ほ、本当です。アイアム、ジャパニーズピーポー」

「……?」

「あ、日本人て意味です」

「やはりヴァンパイアの下僕と成り果てたか!!」


 なんで!?


 男はものすごい速さで剣を振り回してきた。


「うひゃあ!!」


 殺される……!!


 そう思った瞬間、オレの前に颯爽と白い影が飛び込んできた。

 ガチッという音とともに、男の動きが止まっている。


「ほう」


 感嘆ともいえる男の声。

 見れば、白い影が男の剣を白刃取りしていた。


「………!?」


 オレはその白い影に思わず驚愕の声を上げた。


「シ、シーラ!?」


 オレをかばうように現れたのは、寝室で眠っているはずのシーラであった。

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