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ヴァンパイアを退治するために召喚されたが、一緒に住むことにした  作者: たこす
第三章 魔女の女の子がやってきました
13/24

scene1

 それは、唐突にやってきた。


「こんにちはあぁ!!」


 大きな声が館中に響く。

 オレは声の大きさに驚いて跳ね起きた。


「なんだなんだ!?」


 時計を見ると、昼の12時。

 ちょっとやそっとではシーラはまだ起きない時間ではある。

 が、声の主はそんなこと知らないとでもいうかのように大きな声で叫んでいた。


「こんにちはあぁぁ!!」


 オレは慌ててベッドから起き上がると声のする方、すなわち玄関へと向かった。


「ど、どちらさま?」


 扉を開け放って尋ねると、そこには黒いローブを羽織った黒髪の少女がいた。

 12、13歳くらいのショートカットの女の子だった。

 大きい目と太い眉毛が印象的だ。


 オレの顔を見ると、少女は一気に怪訝な顔を見せた。


「……誰よ、あなた」


 いや、それはこっちのセリフだ。


「オレは勇太郎。この館に厄介になってる者だ」

「ユータロー?変な名前」


 ほっとけ。

 ていうか、誰なんだこの子。


「シーラはいないの?」

「シーラは昼間は寝てるんだ。ヴァンパイアだから。ちょっとやそっとじゃ起きないよ」


 シーラの名前は知ってて、なんで彼女の特性を知らないのか、不思議でしょうがない。


「ていうか、誰なんだ、あんた」

「あんたとは失礼ね。レディにむかって」


 レディとは聞いてあきれる。

 どう見ても、シーラよりも幼い女の子じゃないか。


「私はマーキュリよ。あの偉大なるウェンディおばさまの孫よ」


 ……いや、誰?


「ウェンディおばさまて?」

「あなた、この地にきたばかりの新人?ウェンディおばさまを知らないなんて。ウェンディおばさまはこの一帯を仕切る魔女のライラおばさまの妹よ」

「い、妹……?」


 ライラおばさまって、この間の魔女だよな?


 ……。


 え、てことは、この子も魔女なの!?


「マーキュリ……さん?もしかして、君、魔女?」

「そうよ。偉大なるウェンディおばさまの血を引く、優秀な魔女よ」


 そんな魔女がどうしてこの館に来てるんだ?


「シーラと遊びに来たんだけど。寝てるのか」

「遊びに?」


 なんだ、単純に遊びに来ただけか。

 見た目同様、お子様のようだ。

 いや、とはいえわからんぞ。

 なにせ、シーラが400歳なんだからな。

 ていっても、喋り方が子供のまんまだ。見た目同様の年齢かも。


「あの、マーキュリさんて、何歳?」

「レディに年齢を聞くなんて、最低ね」


 いや、どう見てもレディに見えないから聞いたんだけど……。

 なんて言ったら怒るかな。


「あなたこそ、何歳よ」

「オレ?オレは26だけど」

「26!?ガキじゃん、いや、ガキどころか赤ん坊じゃん!!乳幼児じゃん!!」


 乳幼児は言い過ぎだろ……。

 どこをどうとったら乳幼児に見えるんだ。これでも人間社会じゃ立派な成人だ。

 でも、これでわかった。

 彼女はオレよりはるかに年上だ。

 やっぱりモンスターの年齢基準って、よくわからん。 


「あのな、よく知らないようだから言っておくが、オレは人間だ。わけあって……、あ、いや、わけはないんだが、まあ、もろもろの事情でこの館に住んでいる」

「に、人間……!?」


 マーキュリが明らかに侮蔑の表情でオレを見た。


「けがらわしい人間が、なんでシーラの館にいるのよ!?」

「いや、だからさっきもろもろの事情でって……」

「も、もしかしてシーラの命を狙って……。いやあああぁぁ、ヘンタイ!!」

「へ、ヘンタイ!?」


 言うに事欠いてヘンタイだと?


「おいおいおい、そりゃ聞き捨てならねえな」

「いや!近づかないで。ヘンタイマン」


 オレに不名誉なあだ名がついた……。


「ちょっと待てよ。オレがシーラの命を狙ってるって、なんでそう思うんだ?狙ってないかもしれないじゃないか」

「狙ってるかもしれないじゃない!……そうか、わかった。あなた、シーラが寝ている隙に殺そうとたくらんでいるのね!そうはいかないわ」


 あ、ダメだ。

 この子、猪突猛進しちゃうタイプだ……。


「不埒な輩は、このウェンディおばさまの孫マーキュリが成敗してあげる!」


 そう言って、手の平で何やら火球のようなものを作り出して行った。

 まてまてまて、ちょっとヤバいぞ。


「おい、話を聞け。オレは別にシーラの命を狙ったりなんか……」

「問答無用!!いっけえええ、ファイナルドラゴニックメガトン・ファイヤー!!」


 なんだ、その中二っぽい名前は!?


「ひええええ」


 頭をおさえるオレ。

 しかし、彼女の手から火球が出ることはなかった。


「……?」


 見ると、マーキュリの手からはぶすぶすと煙があがっただけで、火球は完全に消滅していた。


「………」


 なんか、すっげえ悔しそうな顔してる。

 ブルブル震えるほど悔しそうな顔してる。


「きいいぃぃ!!なんでよ、なんでなのよ!!」

「お、おい、どうした?」

「なんで魔法が出ないのよ!!みんな使えるのにぃぃ!!」


 みんな使えるんだ、あの中二魔法……。


「ま、まあ、なんだ。使えなくてよかったよ。オレ、殺されなかったわけだし」

「バカにして!!人間にバカにされるくらいなら、死んだ方がマシだわ!!」


 そんなに!?


「まあまあ、落ち着けよ。とにかく、シーラに会いに来たんだろ?入れよ。オレの家じゃないけど」

「言われなくても入るわよ」


 そういってズカズカと上り込むマーキュリ。

 ほんと、なんなのこの子。


 なんだかめんどくさいことになりそうだ。

 オレは直感的にそう感じた。

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