2.砂の果実。 混戦。 6
渦を巻く大段平と切り裂く薙刀が激突した。最後の激突だった。どちらもまだまだ体力を残し、彼らの剣筋は鋭く、輝いていた。まだ何日も戦い続ける事が出来るだろう。凡百の兵士が相手であれば。だが、今は、この夜は違った。相対しているのは、選ばれた天才だった。僅かな乱れが疲弊が、生死の境界を引き寄せてしまう。確かにそうだった。僅かに劣り、僅かに疲れ、後少しの運を掴むことが出来なかった者が敗北するのだ。敗北したのだ。
こぉおおおおおおぉぉん、
と、響く筈の音は鳴らなかった。きぃ、っと小さく軋み、ごすん、と落ちて唸った。ガンウェルの大段平はストクフの薙刀に負けて切断され、砂に落ちた。その切っ先はガンウェルの右腕を捉えて、これも切断した。
「なるほど。」
ガンウェルは、間の抜けた素直な声を出した。さっぱりと、せいせいとした声だ。月は空に輝き、風は凪いでいた。夜は暗く、混戦の喧騒は若干遠退いた……気がした。
……ぅ、ウウウウグアァァァぁぁぁぁぁあ!!!」
ガンウェルの絶叫が爆発する。一瞬、一瞬、遅れて現実がやってくる。切り落とされた腕の付け根から、どす黒い血が吹き出し、撒き散らされ、激痛がガンウェルを飲み込んで……笑う。
首が飛んだ。
北方大陸ノースラド、サザ国、熱砂騎士団最強の剣士。切断された首からは、盛大に、血液が湧き出し世界を染める。金や権力や利害ではなく、単純な誇りをかけた戦いの帰結だ。全ての決闘が内包する美しさがそこにあった。生も死もなかった。在るのは単純な戦士の名誉。戦いきり、やり遂げたものの栄誉……悪い。少しきれいな言い方だった。いや、随分、盛りすぎた。ごめんなさい。正直に行こう。本当は、実際は、泡を吹く血液が悪臭と共に巻き散らかされ、世界を汚染した。岩のような身体は痙攣し、砂煙を上げる。外野の傍観者は恐怖と嫌悪に飲み込まれる。死んでも死んでも死んでも死んでも、痙攣は続き、悪臭と血液と恐怖を撒き散らし、世界を汚染した。切断された首は、それでも笑う。狂気?解らない。そう、彼以外には。
……ガンウェルは、絶命した。




