2.砂の果実。 コットス。 2
「コットスさん。拾いものが2つ届いた。」
部屋の入り口にある死体には何の興味も示さず、長身の男は、コットスに告げた。コットスは飾り気のない話し方をするこの男の事を気に入っていた。
「続けろ。ホラン。」
ホランと呼ばれたその男は、ブブーサのフードを落としてから、簡潔に報告した。
「行き倒れが2名運び込まれた。疫病にかかっていると思われる男と、大怪我をしたフィンドアの魔人。どちらも治療可能と見ている。特に魔人には、色々と使い方が有るかと。」
「ふむ。」
相変わらず良い報告だ。コットスは眼鏡を直してから、立ち上がった。
「両方治療しろ。魔人はこれから見に行く。」
「手配済みです。」
ふっ、とコットスは笑った。相変わらずホランは使い易い。本人もそれを充分理解している。いいね。実に。
コットスがスーツの乱れを直す間にもホランの部下が現れ、先程の殺し屋を片付けた。直にドアも直してしまうだろう。
「大外の牢獄です。」
言いながら長身のホランはコットスを案内する。
「ホラン。」
「は。」
「此処へ来て何年たったのだ。」
「5年です。」
「何時まで私の下にいるつもりだ?お前が望めば、どの町の支部でも任せる用意はあるぞ。」
「いえ、今のままで。」
「そうか。」
野心の無い男は使い易い。淡々とすべての業務をこなしてくれる。だが、操る事も不可能だ。欲が無い者は操れない。家族も友達も居ないのでは、脅しようもない。
「何が欲しい?」
「何も。」
「そうか。」
いつものやりとりだ。ホランが本部から新米としてクレイフ支部に来た際にも、大した情報はなかった。サザの王都の貧民街で育った孤児、との情報しかなかった。その後、ありとあらゆる調査を行ったが、情報は得られなかった。ホランの目的は何なのだろうか?
……さて、さて。どうするべきかな。
「何か?」
先を行くホランが怪訝そうに振り返った。
「いや。いつも助かるよ。」
「恐縮です。」
その後は二人とも言葉を発せず、牢獄までの長い廊下をかつ、かつ、かつ、と進んでいった。
いつの間にか、ホランの事を息子のように感じ始めている自身を冷静に分析しながら、そろそろホランを本部に送り返すべきなのだろうと、コットスは判断した。天涯孤独であることが裏家業で安心して生きていく一つの重要な要素だと彼は考えていた。
平和な1日もいつの間にか、終わりの時が近づいて来たようだ。日差しが優しく傾き、その色は赤く変わり始めていた。




