1.コナゴナになった世界で。
……人類は謳歌する。
数々の苦難危機を乗り越え生き延びた。
全てを克服した。
自然を、動物を、気候を、病を、何もかもを制圧し、従えて、蹂躙した。伝説も神話も。世界そのものさえ創り出す事はあっても恐れる事はなかった。人口は優に200億を超えて、更に増え続けた。世界を創造する人類に限界は無かった。神さえも恐れる事は無かった。気にいらなければ、抹殺し、必要が有れば、創った。
ただ一つ畏れたのは、自身。人類は、人類のみを畏れた。
それでも人類は繁栄を極め、世界を創り、壊し、繰り返し、揺り起こし、紡ぎ、断ち切った。ずっと、延々と。
ふたつ、取り返しのつかない誤ちを冒した。
ひとつは、魂の力を解明したこと。それは、一人一人が世界を創り、滅す力を手にした事を意味した。
ひとつは、不老不死。それは、愛を失う事を意味した。
世界樹は枯れた。
ヒトは滅びるだろう。
神が生まれ、世界は育つだろう。
そして、千年が経過した。コナゴナになったこの世界の上で、この長い長い物語は始まる。世界が生まれ変わる物語が。
……この時、世界の人口は一億を下回っていた。