第九部
登場人物が増えます。
しばらく会話している内に話す内容が無くなった真樹斗が切り出した。
「あの・・・・テレビでも・・・・見ます??」
「こっちの世界のテレビ番組も興味あるわ」
「じゃあ」
真樹斗がリモコンのスイッチを押した。
ニュース番組、幼児教育番組、アニメ、次々とチャンネルを変えていく。
「あ、ちょっとまった。コレってドラマ?」
「あ、はい。そうですよ。確かすごいドロドロした内容の・・・・・」
「見たい。」
「あー、はいはい。」
テレビの音量を上げてやる真樹斗。
食い入るように画面を見つめる真樹子。
ドラマは不倫関係の男女が抱き合うシーンになった。
「○○さん!奥さんと早く別れて!」
「××!こういうことはちゃんと段階を踏まないといけない!」
「こんなにあなたのことを愛しているのに!」
「俺もだよ。」
そして場面は妻を持つ主人公と愛人が、都内のラブホテルにいくシーンになった。
そしてシャワーシーンになる。
やがて、ベッドシーンの軽い濡れ場に・・・・・
「お、おおぅ・・・・・・」
真樹子が頬を赤らめながらも画面を凝視する。
テレビから目を逸らしつつも、真樹子の方をちらちら見つめてしまう真樹斗。
真樹斗はジーンズのポケットの中にはいつもまじないの意味を込めてコンドームを持ち歩いていたのだが、
使わないまま数年が過ぎた。
(今日がチャンスかもしれない。)
気分が高揚してくる。
真樹子は先日死別した元夫・孝之のことを思い出していた。
(孝之とは私の身体の性質のせいで何回愛し合っても子供ができなかったんだっけ。うらやましいなぁ。孝之・・・・・)
いつの間にか真樹子の目から涙が零れ落ち始めた。
気づいた真樹斗がティッシュの箱を差し出すと、真樹子はティッシュで涙を拭い、鼻をかんだ。
(何か、そんな気分じゃないよな、絶対・・・・)
真樹斗はジーンズのポケットの中のコンドームを気づかれないようにごみ箱に捨てた。
「私・・・ね・・・・結婚してたの・・・・・・」
「へ、へぇ・・・・」
「でも私の身体の性質のせいで子供ができなくて・・・・」
「そうなんですね、何かヘビーそうだな・・・・」
「それは、孝之が真樹子の身体に適合しなかったからだミュ。真樹子の身体の方が特殊過ぎるんだミュ。」
「ああ、そうなんだな・・・・」
そういって真樹斗が声のする方を見ると、1mくらいの灰色のジャイアントウサギが後ろ足で立ち、勝手に冷蔵庫から拝借したキャベツを左前足で器用に持ち、右前足でちぎってモグモグと口にしていた。
左前足には金色に輝く腕輪をしており、ベストのような服を着用している。
耳にも金の耳飾をつけている。
だがやはりどう見てもウサギだ。
ウサギが立ち上がって人語を喋りながら、勝手に人の家の冷蔵庫から拝借したキャベツをかじっていた。
真樹斗がびっくりして固まっていると、真樹子が振り向いて事態に気づく。
「??どうかしたのかミュ?」
「う、う、ウサギがしゃべったーーーーー!!」
「失敬な。ウサギじゃないミュ。そりゃ好物は人参だけど。この世界のウサギじゃなくてムーンラビット星人だミュ。」
「ど、どういうこと?」
「折角ゴールデンキューブに閉じこめられてて・・・・いや、何でもないミュ。やっと誰かの願いを叶えるためにゴールデンキューブが作動するタイミングを見て外に出たのに。」
「願い?」
「そりゃあ、真樹斗と真樹子が同じ願いを」
「わーーーーーーーー!!」
すぐさま真樹子がウサギの口を塞ぎ、耳元でこそこそと話しかけている。
「いい?私の願いの方が言わずにあいつの願いだけいいなさい。いいわね?そしたら人参買って来てあげる」
「わかったミュ。買収OKだミュ。」
ウサギと真樹子が力強く握手?をした。
「えー、ごほん。つまり、真樹斗が違う世界の性別の違う自分とでもつきあいたいという願いを強く思ったからゴールデンキューブが作動して真樹斗と真樹子の両方のゴールデンキューブの座標が一致したんだミュ。そして世界が一時的に繋がったんだミュ。」
「信じらんねぇ!」
「つまりこの世界では真樹斗でも違う世界では性別が異なって真樹子だったんだミュ。けど、ゴールデンキューブの力で繋がって今こっちの世界に二人ともいるんだミュ。」
「じゃあ真樹子さんは違う世界の違う性別の俺??」
真樹子の方はそれを聞いて「やっぱりか!」という顔をして顔を赤らめた。
「で、でも世界が違って性別が異なるんだったら、もはや別人なんじゃ・・・・・・」
「そこが説明の難しいところなんだミュ。いくつかの異なる世界があってもそれらの神様は一人なんだミュ。でもその神様が結構ズボラだから全ての並行世界で同じ一人の人間を指すユニークなはずのIDを違う世界の違う人間同士ででも振っちゃったんだミュ」
ストーリーの流れをしっかり作りたいと思います