第八部
異世界からやってきた小鳥遊真樹子。
彼女は一体・・・
ビンタを喰らった真樹斗は、目の前の小柄なギャル風の女性の手を握ったまま後ろに倒れて尻餅をついてしまう。
そしてその時に小柄なギャル風の女性の身体は引っ張られて、元々いた夜の世界から飛び出して真樹斗のいた世界に入り込んでしまった。
すると、真樹斗の目の前に広がっていた夜の世界の空間がゆがみ、「ミュミュミュ~ン」という音とともに消え去った。
「何だったんだ?」
「だから!手!」
真樹斗はまだ目の前の小柄なギャル風の女性の手を握っていたことを指摘され、あわてて手を離した。
後ろを振り返った女性はあっけに取られていた。
「え!?ちょっと!ここどこ!?」
「え、日本でしょ?」
「そうじゃなくて!」
慌てて女性がスマートフォンを出してどこかに電話をかけるも、繋がらない。
「どうしよう・・・・」
困っている女性を見かねた真樹斗が声をかけた。
「あの・・・なんか・・・すいません・・・・・」
「どうしてくれんのよ!」
女性が足をダンと力強く地面を踏み、キッと真樹斗を睨みつける。
「あ、あの・・・とりあえず・・・・誰?ですか?」
「普通は自分から名乗るもんでしょーが!」
「あ、俺・・・・高橋真樹斗です。明星一端大学の二年生。登山部です。」
「真樹子・・・・小鳥遊真樹子。」
真樹斗が立ち上がり、落ちていたゴールデンキューブを拾う。
それを見た真樹子の目の色が変わった。
「あっ、もしかして!それのせい!?」
真樹子が真樹斗の手からゴールデンキューブをすばやく奪い取った。
真樹子がゴールデンキューブをまじまじと見つめる。
そしておかしな点に気づいた。
キューブの表面の文字のようなものが自分が持っていたものと少し変わっていた。
「あ、ねぇ、高橋!この近くにもう一個コレない?」
「え?ゴールデンキューブのこと知ってるんですか?」
「質問に答えなさい!」
「いや、これ一つですけど。」
「うーん・・・・・」
「俺もゴールデンキューブのことはよくわかってなくて。」
「どうしよう。変な世界に来ちゃった。」
すると、急にパトカーがサイレンを鳴らしながら近づいてくる音が聞こえた。
気がつくと、周囲から人が集まり始めた。
先ほどの謎の現象を遠くから目撃したのか、みんな首をかしげている。
「何か、ここにいると不味そうね。」
真樹子が立ち去ろうとする。
真樹斗が声をかけた。
「あ、あの・・・・とりあえず・・・いくとこないんなら・・・・うち・・・・来ます?」
真樹子が真樹斗をキッとにらみつけた。
~・~・~・~・~・~・~
20分後、真樹斗は有頂天になっていた。
異世界のようなところから来た見ず知らずの女性とはいえ、初めて自分のマンションの部屋に女性を通したのだ。
意外にルックスもいい。
小柄だが・・・。
自分のマンションの部屋の中に小鳥遊真樹子を通し、あわててごみをゴミ袋に入れ、部屋のものをとりあえずベッドの下に隠して、テレビの前に座らせる。
途中で買ったお茶のペットボトルを真樹子の前に置いた。
真樹子がお茶のペットボトルを口に運び、そして切り出した。
「で、とりあえず・・・・ここってどこなのよ?」
「俺のマンションです。」
「じゃなくて!」
「えーと・・・何て言うのかな。太陽系第三惑星・・・・・地球・・・・日本・・・・」
「え?ここって地球なの?何か、私の住んでいる地球とちょっとずつ何かが違うような・・・・」
「そういや、俺がゴールデンキューブを拾い上げたら、いつの間にか目の前の景色がゆがんで小鳥遊さんが居て・・・・」
「あ、私もそうだった!うーん・・てことは、やっぱりゴールデンキューブが何かしら作動したのかしらねぇ。」
「うーん・・・・あと、あんときは・・・・たしか・・・・美樹たんかどっかの世界にいる違う性別の俺とでも付き合いたいなぁ・・・・と思ってたくらいしか・・・」
それを聞いて真樹子がペットボトルを口に運ぶのを止めて冷や汗を流す。
「どうかしました?」
「え!?あ、うん・・・こっちの話・・・・・・」
「??」
(そういや、あんときの私も確かそんなこと考えていたような・・・・まさか・・・・ね・・・・・・こんなパッとしない奴が・・・・んなわけないか・・・・)
続きます。