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サンデイ!  作者: 大平 甲


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1/1

心霊現象、今日で終了?

 太陽の子

 

 古くからの言い伝えで

 人々を幾多の困難から救ったとされており

 現在までその功績をたたえ崇められている

 ある日の午後。スーツ姿の人が「タイヨーデンキ」の店先にやってきた。見慣れない人だし、何より怪しい。


「すみませーん! どなたかいらっしゃいますか?」


 ぼくは店の奥の部屋にいる。引き戸をほんの少し開けて向こうの様子をうかがう。

 修理依頼? 家電を買いにきた?

 普通はここで出て接客をするべきである。が、何だか怪しい感じがする。直感でそう思うのだ。

 だからここはまず居留守を使う。


 30分ほど事務作業をしてもう一度引き戸を開けて外を見る。もうあのスーツ姿の人はいなかった。

 よかったよかった。もう日も暮れるし今日は店を閉めよう。表のシャッターを閉めるため表に出る。


 あれ? レジカウンターの上に白い何かが置いてあった。

 よく見るとそれは封筒。後ろにきちんと〆と書いてあるのに、それ以外は何も書かれていない。

 セールスの類なら容赦なく捨てるけど、これも……捨てるべきか?

 まあまあ、一応開けてみるか……。

 封筒の中には二つ折りの手紙が1枚。



 助けてください。お願いいします。できるだけ早く。



 何これ? もう一度じっくりと手紙を見てみる。

 ……うーん、捨てよう。

 ごみ箱に入れようとしたとき、店の入店音が鳴った。


「いた!」


 さっきのスーツ姿の人がそこに立っていた。ぼくを見つけて足早に寄ってくる。

 おい、帰ったんじゃなかったのか......。


「手紙、読んでくださいましたね」


 そりゃ読んだけど……。


「お願いします。助けてください」

「お断りいたします」

「封筒、開けましたよね」

「お断りいたします……」


 すぐ捨てておけばよかったな……。


「どうしても助けていただきたいのですよ」

「そんな力はありませんよ。お帰りください」

「だって、あなたは太陽の子……ではないのですか?」


 え? 太陽の子?

 スーツ姿の人は、ポケットから定期入れを取り出してぼくに見せてきた。


「あなた、そっくりですよ」


 定期入れの片面に入っていたのは、古ぼけた写真のようなもの。そこに写っているのは、ぼくとそっくり……だ。


「他の方に言われたことありませんか?」

「ない。かわいいマスコットとか着ぐるみとか、そういうのは言われるよ」

「確かにかわいらしいですね」

「外側だけは、ね」


 余計なお世話だ。


「そもそも太陽の子、っていうのは何者?」

「どんな困難も救ってくださった方なのです。大未曾有の災害や未知の感染病など、功績は数え切れないほどございます。感謝を忘れぬためにこうやって崇拝しているのです」


 やっぱりあの手の勧誘なのか?

 その後も断り続けたが、結局スーツ姿の人と共にある場所へと行くことになってしまった。



 時刻は21時前。

 車に乗せられ着いた場所は閑静な公園の駐車場。周囲に店がある分思ったより明るい。

 そして、公園の目の前にはS湖という大きな湖がある。

 移動中の車内ではこんな会話があった。



「隣町にS湖という大きな湖があるんです」

「知ってるよ」

「これが地図です。航空地図のものです」

「S湖沿いに公園があって、そこを含めて一帯を再開発することになっているんです」

「ここからここまででしょう? こんなに広くて何を作るんだ?」

「簡単に言うと、地域密着でリゾートでボタニカルな長時間滞在型の中規模なショッピングモールですね」

「よくばりだなぁ……」



 そして、公園から道沿いを歩いてすぐある場所へと着く。

 スーツ姿の人が指を差す先には、大きな2階建てほどの建物があった。屋上にはボウリングのピンが建っている。

 ただ、いたるところ落書きだらけでとにかく荒らされている。

 建物へと向かう入り口は厳重なバリケードで封鎖。監視カメラが何台か付けられており、警察官立寄所の看板も立っている。この場所は相当警戒されているようだ。


「ここは2階がボウリング場。1階がゲームセンターとレストランがあったそうです」


 こんなところにあったのは全然信じられないな……。


「ここは閉鎖されてから十数年間放置されて廃墟化しました。その間に特定の界隈でも有名な心霊スポットにもなっていたんです」

「廃墟になるのは分かるけど、心霊スポットにはなるものなのか?」

「白骨化した遺体が出てきた、と聞いたことはあります。」


 浮浪者の溜まり場だったのかな。

 普通にここの中に入っていくのは嫌なんだが……。


「ここに入るの?」

「はい」

「今から?」

「入りましょう」

「入ったところで何をするんだ?」

「こちらを見てください」


 スーツ姿の人が、肩がけバッグから取り出したのは薄い紙に包まれたもの。


「これは強力な御札です。霊媒師の方に特別に作っていただきました」


 何と書いてあるかが分からないけど、何故か文字が全て金色だ。


「この御札を2階に行ってど真ん中に立って真っすぐ天井に貼りなさい、と」


 その霊媒師は本物か?

 そう言おうとしたけど言わなかった。


「もうサッと入ってサッと貼って帰ろう」


 こんなところに長居なんてしたくないからな。



 建物の中は何とも言えない静けさに包まれている。置いてあるゲームの筐体は軒並み壊されていた。

 入口の正面にある分岐階段から2階へ上がっていく。かなり荒らされているが、目の前にはボウリングのレーンがあった。


「早く御札貼って出ようぜ。ここに脚立あるから」


 床がゴミだらけで歩きづらい。

 建物の中心に大体のところで立ち、そこに脚立を置いた。


「頼むぞ」


 スーツ姿の人が脚立に手を伸ばした瞬間、脚立が一人でに動き出す。近づくと脚立が逃げる。まるで脚立に意思があるかのようだ。

 

「ポルターガイストじゃないか……」


 ふざけるな。このままでは帰れない。脚立を返してもらおう。

 追いかけて無理やり脚立をつかんだ瞬間、バチッと大きな音と共に煙が噴き出した。

 その衝撃で脚立は真横に倒れる。

 ……今のは? 恐る恐る脚立を持ち上げたが、動き出すことはなかった。


「ちょっと」

「何だよ」

「腕を振り回しながら、この2階のフロアをまんべんなく走り回ってきてください」

「何で!」

「いいから早く!」


 スーツ姿の人に急かされ、仕方がないので思い切り腕を振り回す。

 手に何か当たるたびに、瞬間的に爆発するようなことが何度もあった。

 走り回ること30分。2階は煙が充満。1階にも煙が下りてくるほどだ。

 なんとか御札を天井に貼って、建物の外へと脱出した。

 しかし、心霊現象は不思議と起こらなかった。

 あの爆散していったのが幽霊だったのかは分からない。

 かくして、事も終わり無事に帰路に着けたのだった。


 その後、建物は解体されて再開発が進んでいると風の噂で聞いた。

 再来年の夏頃には開業するらしい。


 よく晴れた夏の日。これといってやることもなく、レジカウンターで店番をしているとふいに入店音が鳴る。


「いらっしゃいませ」

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