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スキゾイドとビーガン

1. 前置き:私はビーガンではない


まず断っておくと、私は菜食主義者ではない。

だが一個人として、ビーガニズム(Veganism)という思想が時に強硬的な側面を帯びる点には問題意識を持っている。


ビーガンという生き方自体は、


* 動物の権利保護

* 環境負荷の低減

* 健康志向

といった倫理的・合理的な動機に基づくものだ。

しかしその実践が「信仰」へと転じたとき、理念は攻撃性を帯びる。


2. ビーガニズムの過激化 ― 現実の報告から


(1)信念の押し付け


SNSでは、他人の肉食を「殺人」と断じる投稿が拡散される。

2023年には欧米のレストランで、ビーガン活動家が客に抗議する動画が話題となった。

もっとも、調査(YouGov, 2021)によれば約80%のビーガンは穏健派であり、過激派はごく少数である。

それでも、強い言葉はメディアで目立ち、ビーガン全体の印象を歪めてしまう。


信念は声を荒げた瞬間、宗教になる。

― スキゾイド的観察


(2)スーパーでの抗議


肉売り場に立ち、「肉は暴力」と叫ぶ。

2019年のオーストラリア、2022年の英国でも実際に起こった抗議行動だ(BBC, 2022)。

一般客からは「迷惑行為」とみなされ、警察沙汰にもなった。


活動家の数は全ビーガンの0.5%程度(Vegan Society調べ)。

だが、派手な少数が印象を支配するという典型例である。


(3)屠殺場への侵入・妨害


2018年カナダ、2021年英国では、ビーガン活動家が屠殺場や養鶏場に侵入し、生産を停止させた。

倫理的訴えとしての行動である一方、違法行為として逮捕・訴訟の対象となった。

英国では年間約200件の「動物解放関連違法行為」が報告されている(警察統計, 2023)。


理念の純度が高すぎると、社会的整合性を破壊する。

それは、理性が倫理を凌駕した状態だ。


(4)偽情報と対立構造


SNS上では、「肉食は必ずガンを引き起こす」「ビーガンは偽善だ」といった誇張が飛び交う。

実際の科学的知見(WHO, 2015)はもっと中庸で、極端な二項対立は無意味だ。

ビーガニズムが理念である限り、それを「絶対化」する誘惑から逃れるのは難しいのだろう。


3. スキゾイド的考察 ― 「じゃあ、食べなければいい」


ここからが本題だ。


スキゾイド的な発想では、

「動物を殺すのが悪なら、植物を収穫するのも悪なのでは?」

「倫理的純粋性を追求するなら、そもそも“食べる”こと自体をやめればいいのでは?」

という極端な論理に至る。


つまり――ブレサリアニズム(不食)である。


4. ブレサリアニズムという究極のビーガニズム


ビーガニズムが「動物の搾取を避け、環境負荷を減らす」ことを目的とするなら、

ブレサリアニズムはその目的を究極的に達成する思想実験である。


(1)環境負荷ゼロ


食料生産が不要になれば、


* 農業由来の温室効果ガス(世界の14.5%, FAO 2013)

* 水資源使用(世界の淡水の70%, WWF 2020)

* 土地開発や森林破壊

がすべて不要になる。

理論上、地球環境負荷ゼロの生活だ。


(2)倫理的一貫性


ビーガンが抱える「植物栽培でも虫が死ぬ」という副次的倫理問題も消滅。

ブレサリアニズムは、倫理の矛盾を完全に解消する。


(3)経済的合理性


食料の生産・加工・流通コストが消え、経済的負担も極小化する。

つまり、完全なる非依存の生活形態――

スキゾイド的理想でもある。


5. スキゾイドの結論 ― 「理念の極北に立つ冷笑」


ビーガニズムは美しい。

だが、理念が倫理的純度を求めすぎると、現実との接続を失う。

スキゾイド的観察者は、その断絶を見て静かに笑う。


動物も植物も殺したくないなら、

いっそ自分も食べなければいい。


そこまで行けば、ようやく整合性が取れる。


もちろん、それは実践ではなく思想実験である。

スキゾイドは、倫理を論理で貫いた先にある空虚な整合性を、冷静に見つめる。


そして思う。

「結局、人間は何かを摂取しなければ存在できない。

その矛盾を抱えて、それでも整合性を求めてしまう――

それが人間の、そしてスキゾイドの悲喜劇なのだ」と。

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