スキゾイドの終活術
――死後も静寂を保つための最終設計――
スキゾイドは、生きているうちから死後の整合性を考えている。
孤独死のリスクがある以上、終活は“他人に迷惑をかけない”ためではなく、
自分の死をも自分の管轄に置くための作業だ。
遺言書の作成、財産分与の指定、埋葬形態の決定。
墓か、納骨堂か、散骨か。
誰にも相談しないからこそ、決めるのに時間がかかる。
しかし、決めたら早い。書類を作り、費用を計算し、保険を整理する。
それは冷たい作業ではなく、静けさを維持するための設計作業だ。
■ 事故物件にならないための死後誓約書
スキゾイドの死後、最も困るのは「発見が遅れること」ではない。
そのあとに他人が勝手に解釈を始めることである。
曰く「孤独死の怨霊」「成仏できない霊」「未練が残っている」など、
感情の物語化が始まる。
そこで、私は一つの文書を思いついた。
遺言書とは別に、死後誓約書を残すのである。
「私は死後、家にとどまることなく、
墓所、あるいは行くべきところがあれば速やかに移転し、
安穏と新生活に順応することを誓う。
生者に干渉する意思はなく、
この世で“私の悪霊なるもの”が現れたなら、
まず疑い、聴取し、その理由に整合性があるかどうかを吟味せよ。」
これが“スキゾイド式・死後の合理宣言”である。
たとえ幽霊になっても、整合性が取れない行動はしたくない。
怨念を抱くほどの社会的情熱もない。
せいぜい、死後に自分の部屋が事故物件扱いになるのだけは避けたい。
■ 「死の後始末」を生前設計するということ
スキゾイドの終活とは、悲壮なものではない。
むしろ、最後までシステム設計を楽しむ知的遊戯だ。
保険、遺産、デジタル遺品、公共料金、家の解約スクリプト――
死を「自動処理化」していく。
生前にすべてのスイッチを配置し、
死後は物理的に電源が落ちるだけ。
それが理想の最期である。
幽霊にならず、未練を残さず、ただシステムのように停止する。
■ 結びに
スキゾイドの終活とは、死後の静寂をも自分で設計する行為だ。
誰にも任せない。
誰にも汚されない。
死の瞬間まで整合性を貫き、
死後も「論理的存在」として世界を去る。
死後誓約書とはつまり、
「私の物語を勝手に作るな」という最期の防御壁である。
そしてそれを残す者こそ、
この社会で最も“死を合理的に扱える”存在、
――スキゾイドなのだ。
実用付録:スキゾイド式・死後誓約書テンプレート
――死後も整合性を保つための、静寂の契約書――
【タイトル】
スキゾイド式・死後誓約書(Declaration of Posthumous Integrity)
【本文】
私は、私の死後における一切の現象・出来事について、
以下の通り、理性的かつ合理的な姿勢をもって誓約する。
1. 死後の所在
私は死亡後、速やかにこの世の居所を離れ、
墓所、納骨堂、または自然界における適切な循環の場へ移転することを希望する。
その際、居住地・住居・建物内に留まる意思は一切ない。
2. 他者への干渉拒否
私は死後においても生者への影響を望まない。
いかなる形であれ、夢、幻覚、怪異、物音などの形で出現する場合、
それは私の意思によるものではなく、偶発的なノイズまたは物理現象と解釈されたい。
3. 悪霊誤認の防止
私の名を騙る幽霊、怪現象、心霊的伝聞があった場合、
まずその整合性と再現性を吟味せよ。
論理的根拠がない場合、それは無効である。
4. 物語化の禁止
私の死をセンチメンタルに語ること、
あるいは感情的なストーリーに変換することを禁ずる。
私の死は単なる生命機能の停止であり、
物語の素材ではない。
5. 財産・遺品の処理
遺品・遺体・住居・デジタル遺物など、すべての処理は合理的判断に委ねる。
“もったいない”精神よりも、衛生・安全・整合性を優先せよ。
6. 発見・報告に関して
もし私の死亡が発見された場合、
それを事件化・心霊化・陰謀化する必要はない。
通報・処理・清掃の一連のプロセスを淡々と遂行されたし。
7. 終局の希望
私の死後、世界が何事もなく平穏に回り続けることを望む。
私はこの宇宙の一部として静かに機能停止する。
【署名・日付】
本誓約は自己の自由意思により作成されたものである。
日付:__年__月__日
署名:__________
(印章任意)
■文例(完成形)
スキゾイド式・死後誓約書
私、〇〇〇〇は、死後も整合性を維持することを誓う。
私は死後、速やかに墓所または自然の循環へ移行し、
現世に留まる意思はない。
生者への干渉、物音、幻視、電気的ノイズ等が観測された場合、
それは物理現象または偶然の一致であり、
私の意図ではない。
また、私の死をドラマチックに語ることを禁ずる。
私はドラマではなく、ただの生物的事象として死ぬ。
遺品や財産については、衛生・安全・合理性を最優先に処理してほしい。
最後に――もし“私の霊”と名乗るものが現れたなら、
まず疑い、聴取し、その言動に整合性があるか吟味せよ。
論理が破綻している場合、それは偽物である。
以上をもって、私の死後の静寂を確定する。
日付:令和〇年〇月〇日
署名:〇〇〇〇
(印章)




