怪奇スキゾイドマンション
ある中規模地方都市の一角に、デザイン性は素朴だが、どこか異様な雰囲気を漂わせるマンションがある。外観からして部屋数は少なめで、せいぜい八戸くらいの規模だろう。だが入居できるのは「スキゾイドの診断を受けた者」だけという特殊な条件つき。地元では「怪奇スキゾイドマンション」と呼ばれている。
特徴的なのは一階のエントランスだ。そこには各部屋専用の大型宅配ボックスが並んでいる。冷蔵機能つきで、大手スーパーがネット予約された食料を補充していく仕組みだ。住民は仕事帰りに黙々とボックスから食料を引き出して部屋に持ち帰る。顔を合わせる必要は一切ない。決済ももちろんオンライン。対人接触はゼロで済む。
さらに各部屋にはSiriのような音声端末が設置されており、毎日決まった時間に声紋認証による「生存確認」が行われる。水道や電気の使用状況も記録され、異常があれば管理人立ち会いのもとで部屋に立ち入りが行われる。ベッド下の床は腐敗や体液による汚染を防ぐ特殊加工が施されており、孤独死への備えも万全だ。
こうして書くと、なんだかホラーめいた印象もある。だが実際には「顔を合わせない生活導線」と「孤独死対策」を見事に両立させた合理的な仕組みである。スキゾイド向けと銘打たれてはいるが、応用すれば高齢者専用マンションにも役立ちそうだ。むしろ逆に、高齢者マンションのノウハウを取り入れることで、この「怪奇マンション」の完成度がさらに高まるかもしれない。
そう考えると、この建物はもはや「怪奇」ではなく「合理的ユートピア」に近いのかもしれない。ただし、住民が互いに顔を知らないまま一生を終えるあたりが、やはりスキゾイドらしい怪奇さを残すのだが。
ちなみに、住民は管理人と顔を合わせることもない。AIの管理人しか存在しないからであった。




