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スキゾイドパーソナリティ障害入門 ― 概要と特徴

スキゾイドパーソナリティ障害(Schizoid Personality Disorder: SzPD)は、DSM-5においてクラスターAに分類される人格障害のひとつです。その主な特徴は、社会的関係への持続的な無関心と感情表現の制限にあります。


発症には、脳の構造的・機能的な違い、さらには遺伝的要因が関わると考えられています。孤立を好み、冷淡に見えるため周囲から「変わり者」と誤解されがちですが、本人にとっては主観的な苦痛が少ない場合も多く、そのため治療を求める動機付けが弱いという特徴があります。


ここでは、主な症状、脳神経の特性、遺伝的要因、人口比率と男女比率について概説します。


◆主な症状


SzPDは早期成人期に顕著となり、社会的孤立と感情の平板さを中心に展開します。DSM-5によれば、以下のうち4項目以上を満たす場合に診断されます。


* 親しい友人や家族をほとんど持たず、社会的関係に強い無関心を示す

* 常に孤独な活動を選びやすい

* 性的経験に関心を持たない、あるいは乏しい

* 賞賛や批判に対してほぼ無関心

* 喜びや怒りなど感情表現が乏しい

* 空想や内的世界への没頭が、現実の関係を置き換える

* 他者への信頼が希薄


これらは統合失調症の「負性症状」(感情の平板化、社会的引きこもり)と似ていますが、SzPDには妄想や幻覚はなく、現実認識は保たれているという重要な違いがあります。日常生活では、仕事や趣味に没頭しつつ人間関係を避けるため、社会的機能に困難を生じることがあります。


◆脳の神経基盤


SzPDを含むクラスターAの障害には、神経画像研究により以下の特徴が報告されています。


* 前頭葉、扁桃体、線条体におけるセロトニン・ドーパミン経路の低下 → 感情処理・社会的認知の障害

* 錐体路(ピラミッド経路)の構造変化、とくに上冠状放射冠の白質体積増加 → 認知の乱れや負性症状との関連

* 側頭葉灰白質や白質の異常 → 社会的認知・感情入力の処理に影響


これらは他の人格障害(境界性や反社会性など)における脳の「柔軟性欠如」「報酬系異常」と部分的に共通しており、SzPDは統合失調症スペクトラムの軽症型に位置づけられることもあります。ただし、SzPD固有の大規模研究は未だ少ない段階です。


◆遺伝的要因


SzPDは遺伝的な脆弱性が強く示唆されています。統合失調症やスキゾティパルパーソナリティ障害と家族的に関連し、双生児研究では「社会的孤立」「低い温暖さ」などの特性が29〜59%の遺伝率を示しました。直接的な遺伝率は50%前後と推定されています。


Sula Wolffの研究は、これを「憲法的な遺伝的基盤」と呼び、統合失調症スペクトラムのリスク要因として位置づけています。ただし、幼少期の冷遇やトラウマなど環境要因との相互作用も大きく、遺伝だけで決まるものではありません。


◆人口比率と男女差


SzPDの有病率は一般人口で0.0〜4.9%とされますが、多くの調査では1%未満に収まります。臨床現場ではさらに稀で、約2.2%程度です。米国の大規模調査(NESARC)では3.1%と推定されますが、本人が治療を避けやすいため、過小評価されている可能性があります。


男女差については、臨床的には男性にやや多いとされ、男性の方が負性症状や「無秩序」傾向を示す割合が高いという報告もあります。ただし、明確な結論は出ていません。


◆【まとめ】スキゾイドを一言で言うと何か


スキゾイド・パーソナリティを一言で表すなら、

「俺に関わるな」である。


これは他人が嫌いだからでも、攻撃的だからでもない。

人と関わること自体が負荷ストレスになりやすく、距離を保つことで自分を守っている、という意味での「関わるな」である。


以下は、スキゾイド的傾向をもつ人に比較的よく見られる、世間から見えやすい外観や、本人の内側の感覚を日常レベルで整理したものである。

※あくまで傾向の話であり、すべての人に当てはまるわけではない。


* 人間関係全般がストレスになりやすい。そのため、学校や職場などで社会生活を送っていても、休憩時間は一人で過ごしていることが多い。


* 一般に想像されるような強い「さみしさ」をあまり感じない。一人で完結できる趣味や関心事を持ち、それだけで十分に充足している場合が多い。


* 周囲が「一人でいてさみしそうだ」と善意で声をかけても、本人は内心ではお節介、あるいは余計な干渉だと感じていることが少なくない。


* 若年期には、学校の方針や周囲の期待に合わせて集団行動をこなそうとすることが多いが、団体行動を重ねるほど「自分は集団行動が性に合わない」という自覚が強まっていくことがある。


* 異性や恋愛にまったく関心がないわけではないが、親密な関係が長続きしにくい傾向がある。結婚や同居生活が大きな負担になる場合もある。


* 他人からどう評価されているかについては、心底どうでもいいと感じることが多い。褒められてもあまり嬉しくなく、批判されても深くは傷つかない。評価そのものに価値を置いていない。


* 冗談や場を和ませるつもりでの「いじり」やからかいは、強い不快感を伴うことが多い。本人にとっては距離を詰められる行為であり、「悪気はない」という説明はあまり意味を持たない。


* ドラマなどで描かれる「友達やめるぞ?」「仲間外れにするぞ?」といった脅しは、本人にとって意味不明に感じられることが多い。人間関係を失うことが、そもそも大きな損失として認識されていないためである。


* 人間関係や所属を引き留め材料にされること自体が不快であり、それなら最初から関わらない方が楽だと判断しやすい。


* 会社や組織においても同様で、「辞めろ」「いらない」と言われた場合、引き止めようとしたり感情的に揉めたりするより、速やかに受け入れて切り替える傾向がある。周囲からは冷淡に見えることがあるが、本人にとっては合理的で自然な判断である。


* 事件やトラブルを起こすと、人に囲まれることになるため、それを強く嫌い、とにかく静かで干渉の少ない生活を望む。


* 一人暮らしは特別な選択というより、最も自然で楽な状態デフォルトとして選ばれることが多い。


* スキゾイド的な気質には、生まれつきの体質や遺伝的要因が関与している可能性があり、家系内で似た傾向が見られることもある。過去には見合い結婚や社会的圧力によって結婚が成立し、その結果として次世代に遺伝子が引き継がれてきたケースも考えられる。


* 一方、現代ではそのような社会的後押しが弱まり、未婚や離婚に至ることも少なくない。


* 人口に占める割合については諸説あり、正確な数字は不明である。本人が強い苦痛を感じにくく、他者に迷惑をかけることも少ないため、医療機関につながりにくいことが一因と考えられている。


…スキゾイドは、実にサイレントマイノリティとして社会の中に潜んでいるのである。

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