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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神殺し

作者: あか りくこ

 産まれてこの方、自由、平等、友愛、なんて文言とは無関係な学生生活、社会人時代を送ってきた。

 そこにいるだけでイライラする、顔を見るとむしゃくしゃする、「こいつ」だから相手は良心の呵責も感じる必要はない。それだけの理由で殴る蹴る踏みつける持ち物を捨てる壊す隠す、給食に異物を入れてよこす、挨拶しても無視する、急な時間割変更の連絡も自分だけが回ってこない。

 教員もこの生徒がクラスにいるだけで場の集団の輪を乱す。学校に来ないでほしい。そう顔に書いてあった。

それでも自分は生きている以上、基本的人権と言うやつが行使されるべきた。

ある日そう訴えると「ならば、皆から好かれるような人になりなさい」と言われた。愛想よく笑い、人の話には頷き、暴力を振るわれても暴力で返さない。苦労は買ってでもしろ。そう諭された。

だから、朝早く教室を掃除した。学校行事の面倒くさい大道具運びも率先してやった。宿泊学習でも荷物持ちを引き受けた。


その頃は、前向きになることで、周囲のなにかが変わることを期待していたのだと思う。


それでもなんかニヤニヤしながらこっちを見てる。話しかけてもいないのに近寄ってきて「うんうんそうだね」と言われた、あいつは人の話を盗み聞きしている、 気持ちが悪い。そんな曲解した噂が立ち、その場にいないものとして無視され、感情を逆なでするからと殴られ蹴られるのが日常は変わらなかった。


 社会人になっても環境は変わらなかった。湯沸かし室では自分の悪口が聞こえてくる。社内回覧を後輩から投げつけられる、社内旅行でも一人、ただそこにいるだけの存在だった。


 この頃にはもう自分の資質が周囲をそうさせているのだと悟った。自分が自分と言う存在である限り、人間として最低限ささやかな幸せとは縁遠い人生を送るしかないのだ。


 そんな自分でも死んだら両親が悲しむ。それだけが生きる縁だったから、両親が身罷ったタイミングで自分は自殺した。これで社会から世界から解放される。そう思った。


 死んだら行く場所として聞いていた一面の花畑でもどこかの川べりでもなく、森の中に知らない髭爺がいて、「私は神だ。異世界へようこそ」と声をかけられた。

 無視したら「君にチャンスをやろう。君も勇者にならないか?」と言い出した。

「あそこに村が見えるだろう?あの村を守ってほしい」そう言われ、力を与えられた。


 村は、質素で素朴な、よくある異世界の街並みだった。知らない人たちが暮らしていた。誰も自分をジロジロ見つめてから噴き出し嘲笑することも無い。気にすることはない。ここにいていいのだ。そう感じた。

 もし、生前の自分が自分という存在で無ければ。送ることが出来たであろう優しい世界だというのなら。ここで生きるのも悪くないかも知れない。そう思った時だった。通りすがりの人と肩がぶつかった。咄嗟にすいませんでした、そう謝った。

どっちが先にぶつけた避けたなんていうのは二の次だ。ぶつかったことは事実だ。

 「あ、ごめんごめん。悪かったね」

 気さくな様子で気にしなくていいよと言うその顔は学生時代顔を見る度に殴りかかってきたクラスメイトだった。

 「君、見ない顔だね」

 「初めまして」

 よく見れば、笑顔で自分を迎える周囲の群衆はみな、自分を嗤い暴力を振るい陰口をたたいてきた者たちだった。


 自分はありとあらゆる災害を村に与えた。生きてる者が一人もいなくなるまで、日照りによる渇水、極度の寒波、竜巻、蝗害、疫病、害獣の大量発生を起こして村を滅ぼした。

 それから力を与えた髭爺の許に取って返した。八つ裂きにして殺した。

 こいつが神だというなら、こいつこそ、生前の自分が自分として生を受け、幸せとは縁遠い人生を送ることになった諸悪の根源だ。

 神を殺したことで神の権限を譲渡されて自分は神になった。人類がいる限り、自分のような存在が生まれることに自分は心を痛めた。人類など生まれてくるべき存在じゃない。自分は地上の人類を消し去り、類人猿も根絶やしにした。




髭爺は「生前みんなと仲良く暮らしたかったのね、OK、じゃあ望み通りの世界を用意しといたよ」ってくらいのヘリウムガスより軽い気持ちで村を生成してます

神なんて人間の気持ちがわからんのです


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