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超醒の救世者  作者: ミライ
1章
6/22

学生治安維持委員会

「お茶どうぞ」

「ありがと、莉穂(りほ)

「ありがとうございます」


 誠志(せいじ)は、目の前に置かれたカップを手に取って、一口いただいた。特に変わったことはなく、誠志も飲んだことのある味だった。超能力があるからと言って、食べ物や飲み物までは、あまり影響していないようだった。


「それで、学生治安維持委員会(S M C)について知りたいんだったわね。そもそも、なんで学生治安維持委員会(S M C)があるのか分かる?」


 答えは簡単には出ない。この世界にも警察があるのは分かっているため、学生の組織を作る必要はない。それでも、存在している理由。それは…。


「超能力…ですか」


 先ほどの愛月(まなつ)の発言にヒントはあった。超能力者なら、一部の試験をスルー出来る。ここから、学生治安維持委員会(S M C)は超能力者を欲していることが読み取れる。いや、欲しているのではなく、超能力者でないとそもそも入れないのだろう。スルー出来るということは、一部例外がありそうだが。


「そうね。未来都市(ここ)には、およそ二百万人の超能力者がいるの。そもそも、警察だけじゃ対応しきれないってのもあるけど」

「あるけど?」

「三十代を過ぎると超能力が使えなくなるのが、一番の要因ね」

「使えなくなる?!」

「正確に言えば、使っちゃダメな体になるってことよ」


 愛月曰く『ナスラ』保有量は、年齢が上がるとともに減少する傾向にあるらしい。保有量が少なくなるからと言って、超能力の発動に必要な『ナスラ』が減るわけではないので、単純に数回使うだけで枯渇状態になってしまうということだ。そして、そうなってしまえば心臓にとてつもない負荷がかかり、命の危機に瀕してしまう。だから、使ってはいけないのだそうだ。


「なるほど、つまり大人の超能力者は少ないということですね」

「えぇ、そこで白羽の矢が立ったのが、私たち学生ってわけよ」


 学生なら、すぐに超能力が使えなくなる可能性もない。それに、未来都市の学生人口は約六割強のため、人員の確保も容易だという理由もあった。

 だからと言って、すべての事件を学生に任せるわけではなく、基本的には警察の方で処理をして、必要な時に援助をするという形だそうだ。先ほど管轄ではないと言ったのは、ひったくり犯が超能力者ではなかったからだ。


「それに、学生治安維持委員会(S M C)だけが超能力者に対抗する組織じゃないわよ」

「他にも、あるんですか?」

「もちろん、超能力者の大人で構成された組織もあるわ。ずばり、超能力者専門警察(P S P)(Psychic Specialist Police)よ」


 超能力者専門警察(P S P)、超能力者のみで構成された警察組織であり、超能力者が関与する事件を中心に対応する組織だ。しかし、大人に超能力者があまり多くないこと。それに伴って、超能力者の犯罪は学生が多いこと。以上より、基本的には学生治安維持委員会(S M C)が、対応することの方が多くなるのだ。


「と言っても、私自身超能力者専門警察(P S P)を直接見たことはないんだけど…どう?今の話を聞いても、まだ学生治安維持委員会(S M C)に入る気はある?」

「もちろんです。もとよりほかに、選択肢はありませんから」

「わかったわ。今日はもう遅いから、その件についてはまた明日にでも、話しましょう」


 愛月はそう言うと、空のカップを持って給湯室のほうに歩いて行った。これで、後は試験に受かれば晴れて誠志も学生治安維持委員会(S M C)に入れる。入れさえすれば、これからここで過ごしていくことについては問題ないだろう。

 しかし、今最も重要なことはそれではない。今最も重要なこと。それは、家とお金だ。家に関しては、学生治安維持委員会(S M C)に入れれば学生マンションが使えるらしいので、重要度は低い。それよりも…。


「お金、どうすっかなぁ」


 誠志は、自身が持っていた財布を見ながらぼそりと、そう呟いた。買い物に行く途中だったので、約二万程度は持っている。しかし、それだけでは明らかに心もとない。学生マンションも、お金がかかるかもしれない。その前に、学生治安維持委員会(S M C)に入るまでどこで過ごせばいいかもわからない。食事も、家がなければ外食するほかない。などなど、金銭面の悩みは絶えず…。


「はぁ」


 残念なことに、今の誠志に解決策を考えるほどの余裕はなかった。


「どうしたの、誠志?何か困り事?」

「き、霧河さん?!聞いてたんですか?!」

「いや、ため息をついてたから何かあるのかなって」

「えぇと」


 誠志は、お金のことを話そうか迷っていた。どこぞの馬の骨かわからない自分のために、色々してもらっているのに、さらに迷惑をかける訳にもいかないと思ったからだ。しかし、基本的に試験を受けるのにはお金がかかる。お金がなくて、受けられませんでした…なんてことになったら、もっと迷惑をかけてしまうだろう。


「実は、お金がなくて…」

「あぁ、そう…よね」


 愛月は、誠志が孤児であることを思い出した。誠志の経歴は、ほとんどないようなもので、唯一分かっていることと言えば、孤児院をすでに出ているということ。それも、誰かに引き取られてではなく追い出される形で。そのため、誠志は学生であるにもかかわらず、一人で家もなく生きていけない…ということになっていたのだ。


「一応、学生治安維持委員会(S M C)に入れさえすれば、給料も出て、かなりの優待を受けられるのだけど…試験があるのは少し先だし」


 家の問題は試験を受ければ解決できて、今重要な問題は試験を受ければ解決できて…。結局、どっちにしろ誠志が直面する問題に対する解決策は、学生治安維持委員会(S M C)に入らないといけないらしい。試験の日付は分からないが、直近にはなさそうだ。それに、近すぎても誠志の対策不足で、落ちる可能性もある。


「そうですよね」

「あ、あの~」


 頭を抱える二人に声をかけたのは、お茶を淹れ終えて二人の話を遠くで聞いていた莉穂だった。


「どうかした?莉穂」

「その件なんですけど、私たちから依頼するというのはどうでしょうか?」

「そうね!その手があったわ!」

「依頼?」


 行き詰りそうになっていた誠志の抱えた問題も、莉穂の発案で希望が見えてきた。しかし、話を聞く限りでは、まだ安泰とはいかなそうだった。

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