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超醒の救世者  作者: ミライ
1章
21/22

誠志の超能力 ーその2-

 二時間後、誠志(せいじ)は一人、第五支部への帰路を歩いていた。


「俺の超能力…」


 真古馬(まこば)との実験で分かった事。誠志の超能力の実態。実験によって得られたデータと、先日の件の情報から判断されたものだが、誠志の超能力が一体何なのか、つかむヒントを得られていた。

 誠志は、両掌を見つめてポツリとつぶやいた。


「"分け与える力"と"奪う力"…か」


 分け与える力は、水晶によって確実性が増した。では、奪う力はどうなのか。これも、とある実験によってほぼほぼ確実と言ってもいいものとなっていた。

 真古馬曰く、誠志の右手に分け与える力が、誠志の左手に奪う力が宿っているらしい。そもそも、この実験をする前から、真古馬は奪う力のことを予期していた。それもそのはず、結論から言ってしまえば分け与える力だけでは、他人に自分が持つ『ナスラ』を与えられても、『ナスラ』を与えるのと同じスピードで補充することができないからだ。

 お金で例えるならば、所持金を毎秒一円ずつ誰かにあげたとしても、毎秒一円稼げなければいずれできなくなってしまうだろう。それと同じことが『ナスラ』で起こっているそうだ。


「ん~どうするかなぁ」


 誠志は、頭をかきながら嬉しそうとも残念そうとも捉えられない顔で、そう言った。

 念願の超能力を手に入れた誠志だったが、その超能力が他と一線を画すモノであるがために単純に喜べないのも無理はない。"分け与える力"は超能力者を強化できる超能力で、真古馬曰く今までに存在しなかった種類の超能力だそうだ。それに、"奪う力"も誠志の推測が正しければ…。

 大いなる力には、大いなる責任が伴う。誠志の力は、これまでの超能力の概念を壊しかねないものだ。そうやすやすと、人に教えることはできない。もし、それをしてしまえば、愛月(まなつ)達にも迷惑がかかってしまうことは、誠志も分かっている。だからこそ、このことを話すべきかどうか悩んでいた。

 もちろん、真古馬ともそれに近い話はしていた。そのときは、一部のことのみを話すことにしようということで、決着した。しかし、それを話したところで、その後ボロが出てしまうのではないかと、誠志は心配していた。また、そんなことをしても愛月にはすぐにバレてしまうだろう。

 そもそも、今回は愛月の勧めで、真古馬と共に誠志の超能力を調べたわけで、(あつむ)の件のことを知っているために、生半可な嘘は通じないと見えた。


「はぁ」


 結局、どうするかを決める前に第五支部についてしまった。誠志は、表から堂々と入るのは少し恥ずかしかったため、裏口を使って中に入った。


「おかえり、誠志」


 帰ってきた誠志を迎入れたのは、ちょうど一階に降りてきていた瑠真(るま)だった。


「ただいまです、新槙先輩」


 誠志は、返事をすると荷物を置きに二階へと上がっていった。

 今日は平日であるが、瑠真は通信制の学校に通っているため今第五支部にいる。学生治安維持委員会(S M C)は街の便利屋的立ち位置で、交番も警察もあるが皆真っ先に駆け込むのがここだった。だから、平日にも機能するように数人は配置するように未来都市の条例で決まっている。その際はもちろん、公欠扱いで特にデメリットがあるわけではなかった。

 第五支部は、他の区に比べても小さいため一人いるだけでも特に問題はなかった。そしてその枠に、ちょうど通信制の学校に通っている瑠真が充てられたというわけだ。


「それで、どうだったんだ?」

「え?」

「行ってきたんだろ?超能力開発局(P D P B)に」

「は…はい」


 誠志は瑠真に、今日超能力開発局(P D P B)に行くことは言っていない。状況証拠…誠志が時間をかけて今行くところ、誠志の今の状況などなど…それらを加味してそう推察したのだろう。

 そしてそれは当たっている。だからこそ、なんと言うかまだ決めかねていた誠志は、その場で言い淀んでしまった。


「言いたくないなら、無理に言わなくてもいいぞ」


 瑠真はそう言うと、自分の席へと歩いて行った。瑠真には若干勘違いされた気もするが、今はその方がありがたい。そのため誠志は、特に訂正せずにいるのだった。

 瑠真はそれからは特に超能力の話題に触れることはなく、依頼人も来なかったので愛月たちの学校が終わるまで誠志と瑠真は二人の時間を過ごすのであった。


「こんにちは」

「お疲れ様です。浅田さん。霧河さんは、来てますか?」

「支部長なら、下にいますよ。誠志さんと話がしたいと言っていましたけど」

「あっありがとうございます」


 愛月が誠志と話したいことは、超能力の件しかない。愛月が返ってくるまでの間、誠志なりに考えて答えは出ている。後は、その通りに事を進めるだけだ。

 階段を降りると、パーテーションでつくられた空間にある椅子に愛月が一人座っていた。誠志は、愛月の向かいにある椅子のところまで歩いて行き、対面する形で席に着いた。


「よく来たわね、誠志。聞かせてくれる?今日のこと」

「はい…」


 それから誠志は話し始めた。自身の超能力のことを。一人抱え込むよりも、誰かと共有した方がいい。それに、これから学生治安維持委員会(S M C)に入ったときに嘘をついているのは、嫌だと思えたからだ。

 この行為がこれから先どんな影響を及ぼすのか、誠志には分からない。それでも、今最善の選択がこれだと思えたのであれば、ためらわずに行うべきだと、誠志は思うのだった。

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