誠志の超能力 ーその1ー
目を閉じても、光を完全に遮ることができなかった誠志は、両腕を使って完全に目を覆い隠さった。
それから数秒後、光は徐々に収まっていき、目を開けられる程度まで戻っていた。
「こ、これは…?!」
「この光は『ナスラ』を可視化するものだとでも思ってくれて構わない」
「『ナスラ』を可視化?」
真古馬曰く、この水晶は『ナスラ』を取り込むことで薄荷色の光を放つそうだ。しかし、それが誠志の超能力とどう繫がるのかについては、サッパリわからなかった。
「あぁ、これでハッキリしたな。誠志君の超能力の一端が」
「え?」
「この水晶には『ナスラ』を蓄える力はなく、放出することしかできない。周囲から吸収もしなければ、自ら生み出すこともない」
「つまり?」
「外部から与えるしかないんだ」
外部から与える…つまり、今回で言えば水晶に触れた誠志が、その水晶に『ナスラ』を込めたことになる。呪いの話が出た時点で、誠志が超能力者であるのはほぼ確定していた。そして今、その正体が明らかになった。
「俺の超能力は、触れているものに『ナスラ』を与える?」
「…半分正解で半分不正解だ」
「半分?」
「そうだ。分け与える力は、誠志君の持つ超能力の片割れ。それだけでは、萃君の超能力が強化された現象の説明ができない」
「どういうことですか?そもそも、超能力の強化って一体…」
誠志の疑問を真古馬はあらかじめ予想していたのだろう。机の上に置かれているファイルを取ると、該当のページを開いて説明を始めた。
真古馬の説明を要約すると、超能力の強さは三つの要素で決まるらしい。その三要素とは〈『ナスラ』吸収量〉〈『ナスラ』保有量〉〈『ナスラ』排出量〉。つまり、このうちのどれか一つでも強化されたならば、超能力も強化されるということだ。
「…超能力が強化される原理については、なんとなくわかりました。でも、どうして分け与える力だけでは、萃の超能力が強化された現象に説明ができないんですか?」
「誠志君、君の体内に『ナスラ』が差し引きゼロの状態ということを、確かに分け与える力で持っている『ナスラ』をすべて放出していると捉えることができる。ただ、今回強化の要因になったと思われる〈『ナスラ』保有量〉の強化を説明するには足りない」
「足りない?」
そう言うと真古馬は、さらにファイルのページを開き〈『ナスラ』保有量〉と超能力の関係について話し始めた。
「先ほど、超能力者には体内の『ナスラ』保有量が一定値を下回ると超能力が使えなくなるストッパーが発動すると言ったね。それと関係してるんだ。どうだい?なぜ足りないのか、わかってきたかな」
「保有量…ストッパー…強化…」
誠志は脳内で、持ち得る情報のピースを何とかつなげて答えを導こうと頭をフル回転させた。
ストッパーがあるのは、体内の『ナスラ』をすべて枯渇させないため。それは理解できる。そんな中で、〈『ナスラ』保有量〉の強化とはいったいどういったものなのか。真古馬の話では『ナスラ』を溜めこめる量を増やすということ。でも、誠志が触れただけでなぜ保有量が増えるのか。分け与える力であれば、萃の『ナスラ』が減った量だけ補充することはできるが、それだけでは保有量が増えたことにはならないはずだ…ッ?!
「分け与える力だけだったら、根本的に保有量は増えていない?」
「正解だ。流石だね、誠志君。その通り、分け与える力のみでは〈『ナスラ』保有量〉は強化されない」
「だったら、〈『ナスラ』保有量〉を強化できる超能力を俺は持ってるってことになる?」
「そうだ…とは言い切れないが、少なくとも分け与える力だけではないのは確かだ。さぁ、話はここまでにして、その正体を探るために少し実験をしよう」
真古馬はそう言って、開いていたファイルを閉じると、席を立って部屋の出入り口の方まで歩いて行った。
誠志も席を立ち、その後をついていく。これからどんなことをされるのかわからない。怖くないと言えば嘘になる…が、それでも、前に来たときは特に人体に何か直接関与するようなものではなったので、今回もそうだろうと心の内で唱える誠志であった。




