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超醒の救世者  作者: ミライ
1章
18/22

鍵の在処

 (あつむ)の発言に驚きを隠せない三人だったが、愛月(まなつ)はすぐさま冷静さを取り戻り、真偽を確かめるために萃に向けて言葉を放った。


「鍵を見つけたって本当?」

「はい、支部長」

「それで、どこに?」

「あそこです」


 萃は、ゆっくりと正確に鍵の在処を指差した。指先は、地面ではなく空を指しているように見える。いや、空ではない。萃が指差した場所を見る、三人の視線の先にあるもの。それは…。


「うっそ~」

「あれって、この公園のシンボル的な存在の…」


 萃が指差していたのは、誠志(せいじ)が数刻前に見ていた公園の中心にある小島に聳え立つ大木だった。


「萃、本当にあそこにあるの?」

「はい、今は存在を感じられないですけど…あそこにあることは確信しています」

「そう…わかったわ。おおよその場所が分かるなら、私が見てくるわ」

「本当は僕が直接行ければいいんですけど…すみません」


 愛月と萃の間で、淡々と進む作戦会議に誠志はついていけずにいた。今の誠志の頭の中は、どうして鍵が木の上にあるのか、どうやってそこに落としたのか、などと言った疑問で埋め尽くされていたからだ。

 真緒(まお)は慣れているのか、話にはついていけているようだった。しかし、自分の出る幕はないとわかっているのか、特に口出しはしなかった。


「後輩く~ん、大丈夫だよ~後は二人に任せておけば」

「で、ですが…」

「真緒!私をあの小島まで、運んで頂戴」

「あちゃ~まだ仕事あったか~。じゃ、後輩君。ちょっと待っててね~」


 そう言うと、真緒は生み出した泡のボールで愛月を包み込んだ。そして、其れを軽々と持ち上げると湖の上に浮かばせた。どうやら、真緒が作り出した泡のボールは、超能力産であるため軽く、中に人が入ってもそう簡単には割れないらしい。

 また、真緒は先ほどとは違って、自身は泡のボールを被っていない。超能力で生み出せる泡のボールは一つなのか、総体積が決まっているのかどうかは分からないが、少なくとも今は一つしか作り出せないようだ。

 などと誠志が考えているうちに、真緒と愛月は既に小島付近まで近づいていた。


「霧河さん、どうやって登るつもりなんですか?」

「誠志君は、支部長の超能力は知っている?」

「はい、確か効果範囲内の物体の動きを止めることができる超能力でしたよね?」

「うん、あってるよ」

「でも、それでどうやって上へ?」

「それは、見てれば分かるよ。ほら」


 萃の指が小島を指す。その動きにつられて、誠志の視線が萃から小島に移った。ちょうど、真緒と愛月が上陸しているところだった。

 愛月は、上陸してすぐに萃が指差した位置を確認する。そして、肩にかけたカバンの中から手のひらサイズの石をとりだすと、そのうちの三個を落とし、空中めがけて十個ほど投げ上げた。すると、それらの石が空中で静止していく。そして気が付けば、石の道が出来上がっていた。


「すごいですね…」

「あれには僕も驚かされたよ。いつもは、そこら辺の木の上とかだけど、今日は違うからね。流石に見てて、ひやひやするね」

「そうですね」


 二人がそんな話をしている間に、愛月は既に石の道を登り始めていた。愛月の超能力の効果範囲は見たところ半径十メートルほどだろう。そのため、石の道が途中で途切れてしまっている。

 愛月はある程度のところまで登ると、また石を数個投げ上げた。そして登る。このセットを四度繰り返して、ようやく目的地の場所に到着した。

 数秒後、何かを見つけたのか愛月が真緒に手を振った。そして、登った時と同じ手順で木の上から降りて行った。さらに数分後、二人のもとに真緒と愛月が戻ってきた。


「支部長、どうでしたか?」

「萃の言った通り、ほら、あったわよ」


 そう言って突き出された愛月の掌の上には、一つの鍵があった。とくに、キーホルダーのようなものはついてはいないが、これが依頼人の物であるのは言うまでもなかった。


「これです!僕の超能力も、この鍵を示しています」

「お~これで依頼達成だね~」

「よかった…」

「それにしても、どうして萃は範囲外の鍵を見つけられたのかしら」


 依頼達成に喜ぶ三人とは別に、愛月は一つの謎を考えていた。それは、萃がなぜ鍵を発見できたのかということだ。萃の超能力の効果範囲は半径五メートル。今いる場所から、小島に聳え立つ大木にあった鍵を探知することなど到底不可能なのだ。


「そうですね…僕にもよくわからないのですが、存在を感じれたのはほんの数秒で、次にそれを感じたのは支部長と真緒さんが戻ってきたときです」

「となると、超能力が成長したわけじゃなさそうね」

「成長?」

「そうだよ、後輩君。超能力は、成長するんだ~」


 真緒さん曰く、超能力は成長することで効果範囲が広がったり、効果対象が増えたりするそうだ。さらに、できることも増えることもあるらしく、それらは全て超能力者の成長とともに起きることらしい。

 しかし、今回はそのケースには当てはまらない。なぜなら、萃が存在を感じられたのはほんの数秒。成長したなら、ずっと感じ取れているはずだからだ。


「なるほど、一瞬だけだったら確かに成長とは違いますね」

「ん~考えてても分かんないや」

「萃、()()()()()()ことはなかった?」

「え?」

「私が学生治安維持委員会(S M C)に入ったときの支部長に聞いたことがあるんだけど、超能力が一時的に強化される現象?があるんだって。もしかしたら、今回はこれと何か関係あるのかもって思って」

「そうですね…現象ではないですが、いつもと違うという点でいうなら誠志君と手をつないでいたということでしょうか。僕が鍵の存在を感じ取れたのは、ちょうど誠志君と手をつないだ間だけだった様な気もしますし」


 萃のその発言に、愛月と真緒の二人の視線が誠志に移る。しかし、誠志には萃の超能力を強化したという感覚がなかったため、二人の眼差しに答えられず、なんと言えばいいのか分からずに言い淀んでしまった。


「まぁ、今は誠志が何かかかわってるかもってことが分かっただけでも十分だわ」

「そだね~うちももうくたくただし、これ以上頭使いたくないな~」

「明日、真古馬さんのところに行けば、何かわかるのでは?」

「そうね、それが良さそうだわ」


 誠志がわたわたしているうちに、三人で話がまとまったようで、四人はこの公園を去ることにした。

 その後、依頼人が第五支部に鍵を取りに来て、無事依頼達成となった。真緒と萃とは、その時点で分かれて、愛月たちも明日学校があるからと諸々の処理を終わらせて帰っていった。その際、夕食を作ってこなかったことを申し訳なく思っていたのか、外食を誘われたが誠志は断り、今は一人でインスタント麺を啜っていた。

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