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超醒の救世者  作者: ミライ
1章
17/22

意識の外

 誠志(せいじ)たちは、依頼主の家の鍵を探すために各々の配置について捜索を始めた。

 鍵の色や形状などの、大まかな情報はあらかじめ愛月(まなつ)から聞いている。大きさも、一般的なものであるため、見つけやすいとも見つけにくいとも言えない。ただ、凝視していれば見落とすことはないとだけは言えた。


「ここか?それとも…」


 遊歩道は、地面から数十センチだけ浮いた位置に、複数の板を並べる形で設計されていた。そのため、板一枚一枚の隙間が絶妙に空いている。鍵のサイズを考えるに、そこに落ちてしまうことも考えられた。


「ん~なさそうだけどなぁ」


 隙間に顔を近づけてのぞき込んでも、それらしきものは見えない。

 これと、周囲を見るのが一セット。これを後どのくらいやればいいのかなんて、誠志には想像もできなかった。でも、これはまだ生ぬるい方だろう。正直に言えば、明らかに真緒(まお)(あつむ)の方が重労働だ。

 二時間ほど探してみたが、誰からも見つけたという報告は出なかった。日も登り、昼時が近づいてきたので四人は、昼食のために休憩を取ることにした。


「支部長~今日は何作ってきてくれたんですか~?」

「今日は、サンドイッチよ」

「わ~!おいしそ~!」


 愛月がカバンの中から取り出した箱の中には、ぎっしりと詰まった様々な種類のサンドイッチがあった。


「霧河さん、いつも作ってるんですか?」

「えぇ、そうよ。お腹がすいてちゃ、仕事に集中できないでしょ?」

「そうはいっても、大変ではありませんか?今日だって、俺の朝食も作ってきてくれたのに…」

「今朝もいったけど、作るのは慣れてるし。それに、喜んでくれる人の顔を見るのは嬉しいものよ?だから、ほら!遠慮せず食べなさい」


 誠志は、愛月の言った『おいしく食べてほしい』に応えるべく、すいた腹を満たすようにサンドイッチを口に運んだ。四人で食べていたから、沢山あったサンドイッチも、三十分でなくなってしまった。

 その後、軽く談笑を挟みつつ、計一時間ぐらいたったところで昼休憩が終わり、探索が再開された。


「公園で鍵探しなんて、人生で一度もしたことないからな。見逃しとかないといいけど」


 始めた時には見落とすことがないと思っていたが、こうも見つからないと不安になるのも当たり前。現に、誠志は既に公園の半周以上の遊歩道を探しているが、目に見えた成果は一つもなかった。

 もちろん、誠志がこうしている以上、ほか三人からも見つけたなどという報告は来ておらず…昼休憩から既に、二時間ほどが経過していた。

 同じ遊歩道を担当している愛月とは、半周した時点ですれ違っている。つまり、今見ている場所は愛月がすでに調べた場所ということだ。もちろん、誠志は愛月が調べてくれるからと考えて、手を抜くなんてことはしていない。それは愛月も同じだ。しかし、それでも見つからないというのであれば、遊歩道にはないのかもしれない。その考えこそが危ういことなど、言うまでもなかった。


「ここもない…」


 遊歩道の板の隙間を覗いていた誠志が、ポツリとそう呟いた。初めての依頼で、やる気に満ち溢れていた誠志も、成果が出せないと協力した意味がないと、焦りが徐々にあらわになってきた。


「誠志、そっちはどうだった?」

「ダメです…見つかりませんでした」

「そう、こっちも同じよ」


 愛月は、誠志が落ち込んでいるのを即座に把握し、自分も同じということを即座に言葉にして発した。 

 数時間もかけて調べたが、結局二人は一周してしまった。見つからなかったこと自体が成果とも言えなくもないが、それで仕事をやり切ったと誠志は言いたくなかった。


「見落としがあるかもしれないけど、もう一周するには時間がないし、とりあえず二人の協力を優先するわ」

「その必要はないですよ、支部長」

「そ~そ~、うちらも今終わったとこ~」


 真緒と萃も、捜索を終え二人のところに戻ってきた。結局、鍵は見つかったのかというと…。


「だめです。僕の超能力に反応はありませんでした」

「そう、萃のでダメなら、今日はもう無理かもしれないわね」

「そんな…」

「そう落ち込まないの~後輩君。今日はここまでってだけで、諦めたわけじゃないんだから~」


 真緒はそう言ってくれているが、誠志は依頼者のことを考えられずにはいられなかった。今は、スペアキーを借りているため家には入れるが、それでも本当の鍵が手元にないのは不安だろう。その不安を取り除くと、そう決意してきたのに、何の成果も出さずに帰りたくないと。子供みたいな気持ちが、誠志の心の内側にこびりついていた。

 独り言のように、その思いを誠志は知らず知らずのうちに、こぼしてしまっていた。


「誠志君…わかりました。一周、僕と一緒に遊歩道を探しませんか?」

「え?」

「僕だって、いち早く鍵を依頼主の元に届けてあげたいですし、それに…僕の超能力が生きるのはこういう場面だけですから。いいですか?支部長」

「そうね、お願いするわ」


 萃は、誠志に手を差し伸べた。自分のわがままなのに、それに付き合ってくれた三人に、誠志は感謝せずにはいられなかった。


「ありがとうございます」


 誠志は、深々とお辞儀をして、萃の手を取った。


「…え?」


 その瞬間、萃の顔つきが変わった。それは、嬉しさや喜び、はたまた不安や恐怖のそれとは違う、現状を理解できない戸惑いを表すものだった。


「どうしたの、萃?」

「えっと…鍵、見つけました」

「「「え~?!!」」」


 萃のその一言に、三人は驚かずにはいられなかった。

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