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超醒の救世者  作者: ミライ
1章
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新たな出会い

 誠志(せいじ)愛月(まなつ)は、公園を目指して歩いていた。なぜかといえば、依頼者が自宅から公園まで歩いていき、その公園で五周ほど外周を走ってから同じ道を通って帰宅したからだ。すなわち、鍵が落ちている可能性があるのは、その公園と自宅と公園を結ぶ道のみ。いまからその公園を、調べに行くというわけだ。

 愛月が呼んだ、学生治安維持委員会(S M C)の二人とは公園で落ち合うことになっている。そのうちの一人に、今回の依頼に最適な超能力者がいるらしく、依頼主が通った道中の捜索を任せている。


「その二人って、どんな人なんですか?」

「そうね、詳細な情報は本人から直接聞いた方がいいと思うから…簡単に言えば、二人ともノリがとてもいいわ」

 

 ノリがいい、その情報からでは正確な人柄を想像することは難しかったが、少なくとも今の誠志を悪く思うような人ではなさそうだった。

 二人はおよそ十分ほど歩いて、目的地の公園のいたどり着いた。


「二人が来るまで…あと五分くらいね」

「先に始めますか?」

「いえ、二人を待つわ。まずやるべきは、自己紹介。誠志と二人はまだ認識がないから、顔合わせを先にしておきたいわ」


 確かに、もし二人と合流する前に誠志が鍵を見つけてしまえば、二人は無駄足だったことになる。給料がどういう仕組みで払われるかはわからないが、MVP敵なのがあるとするならば、もしかしたら愛月が誠志を優遇しているようにとらわれるかもしれない。二人になら問題ないかもしれないが、それでもこれは、学生治安維持委員会(S M C)に入りたいと願う誠志への、愛月なりの配慮だろう。

 二人を待つまでまだ時間があるので、誠志は座れそうなベンチを探すために辺りを見回していた。そのとき、一つの存在が目に飛び込んできた。


「…大きな木ですね」


 この公園には、湖がある。その周りに遊歩道があり、中心部には一つの島がある。そして、その島に一本の大木が聳え立っていた。全長およそ四十メートル。円錐状に沢山の葉が生い茂り、枝も四方八方に伸びている。


「えぇ。あれは、未来都市ができる前からある木。開発が進んで、自然が失われ始めた第五区画に残された、唯一の自然豊かな公園のシンボル的な存在ね」

「貫禄ありますね…」


 誠志が昨日今日と第五区画を見て回っても、確かにそこに緑は少なかった。街路樹や並木はありはしたが、それらすべて人為的に植えられたという印象だった。

 誠志と愛月は遊歩道沿いのベンチに腰掛けながら、二人が来るのを待っていた。


「全部で三十の区画があるって言ってましたけど、どこも似た感じなんですか?」

「いいえ、未来都市の外縁部にはまだ、緑豊かな土地が残っているわ。いえ、逆に言えば開発が遅れていて、山々や森林が残されてると言った方がいいわね」

「未来都市内でも、開発状況に差があるんですね」

「えぇ、未来都市は…」


 愛月の説明によれば、未来都市は第一区画から開発が始まり、そこを中心として円形に発展させていったらしい。そして、開発した順番に区画の数字が振り分けられていったそうだ。つまり、第五区画は五番目に開発が終わった場所。だから、他と比べても第五区画に緑が少ないというわけだ。


「あとは、第五区画が他と比べて小さいのも影響してるかもしれないわ」

「小さい?」


 どうやら、第五区画は最初期に開発された区画の中では最も小さいらしい。

 未来都市を作ると決めたはいいものの、そこに住みたいと思うものが現れなければ意味がない。だから、一気にすべての区画を作って『予想よりも人が来なかった』なんてことになったら、超能力社会の最先端に立つどころか、日本は世界から置き去りにされてしまうだろう。

 そうならないために、まずは四つの区画を作り様子を見ることにしたのだ。その際、人があふれても対処できるように予備に用意されたのが、第五区画だということだ。


「なるほど、だから五つの区画の中で最も小さいんですね」

「えぇ。でも、結局入居希望者が殺到して開発が進んだ結果、第六区画以降と比べてもかなり小さいんだけどね」


 始めのうちは、キャパオーバーで入居まで半年ほど待つのが当たり前だったが、超能力の実態が明らかになるうちにその数も減り、二十五区画以降はかなり場所を持て余しているらしい。それでも、学生のみの入居で多額の支援をする政策が打ち出されて、学生人口が増えた影響で三十区画までは開発されたのだが。

 そのようなことを話していると、どうやら合流の時間が迫ってきたようで。誠志と愛月が座るベンチに、二つの人影が近づいてきた。


「どうやら来たようね」


 愛月の言葉を聞いて、誠志は顔を上げる。


「あの人たちが…」


 ノリがいいとは聞いている。人見知りではないとはいえ、緊張するのは仕方がない。今の誠志をどう捉ええるのか…そう考えずにはいられなかったからだ。

 ある程度の距離まで近づいたところで、人影の動きがぴたりと止まった。


「君が、蒼井誠志君だね。初めまして。僕は、飛梅(とびうめ)(あつむ)と言います。よ…」

「はいは~い!うちは、飯嶋(いいじま)真緒(まお)っていいま~す。よろしくね!」

「ちょ、真緒さん。遮らないでくださいよ~」


 二人の会話劇に、ふと笑みがこぼれてしまう誠志。


「お!いいね~緊張とけた?」

「え?」

「いやいや~、遠くから見て体めちゃガチガチだったからさ!うちらでなんとかしようって思って」

「真緒さん、そう思ったなら先に言ってくださいよ」


 ノリがいい、愛月の言った通りだ。そしてそれは、人を不快にさせるものではなく、人を笑顔にするもの。この人たちとならうまくやれそうだと、誠志の内から思いがあふれてきた。


「ありがとうございます」

「いいってことよ~後輩」

「そうですよ、誠志君。僕たちは仲間なんですから、遠慮なんていりません。困ったことがあったら、いつでも頼ってくださいね」

「…はい!改めて、蒼井誠志と言います。今日は、よろしくお願いします」


 後輩・仲間と言ってくれたこと、それは誠志の悩みを吹き飛ばすほどの言葉だった。

 皆がみんなこうであるかはわからない。いや、こうであるはずがない。それでも、この二人は誠志のことを仲間だと認めてくれた。この縁を、誠志は大切にしようと、胸の奥に決意を刻み込むのだった。

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