苦痛を取り除いたモノの正体
彼女の部屋へ、全身黒づくめの男が1人、入った。
床に倒れている彼女の姿を見ても、動揺しない。
その口元に笑みを浮かべ、萎んだ花を掴んだ。
すると残った茎の部分も、そして彼女の体や飛び散った血すら、サラサラと砂のように消え去った。
男が手を開くと、同じように花は砂となり消え去ったものの、小さな茶色の種が残った。
その種は彼女が最初に飲んだ薬と同じモノ―。
男は満足そうに頷き、その部屋を後にした。
【d.p】
その名は【drug paradise】からきています。
ドラッグはそのまま【薬】という意味で、【パラダイス】は苦痛の無い世界という意味です。
彼女がはじめに飲んだ茶色の薬は、特殊な花の種。
花は彼女の苦痛を元にして、腹の中で育っていきました。
しかし時折、栄養が必要となり、種の栄養となる緑色の薬を与えなければならない。
種が育つには苦痛が必要。しかし育つにも、栄養が別に必要となるのです。
そうしているうちに花はどんどん成長していきます。
温床となった女性の体を使って。
やがて花は女性の全てを使って、この世に咲き誇ります。
しかしその命は一瞬のもので、お腹から出た花は外気に耐え切れず、萎んでしまうのです。
ですがその際には、新たな花の種を残します。
その種を回収し、苦痛に悩む女性にお売りしています。
さて…次はどのような女性が、この【d.p】をお求めになるのでしょうか?
ああ、彼女のお友達がアクセスしてきました。
ちょうど良いので、この薬をお売りすることにします。
妊娠した経験がないと良いのですけどねぇ。
不思議なことに、この花は一度も妊娠したことがない体にだけ、効果を発揮するのです。
一度でも子を成した体の女性が飲まれても、そのままトイレで排出されてしまいます。
きっと花が嫉妬しているのでしょう。
温床となる女性体は、独占したいと思っているのではないでしょうか?
―アナタもいかがですか?
全ての苦痛から、解き放たれますよ?
【終わり】