霧の兆候と巫女の苦悩
パルナコルアの朝は静かに始まった。
しかし、その静寂の中に、不穏な気配が漂っていることをサティとアリアはすぐに感じ取った。
「ここ数日、霧がいつもより濃くて、夜になると奇妙な囁きが聞こえるのです」
聖泉宮の巫女の一人、ミラが震える声で報告した。
ルアは眉をひそめ、サティに視線を送る。
「サティ殿、これはただの自然現象ではないでしょう」
サティは頷き、深く息をついた。
「異界の影響が強まっている。早急に調査を進めましょう」
二人は巫女たちの案内で、霧の発生源とされる神聖な森へ向かう。
そこには、薄暗い霧が静かに立ち込め、時折不気味な気配が風に乗って漂っていた。
「これが……異界の兆候か」
サティは手袋を外し、掌に魔力を集中させる。
黒炎が微かに揺れ、霧の一部をほんの少し焼き払った。
だが、霧はすぐに元通りに戻り、さらに濃くなっていくように感じられた。
「強力だ……ただの魔力では足りない」
ルアも神聖な祈りを捧げるが、霧は容易に退かなかった。
「このままでは、巫女たちの精神も持たないでしょう」
ミラは泣きそうな顔で呟いた。
「私たちが守らなければ……でも、どうすれば」
サティは力強く拳を握った。
「必ず解決する。君たちの力も貸してほしい」
そして、サティとルアの連携が、霧をめぐる戦いの序章となるのだった。




