聖女との取引――教師としての約束
聖泉宮の一室。
窓から差し込む午後の陽光が、ルアの純白の法衣を柔らかく照らしていた。
「……サティ殿、貴方の条件とは一体?」
ルアは落ち着いた声で問いかける。
だが、その瞳には少しの驚きと興味が混じっていた。
サティは地図を畳み、静かに返す。
「この地の霧の謎を解決する代わりに、貴方にルメリアの学院で教師をしてもらいたいの」
「教師、ですって?」
ルアは軽く眉を上げる。
その表情には困惑と少しの戸惑いが見え隠れした。
「聖女としての務めは重く、私に教育者としての役目が務まるのか、正直自信がありません」
「でも、あなたならできる。私が保証するわ」
サティは一歩近づき、真剣な眼差しを向けた。
「聖女として培った知識と信仰は、生徒たちにとって何よりの財産になる。
あなたの存在が彼らの未来を大きく変えるのよ」
ルアはしばらく沈黙したのち、ゆっくりと頷いた。
「……わかりました。貴方の期待に応えましょう。教師として、学院に協力します」
その決意を示す言葉に、サティは小さく笑みを浮かべた。
「ありがとう。これで、互いに協力し合える」
部屋の窓の外、風がそっと揺らめき、聖泉宮の静寂が少しだけ和らいだように感じられた。




