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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第11章 パルナコルア編

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聖女の微笑と隠された願い

パルナコルア――

豊かな自然と精霊信仰に支えられた、女神の加護を強く受ける聖都。


石畳の道と白い大理石の建物が並ぶこの地は、他のどの国よりも静かで、清らかな気配をまとっていた。


「……ここが、聖女が治める都か」


サティは門前で馬を降り、軽く息を吐いた。

空気には独特の“静謐”が漂っており、まるで彼女の心すら浄化するかのようだった。


城門で手続きを済ませ、案内人の神官に導かれるまま、サティは聖女の居城――「聖泉宮」へと足を運ぶ。


長く続く回廊の先。

広間に通されたサティの前に、静かにその人物は現れた。


「お久しぶりです、サティ殿」


穏やかな声。

純白の法衣に身を包み、背には微光をまとうような気品を纏う女性。

聖女――ルア・シエン。


「お呼び立て、失礼しました。……ですが、どうしてもあなたに会っておきたかったのです」


サティは軽く頭を下げた。


「お言葉に甘えて、まいりました。パルナコルアの聖女さまが、わざわざ私を呼ぶなんて――これはただの挨拶じゃなさそうですね」


ルア・シエンは微笑んだ。


「ふふ、鋭いですね。やはり“ギルドの影”にして“死神”……と言われるだけはありますね」


「……あの称号、好きじゃないんですけどね」


ルアは少しだけ柔らかい表情を浮かべた。


「実は――この地で“霧”に似た現象が、複数報告されています」


サティの表情が変わった。


「霧? それは、異界に通じる……?」


「まだ断定はできません。ですが、巫女の一人が“異界の名”を口にして、正気を失いました。

そして――“あなたに伝えろ”とだけ言い残して」


「……伝えろ?」


ルアは立ち上がり、サティに向き直る。


「あなたが異界から戻った今、この世界の“境界”は弱くなっている可能性があります。

私はあなたと共に、この地の霧の謎を解きたい。そう、思っているのです」


サティは黙ってアリアの目を見つめた。

その瞳は、優しさの奥に、強い覚悟を秘めていた。


「いいでしょう。手伝います。……ただし、情報は全て開示してもらいますよ」


「もちろんです。サティ殿。

あなたの力なくして、この地の未来は守れませんから」


微笑む聖女の背後、ステンドグラスの向こうに、わずかに揺れる黒い“霧”のようなものが見えた。

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