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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第10章 異界編

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霧に染まる記憶

《ヴェリム》の門をくぐった瞬間、空気が変わった。


「……っ!」


息を吸っただけで、胸が重くなる。

この霧はただの毒ではない。心に染み込むように――“記憶”を揺さぶってくる。


「フィーネ、大丈夫?」


「……平気。でも、なんだか……懐かしい匂いがするの」


言葉にしてから、自分でおかしいと気づく。


(懐かしい? でも私はこの場所に来たことなんて――)


視界が揺れた。

足元の石畳が、別の場所へと変わる。

草原。夕焼け。風にそよぐ白い花。

そして――


> 「君が選ばなかったことは、きっと正しかった。

でも、君が“失ったもの”を……僕は、どうしても忘れられなかった」




そこに立っていたのは、白い衣をまとった青年だった。


(誰……? 私、あなたを――)


> 「エリシア」




その名を呼ばれた瞬間、フィーネの身体に電流のような衝撃が走る。


> 「あの日、君は僕を斬った。

世界を救うために。正義のために。

でも、それは本当に正しかったのか――?」




青年の名はルゼス・カイエン。

かつて異界研究に携わり、フィーネの“前世”であるエリシアと共に、ザイデンと戦った人物。


だが彼は、最後に“敵”として立ちはだかり、そして斬られた者だった。


> 「君が何もかも背負って、“扉を閉じた”あの時――

その代償として、僕たちは何を失った?」




「私は……」


フィーネは答えられない。


彼が語る記憶は、自分のものではないはずなのに――

なぜか、心の奥底で“知っている”気がした。



***


視界が再び変わる。

今度は、巨大な魔導都市が燃えている光景。

街の中心で、白衣の男――ザイデンが叫ぶ。


> 「なぜだエリシア! 我々の研究は世界を変えるはずだった!」

「それでもあなたは、扉を閉じるのかッ!!」




> 「……ザイデン、あなたの未来には、誰も救われない」




そして、彼女は剣を振るう。

それが、“終わり”の始まりだった。



***


「……私が……?」


フィーネは自分の手を見る。

確かに覚えのない、でも確かに“馴染む”感覚。


「私の中に……“誰か”がいる。

でも……私は、私……」


> 『本当に、そう言い切れるか?』




耳元で、ザイデンの声が囁いた。


> 『お前が“かつての契約者”――エリシアの再来なら、

私の世界を再び滅ぼす存在だ。』




> 『だが、記憶を抱いたまま剣を振るえば、いずれ“自分”を失う』




「……なら、私はその運命を、超えてみせる」


フィーネは剣を構える。

霧がざわめき、目の前に黒衣の魔導師の幻影が現れた。


「ザイデン……!」


> 『さあ、選ぶがいい。記憶か、今か』




霧の中で、再び剣と魔力が交差する。

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