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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第9章 黒霧編

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禁域・旧市街への潜入

パステコ公国・旧市街跡地。

そこは10年前、突如発生した“黒霧災害”により消滅した都市の一角。


現在は完全立ち入り禁止。政府軍の監視下にあり、“霧汚染指定区域”として封鎖されていた。


「ここが……」


フィーネが立つ先に、朽ちた大門と、蔦に覆われた石壁。


その奥からは微かに、霧のような魔力のうねりが感じ取れる。


「魔力の密度、濃すぎる……防護なしに入ったら数分で侵食されるレベルよ」


サティが警告する。


「でも、あの扉を見て」


旧市街へ続く門に、ひとつだけ《剣型の刻印》が浮かんでいた。


フィーネの掌と共鳴するそれは、まるで彼女の“訪れ”を待っていたかのように――光る。


> ゴォ……ン……




封印が解かれた瞬間、門がゆっくりと軋む音を立てて開いていく。


「行きましょう。彼女の記憶が呼んでる」



***


旧市街内部は、まるで“時”が止まったかのようだった。


崩れた建物。

腐食した街灯。

漂う黒霧。


だが霧の中には、“異質なもの”が混じっていた。


「見て……これ、“記録の残留”よ」


サティが指差した先には、霧の中に浮かぶ“人影”のような像。


まるでその場所で、誰かが何かを叫びながら、魔力に飲み込まれたような――“記憶のフラッシュ”。


「これ、全員……ヴェリシアの記憶に巻き込まれた……?」


「彼女は見たものを“記録”に刻み、それが霧に焼き付いたのかもしれない」


そして最奥。

旧市街中央広場の噴水跡に、巨大な魔法陣が浮かび上がっていた。


中央には石碑。

その側面には、はっきりと一つの名が刻まれていた。


> 『ヴェリシア・ラゼンティア』

――封印者にして、異界を覗きし者。




「ここが、彼女の“最後の座標”……!」


だがその時だった。


霧が突然、異常にざわめいた。


「フィーネ、下がって!!」


サティが叫ぶより早く、魔法陣の中心に亀裂が走る。


その中から出てきたのは――


半透明の影。

白銀の髪をなびかせ、ただ無言でこちらを見つめる“少女の姿”。


> 『……あなたが、今の“契約者”?』




「……! あなたが――ヴェリシア……?」


その目は、何もかもを知っているかのように深く、そして悲しみに満ちていた。


> 『私は見た。異界を。未来を。そして……“過去の終わり”を』





***


突如、霧の中に数十体の《刻印魔獣》が現れ、フィーネとサティを取り囲む。


> 『今、あなたに試練を与える。私が越えられなかった“壁”を、あなたは越えられるか――』




「……受けて立つ!」


フィーネが剣を抜き、刻印が強く輝く。


「行くわよサティ!」


「任せなさい。受付嬢の支援、なめないで!」


二人の背中を合わせた戦いが、今、封じられた記憶の中で始まった。

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